タイムマシン✦明治大正昭和煙草ポスター | 春夏秋冬✦浪漫百景

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季節の移ろいの中で...
歌と画像で綴る心ときめく東京千夜一夜物語

タイムマシン

明治大正昭和🚬煙草ポスター

(-。-)y-゜゜゜.。o○

 

「天狗煙草」

「天狗煙草」

時代 明治33年(1900)頃
寸法 56.6×43.5cm
  岩谷商会
  多色石版

 

岩谷商会の宣伝ポスターです。

子どもの天狗が大天狗という紙巻たばこのパッケージを持っていますが、

このポスターでは、むしろ美女の白い背中の方が目を引きます。

明治という時代を考えても、さぞ人々の目を引いたことと思われます。

明治37年(1904)にたばこに専売制が導入される以前、たばこ産業は、

大小さまざまなたばこ業者によって支えられていました。

岩谷商会も、民営時代のたばこ業者の一つで、多くの従業員を抱える大商店でした。

奇抜な発想が持ち味の経営者岩谷松平(いわやまつへい)は、自ら真っ赤な衣装をまとい、

店を赤く塗り、赤尽くしの宣伝隊を走らせ、大いに人々の注目を集めたと伝えられます。

「国益の親玉」「煙草大王」というキャッチフレーズで、

「金天狗」「大天狗」「国益天狗」など、天狗とつく名のたばこを売り広めました。

横文字名のたばこで人気の村井兄弟商会とは、

天狗vsハイカラの派手な宣伝合戦をくりひろげました。

 

「ヒーロー」

「ヒーロー」

時代 明治27年(1894)頃
寸法 72.5×50.0cm
  村井兄弟商会
  多色石版

村井兄弟商会の主力製品、「ヒーロー」の宣伝ポスターです。

「ヒーロー」は、ハイカラなイメージが売りの紙巻きたばこでした。

名前が英語であるというだけではなく、

輸入の葉たばこを原料に欧米の最新の技術で製造されたたばこで、

中にはおまけのカードも入っていました。このポスターは、

洋風なたばこのイメージとは逆に、

デザインが和装の美少女であることがインパクトを与えます。

明治37年(1904)にたばこに専売制が導入される以前、

たばこ産業は大小さまざまなたばこ業者によって支えられていましたが、

村井兄弟商会もそんな業者の一つでした。

アメリカの業者と合資会社を組織し、輸入たばこの製造販売権を押さえ、

近代的な経営を行っていたこの会社は、

天狗たばこの岩谷とは派手な宣伝合戦をくりひろげました。

 

原画「ピーコック」

原画「ピーコック」

時代 明治35年(1902)頃
寸法 75.3×50.6cm
  村井兄弟商会
  伏木英九郎画 水彩画

 

村井兄弟商会というたばこ業者の製品、「ピーコック」のポスターの原画です。

馬(ペガサス?)がうまい、とシャレをいい、それは地球をも股に掛けるほど、

という意味のデザインでしょうか。文字の配置など、幾度も修正したあとが見られます。

明治37年(1904)にたばこに専売制が導入される以前、

たばこ産業は大小さまざまなたばこ業者によって支えられていました。

村井兄弟商会もそんな業者の一つですが、

天狗の岩谷商会とは二大業者として派手な宣伝を行い、

パッケージやポスターのデザインの重要性に早くから気付いていました。

村井と岩谷は、印刷会社にも出資して近代的な印刷技術を導入し、

その後の印刷業界の発展に大きな役割を果たしました。

 

ハッピー」

「ハッピー」

時代 明治35年(1902)
寸法 76.3×34.4cm
  インペリアルタバコ株式会社
  多色石版

 

地球儀の上に古風な二人の女性が立っていますが、実はこのポスターは、

日本とイギリスの同盟という、政治的な動きを背景に制作されました。

1902年、帝政ロシアに対抗し、極東での利権を守るため、

日本とイギリスは同盟を結びました。

この日英同盟締結という政治的な動きを象徴して、

日本の「やまとひめ(=この場合は大和の女性化=日本)」と

イギリスの「ブリタニア(=ブリテンの女性化=イギリス)」の絵が、

『時事新報』紙上を飾りました。

この絵は好評で、後に同紙の付録用にも描き起こされましたが、

付録の絵柄を元に制作されたのが、この「ハッピー」のポスターです。

その他、

マッチラベル、織物、時計、扇などにも、

「やまとひめ」と「ブリタニア」が描かれています。

参考文献=「新聞付録《やまとひめとブリタニア》について」

菅野洋人 平成14年度 郡山市立美術館研究紀要第3号

 

