2001年の映画「アメリカンアウトロー」の劇中曲 "Brief Reunion" をカバーしました。

壮大な西部を想起させる曲調に、スラップベースやピッコロベースのソロなどを交えて。

 

 

オリジナルはこちら。かのトレヴァー・ラビン氏が手掛けたもので

いかにも当時のハリウッド映画らしい(ちょっとハンスジマーっぽい?)素晴らしい楽曲。

 

2001年、日本でも公開されました(DVD化されてますがレンタルでは滅多に見かけない)

 

ヤングガンの影響が大きいような

西部劇だけどむしろ青春映画のような内容になってます。

(深刻だったり物憂げな西部劇が多い昨今、多少フィクションが含まれようが

こういうスカッと溜飲の下がる、後味の良い映画、僕は好きだなあ~)

 

モデルはジェシー・ジェームズ。

西部開拓時代に名を馳せた強盗のひとり。

 

ビル・ヒコック、ワイアット・アープ、ドク・ホリデイ、ビリー・ザ・キッドなどと並ぶ

実在のヒーロー(ヴィラン?)ですね。

 

ミズーリ生まれ、タバコ農園経営者の次男。16歳で南北戦争に参加。

しかし正規軍ではなく、ゲリラ部隊(いわゆるカントリル・ライダース)の一員だったため

戦後は犯罪者のレッテルを貼られ終われる身に。

(若き日のジェシー。手にしているのはコルト1860アーミー)

 

「北部の資本家たちによる南部の財産への侵略」に対し、大義を持って戦うと誓った彼らでしたが

敗戦により財産や土地を奪われ

再起しようにも、犯罪者のレッテルのため生きる術を失った若者たち。

 

戦争中、投降しようと丸腰のところを北軍に胸を撃たれ瀕死の重傷を負った

という経験も、彼の北部憎しの感情を増幅させていたことでしょう。

(その看病をしてくれたゼレルダ・ミムズ、通称ジーと恋仲になって結婚に至るわけですが…)

 

結局、居場所を見つけられず、更生も許されず

北部の資本家への憎悪を膨らませ続けた彼は

ガチの犯罪者の道を歩み始めました。

 

兄のフランク・ジェームズや幼馴染のヤンガー兄弟とともに手を組み犯罪を重ね、

やがて大規模な銀行強盗、列車強盗を繰り返す「ジェームズ=ヤンガー・ギャング」と呼ばれる凶悪組織に。

上の二人がヤンガー兄弟、下の左がジェシー、右がフランク。

 

(2月13日が「銀行強盗の日」となっているのは、彼らが始めて銀行強盗を成功させた日にちなんでいるそうです)

 

(ミズーリ州が発行した手配書、このときはメンバー5人)

 

やがて次々に強盗を成功させ、仲間も増えました。全米が恐れるギャング団に。

 

この頃(1876)のジェシー。

 

 

乗り出したのは、かのFBIの前身とも云われる

ピンカートン探偵社。

 

率いるのは凄腕のアラン・ピンカートン。

南北戦争でリンカーン大統領を守った

スペシャルエージェントたちです。

 

ジェシーたちは、かつての北軍資本の銀行や列車を次々に襲い

かつて北軍のエージェントだったピンカートンたちが州の垣根を越えて追う。

まさに南北戦争の残り火。

 

そして、その点こそが

ジェシーがいかに悪党であろうと生き延びることができた理由でもあり。

 

彼を彩る伝説は、まさに義賊。

 

・支配者層たる資本家(北部)の金持ちしか襲わない。

・元南軍の人間からは何も奪わない。

・女性や子供からは何も奪わない。

・無抵抗な者を傷つけない。

・奪った金を南部の貧しい農民たちに分け与える。

・かくまってもらった農家の借金を肩代わりした。

 (しかも、取立てに来た資本家の手下たちを襲って借金を取り返す)

・強盗の祭、期せずして怪我を負わせた女の子に、治療費を与えた。

 

などなど。

 

さらに、ジェシーとフランクの実家が、心無い北軍系の手の者によって爆破され

罪無き弟(まだ9歳)が爆死、老いた母親が片腕切断の重症を負ったことも

彼らへの同情と、無慈悲な資本家連中への憎悪をかきたて

 

ジェシーたちは、各地で英雄扱いされ、困った時は助けてもらうことが出来ました。

 

(映画でもその辺うまく描かれています)

 

 

