ときめき映画館#新春映画劇場「寒椿」 | 春夏秋冬✦浪漫百景

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新春映画劇場

「寒椿」

『寒椿』(かんつばき)は、宮尾登美子の小説。同作を原作とし、

 

1992年5月30日に東映系にて公開された。

東映のドル箱路線"宮尾登美子原作シリーズ"第6弾。

ヒロイン・牡丹役の南野陽子が初めて濡れ場を演じたことで話題を呼んだ。

昭和初期の高知を舞台に、元やくざで芸妓紹介業の岩伍(西田敏行)、

岩伍の世話で売り出した芸妓・牡丹(南野陽子)、

侠客志願の元力士で牡丹に恋する仁王山(髙嶋政宏)らを中心とした人間ドラマを、

岩伍の長男にあたる少年(西野浩史)の目から視点を随所に取り入れた点で、

それまでの東映の宮尾物とは違う新味を出している。

ストーリー

昭和初頭。高知には人の心が分かる女衒として知られた富田岩伍(西田敏行)がいた。

元は任侠の世界に活きていたが、堅気の女・喜和(藤真利子)と結婚するため、

きっぱりと足を洗い、今の商売に着いたのだった。

しかし、喜和は女を売り買いする家業に馴染めず家を去り、

家には息子・健太郎(西野浩史)が残される。

多感な少年時代、健太郎は父への反発と共感をこめて女衒という家業を見つめていく。

ある日、岩伍の元に父親の借金のカタに、

高知初の女性バスガイドという貞子(南野陽子)が売られてきた。

年齢からして玉水遊郭の女郎になりかけたが、

高知一の料亭「陽暉楼」の主人が、

白楽天の牡丹の詩「花開き、花落つ二十日、一城の人皆狂せるがごとし」を引用し、

―この子が笑えば人が皆心奪われると、芸妓として仕込まれることが決まった。

松崎みね(かたせ梨乃)に預けられた牡丹は、過酷な仕込みにも耐え、

店出しの日を迎える。陽暉楼の主より「牡丹」の源氏名を与えられ一躍売れっ子に。

南海銀行頭取・多田の長男守宏と、土佐銀行頭取・中岡という、

高知きっての二人の上客が張り合うように牡丹についた。

しかし当の牡丹の心は、親に売られた自分に思わぬ優しさをかけてくれた、

岩伍の上にあった。

折しも高知で平民選挙が実施されることになり、守宏と中岡は共に立候補。

議席をかけ、また牡丹を巡っての、

両者の争いは多くの人々を巻き込んで深まっていく。

一方、中岡の用心棒として売り出し中の侠客・田村(萩原流行)には、

元相撲取りの子分、仁王山(高嶋政宏)がいた。

彼もまた、偶然、往来で牡丹を見かけてその虜となっていた。

そんな折、牡丹は守宏に落籍されることが決まった。

嫉妬に狂った仁王山は、牡丹を拉致し想いを遂げるが、

その事件が牡丹の運命を大きく狂わせてしまう。

キャスト

富田岩伍
演 - 西田敏行
女衒(作中では、芸妓小妓紹介業と自己紹介している)をしており、
陽暉楼と付き合いを持つなど忙しくしている。
サイドカー付きのバイクを愛用している。
昔は関東にまで名の知れた博打打ちで手のつけられない暴れん坊として、
“火の玉のヤゴ”の異名もあったが、現在は人の心の分かる女衒になった。
自身が芸姑にした娘たちからは“父(とと)さん”と呼び慕われている。
手荒い行動も取ることはあるが、健太郎のことは父親として思いやっている。
牡丹(貞子)
演 - 南野陽子
21歳になったばかりの生娘。
みねに舞などの芸を仕込まれた後芸姑として働き始め、
華やかでいて儚げな雰囲気が好評となり程なくして売れっ子となる。
岩伍とみねを第二の父母のように慕う。
芸姑になる前に岩伍からもらった反物を「私の守り神」として、
売れっ子になった後も大事にしている。
後に選挙に立候補する中岡と多田の争いに自身の身請けの話が絡み、
さらに自身に好意を寄せる仁王山も加わり人生を翻弄される。