 

「ゆたかまき」

「ゆたかまき」

時代 明治35年(1902)
寸法 53.5×39.2cm
  外村商会
  多色石版

 

ポスターに「新意匠 灰留文字出し紙巻たばこ」と書かれ、

紫煙を出しながら「ゆたかま」と、

途中まで文字の浮き出た1本のたばこが描かれています。

おそらく、このたばこは、巻紙に特殊な細工があって、火を着けても灰が落ちず、

「ゆたかまき」の文字が浮き出てくるようになっていたと思われます。

デザインが優れているというよりは、説明的なポスターですが、

どんなたばこだろうと思わせる、インパクトのあるポスターです。

 

「千種」

「千種」

時代 明治37年(1904)
寸法 60.3×53.0cm
  千葉商店
  多色石版

 

千葉商店の宣伝ポスターです。

明治37年(1904)にたばこに専売制が導入される以前、

たばこ産業は、大小さまざまなたばこ業者によって支えられていました。

東京の千葉商店も明治の民営時代のたばこ業者の一つで、

特に牡丹たばこシリーズで有名でした。

経営者の名は千葉松兵衛(ちばまつべえ)ですが、

他の大手たばこ業者である岩谷商会の岩谷松平(いわやまつへい)、

村井兄弟商会の村井吉兵衛(むらいきちべえ)とともに、

「たばこ三べえ」と呼ばれていました。

 

「八千代」

「八千代」

時代 大正4年(1915)
寸法 81.0×37.5cm
  大蔵省専売局
  多色石版 堀規矩太郎デザイン

 

大正天皇即位の大礼を記念して発売されたたばこ「八千代」のポスターです。

たばこは、明治37年(1904)に専売制が導入されましたが、

このたばこは、専売制導入後初の記念たばことなりました。

「八千代」のパッケージデザインも雅やかなものですが、

大きく菊花が描かれたこのポスターも、たいへん優雅な出来ばえです。

専売制導入で、たばこ産業には競合業者がいなくなりました。

そのためか、一時、ポスター制作などの宣伝活動は控え目だったようです。

しかし、この「八千代」以降、記念たばこや、

新製品に対して、ポスターが制作されるようになりました。

 

 

エアーシップ」

「エアーシップ」

「エアーシップ」

時代 大正10年(1921)
寸法 79.4×36.3cm
  大蔵省専売局
  多色石版

 

「エアーシップ」は、明治43年(1910)に缶入り50本で発売されたたばこです。

この年に、日本の上空をはじめて飛行機が飛んだことから、大空への関心が高まって、

このように名付けられたといいます。

後に、10本入りの小箱も発売されましたが、小箱のパッケージは、

缶のデザインが応用されています。

青い空と連なる山々を背景に、飛行機や飛行船が舞うという、

まるで絵画のような美しいパッケージです。

このポスターの中には、パッケージの裏面も紹介されていますが、

それはたいへんめずらしいことです。

缶のデザインを応用したパッケージならではといえるでしょう。

 

 

「みのり」

「みのり」

時代 昭和5年(1930)
寸法 52.9×38.6cm
  大蔵省専売局
  オフセット 杉浦非水デザイン

 

明治末から昭和初期を代表する商業デザイナー、

杉浦非水(1876〜1965)デザインのポスターです。

非水は、三越呉服店(現在の三越百貨店)のポスターや、日本最初の地下鉄、

銀座線開通のポスターをデザインしたことで特に有名で、

モダンなデザインが人気を集めました。

ここでは、新発売の「みのり」のパッケージを大胆に大きく描き、

シルエットでたばこに火をつける人を表現しています。

昭和の初期には、このポスターのように、

新製品をシンプルにとりあげたデザインのポスターが作られるようになりました。

非水のデザインが、大きな影響を与えたことがわかります。

 

「國に國防 社交にタバコ」

「國に國防 社交にタバコ」

時代 昭和12年(1937)
寸法 53.2×38.2cm
  京都南部煙草小売人組合
  オフセット

 