しかし、屈強なピンカートン軍団の執拗な追撃に追われ

活動を旧北部の州にも求めざるを得なくなってからは

厳しい状況が続きます。

 

遂に賞金首となったジェシー。

 

 

 

そして最後は呆気ないというか…

賞金(最終的に1万ドルとも!)に目がくらんだ若い手下に背後から撃たれ、絶命。

 

 

このあたりのいきさつは2007年の映画「ジェシージェームズの暗殺」

でよく描かれています。

ブラッド・ピットが晩年の(といっても享年35歳)ジェシーを

いい感じに演じています。

(物憂げなジャズ風のサントラも素晴らしいので、そのうちこれもカヴァーしようかな…)

 

 

話は戻って「アメリカンアウトロー」

 

若き日のジェシーを演ずるは、コリン・ファレル。

彼のごく初期の主演作です(24歳当時!)が、実に堂々とした演技を見せてくれます。

 

先の「ジェシージェームズの暗殺」を続けて観ると

まるで、ああ彼がこういう風に歳を重ねたんだ…なんて見方も出来て

ちょっと面白い。

 

 

そして盟友コールヤンガー役は、スコットカーン

のちに「Oceans」シリーズでブラッド・ピットと共演してますが

なんとなく、ジェシーとコールヤンガーの再会に思えたり…(無い無い

 

 

強敵ピンカートン軍団のボス、アラン役はティモシーダルトン!

なんたって、元007ですからね~

「すごいヤツ」感たっぷり。

 

しかし、映画の中ではジェシーたちに一定の理解を示す素振りも。

(彼の演技が、この映画に深みを持たせてます)

 

そして2000年代の映画らしく、銃器マニアもニヤニヤできます。

南北戦争のカットではコルト1851パーカッション、そしてヘンリー1860ライフル。

 

強盗稼業を始めてからも、ジェシーは51ネービー。

ちゃんと丸いブレットがシリンダのチャンバー内に見えます。

元ゲリラ兵だけに、グリップを前側にしてホルスターに差してのリバースドロウ!

これがまたカッコいい。

 

隠し持つのは1849ポケット・コルト

いわゆる「ウェルズファーゴ」モデル。

 

お兄ちゃんのフランクや、仲間たち

そして宿敵アラン・ピンカートンが使うのは

コルト1860アーミーの、リチャーズコンバージョンモデル。

 

ちなみにミズーリ州には「ジェシージェームズ博物館」があって

実際に彼が使った銃器など(臨終の間際に履いてたブーツとかも!)が

展示されているとのこと。是非行ってみたい!

 

実際の愛用拳銃の一つ、S&Wモデル3(スコフィールドモデル)

 

彼を背後から撃ったのも、この拳銃だといわれています。。。

 

 

 

 

 

「アメリカンアウトロー」2000年代の西部劇としては

明るく爽やかでハッピーエンド、フィクションの部分も結構あったりするので

一分の批評家達からの評判はあまり芳しくありません。

 

でも、本来の西部劇ってこういうのじゃなかったの?

 

史実がどうとか、細かい時代考証とかに

やたら煩い人もいるけど

所詮映画、銃器だのファッションだのに限らず

それぞれの専門家が見たらとんでもなく「ヘンテコ」なものに満ち溢れてます。

 

そこをいちいち突っ込んで通ぶったり、マウントとった気になったところで

自分も周りもツマラナイだけのような気が…

 

ある程度は許容して、せっかくの映画を

存分に楽しみたいものです。

 

 

そうそう、何より僕にとってはこの映画

宿敵が「親から資産を引き継いだ金持ち連中」で

そいつらの鼻を明かしてやるっていうところが

何より気に入ってる部分かもしれません(汗

 

親から貰った金時計を見せびらかしながら

「お前らとは全てが違う、お前らは絶対俺には勝てない」と

親から会社を引き継いだ資本家はジェシーを見下します。

 

まるで

学生時代から、マンションも服もクルマも高級品を与えられ

社会に出ても親の会社を引き継いで

経費で高級外車に乗ってウンチク垂れ流しつつ美味いワイン飲んでる連中

 

そのニヤけた面ぶん殴ってやりたい!

お前なんか一生オムツが取れない野郎じゃねえか!

と思ってる僕にとって

 

決して裕福じゃない家庭に生まれ

何でも自分で手に入れて切り開こうとして生きてきた僕にとって

 

実に、溜飲が下がる映画でした!