岩伍や牡丹と関わる主な人たち

仁王山(におうやま)
演 - 髙嶋政宏
侠客の修行中の身。牡丹が売れっ子芸姑となった頃に偶然知り合い、
それ以来彼女に夢中になる。前頭まで行った元力士なためケンカに強く力持ち。
侠客に憧れており、本人は「侠客は命を張って強気をくじき、
弱気を助ける男の中の男。ヤクザとは違う」として主張している。
短気で血の気が多い性格に加え、
特に牡丹のことになると周りが見えなくなり勝手な行動を取ることも多い。
松崎みね
演 - かたせ梨乃
子方屋『松崎』の経営者。10人程度の芸姑たちを抱え、
彼女たちから“母様(かかさま)”と呼ばれている。
『松崎』にいる時はいつも長いものさしを携帯し、
厳しい口調で指導するため芸姑たちから少々怖がられている。
厳しいながらも面倒見は良い性格だが、金に関してはケチである。
富田から紹介された貞子を一人前の芸姑に育て、
その後は大事な稼ぎ頭として陽暉楼で働いてもらう。
富田健太郎
演 - 西野浩史(本作のナレーションも担当)
小学生ぐらいの男の子。当初弱虫な性格だったが、
徐々に気持ちの強い性格に育つ。
「(女を売る方よりも)買う方が悪い」と批判するなど女衒の仕事を嫌っており、
将来は真っ当な仕事に就くため勉学に励んでいる。
岩伍に育てられながら、牡丹や仁王山など様々な大人たちの人生を垣間見る。
富田喜和(きわ)
演 - 藤真利子
過去に親の反対を押し切って岩伍の妻となったが、
彼の仕事に馴染めず冒頭で富田の家を出る。
ちなみに岩伍の自宅庭にある寒椿は、自身が植えた物。
しばらく後に健太郎と東京で暮らすことを考え始めるが、
岩伍が離婚することも息子を引き取らせてくれないことに悩む。
田村征彦
演 - 萩原流行
“こくしかい”高知支部支部長の肩書を持つやくざ。
東京から来て高知で金貸しを始め、
仁王山や雲竜など地元のごろつきたちを手懐けた。
選挙では中岡を支持し金の力で色々と策を講じる。
どちらかと言うと今で言うインテリヤクザのようなタイプで、
作中にしては都会的な雰囲気を持ちなかなか頭の切れる人物で策士。
多田守宏(ただもりひろ)
演 - 白竜
中岡の対立候補。周りから“若”と呼ばれている。
政友会から支持を受けて選挙に臨む。
普通選挙法施行により有権者の数が一気に倍になり、
政党の区別がつかない人にまで頭を下げなければならなくなったことに、
愚痴をこぼす。
多田宇一郎
演 - 高橋悦史
守宏の父。土佐銀行を経営する地元の有力者の一人。
守宏を国会議員にするべく後押しするが、少々脇が甘い息子に世話を焼かされる。
百鬼勇之助(どめき)
演 - 黒部進
地元の有力者の一人。
裏社会にも顔が利き、“どめきの親分”として恐れられている。
貧困層の有権者の扱いに長けており、
宇一郎から貧困層の票の取り込みを依頼される。
井上貢
演 - 児玉謙次
多田親子と政友会を支持する人。
金融恐慌の影響で銀行が痛手を負った状況で、
作中の選挙について「土佐銀行となんかい銀行の生き残りを賭けた選挙」
と位置づける。
中岡亮太
演 - 神山繁
“なんかい銀行”の会長。民政党の公認候補として議員に立候補する。
私利私欲のために選挙に出て私腹を肥やそうとする多田一族を敵視し、
彼らに後押しする百鬼に対抗できるよう田村に命じる。
陽暉楼の売れっ子芸姑として活躍する牡丹を気に入る。
雲竜(うんりゅう)
演 - 荒勢
田村のもとで働くごろつき。
いつも仁王山を含めた10数人のごろつきたちと共に行動し、
陽暉楼がある地元で我が物顔で傍若無人な振る舞いをしたり、
多田陣営の邪魔をするなどしている。

南野陽子さんが日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した映画

【寒椿】の予告編です。