特定の銘柄ではなく、キャッチコピーを配したポスターです。 

デザインされているものは、水兵・軍艦・軍用機というように、

たいへん戦争色の濃いものですが、

モダンな図と白を貴重とした色調でまとめられていて、あまり暗さを感じさせません。

昭和10年代のたばこ関係のポスターは、

日中戦争から太平洋戦争突入という時代を背景に、

慰問たばこの募集や、国防費献納、錫紙収集、

といった文字を中心にしたポスターが多くなりました。

 

 

「好きな煙草だ 明るく吸おう」

「好きな煙草だ 明るく吸おう」

時代 昭和23年(1948)
寸法 37.6×51.6cm
  大蔵省専売局

 

終戦後のヤミたばこの横行していた時代を背景に作られたパッケージです。

ヤミたばこの防止を働きかけるポスターは昭和20年代に数多く作られましたが、

大部分は、ヤミが犯罪であることを強調し、

暗く陰湿な図・色調でデザインされています。

このポスターは、当時まだ珍しかった写真製版技術を用いたもので、

名優三船敏郎をモデルに、洗練されたイメージで「明るく吸おう」と訴えかけます。

 

 

明るい生活へ」

「明るい生活へ」

時代 昭和23年(1948)
寸法 36.4×52.5cm
  大蔵省専売局

 

上を向いた紳士の笑顔と「明るい生活へ」の標語、背景の水色の刷色から、

たばこの宣伝ポスターというよりは、

新しい平和な生活への希望を感じさせるポスターです。

敗戦から3年を経たこの頃、

人々の生活水準は、決して十分とはいえずとも回復しつつあったようです。

描かれている「憩」と「ハッピー」は、昭和23年7月に発売されたたばこです。

本来、人々にとって一番大切である「いこい」と「幸せ」からのネーミングです。

 

 

「今日も元気だ たばこがうまい!」

「今日も元気だ たばこがうまい!」

時代 昭和32年(1957)
寸法 52.0×72.4cm
  日本専売公社

 

前年新発売の「いこい」が入っていますが、新製品そのものよりも、

キャッチコピーと元気なおじさんの方が印象的なポスターです。

この時期、働く庶民の写真を使い、

「今日も元気だ たばこがうまい!」「生活の句読点」「おくりものにたばこ」

といったコピーを入れるポスターが多く作られるようになりました。

中には、現在でも通用するような名コピーも生まれています。

 

「たばこは動くアクセサリー」

「たばこは動くアクセサリー」

時代 昭和35年(1960)
寸法 73.2×51.3cm
  日本専売公社
  藤本四八撮影

 

当時、映画界とのタイアップで、

「たばこは動くアクセサリー」というキャッチコピーを入れ、 

売り出し中の新人女優の写真を使ったポスターが作られました。

どれも、まるで女優のポスターのようで、たばこの写真は地味目で、

あまり目立ちません。

当時は、カラー写真の製版技術が導入されはじめたばかりで、

このようなポスターが飾られた店頭は、さぞ華やかだったと思われます。

 

 

「東京オリンピック記念〈ピース〉発売」

「東京オリンピック記念〈ピース〉発売」

時代 昭和39年(1964)
寸法 36.6×25.5cm
  日本専売公社

 

昭和39年(1964)の東京オリンピックにちなみ、

たばこは、「オリンピアス」や「とうきょう64」、

デザインをオリンピックの各行事に変更した、

「ピース(五輪ピース)」が発売されました。

東京オリンピックは、

戦後の日本の復興を世界に示すためにも国を挙げて取り組んだ行事でした。

一つの行事に対し、これほど多くのたばこやポスターが作られた例は、

東京オリンピック以外にはありません。

国中が盛り上がっていた様子がよくわかります。

 

【出典:煙草塩博物館HP】

 

ポスターは時代の証言者ともいえるほど、制作された時代を映し出すものですが、

当館の収蔵品も、明治、大正、昭和と日本の歩んできた道のりと、

たばこが果たしてきた役割を伝えてくれます。

また、印刷技術も、木版、石版からオフセットに、そして写真製版へと発達しており、

印刷の変遷という意味でも貴重なものになっています。

(^。^)y-.。o○( ゚Д゚)y─┛~~

 

たばこ

 私、たばこをやめて20余年、

健康になりました🚭