和から友梨奈と付き合っていると聴かされた
玲奈は動揺していた
友梨奈が和に近づいていることは知っていたが、
まさか恋人関係になるとは思わなかった。
「平手さんと…ですか?」
玲奈は冷静を装いながら、再確認した。
和は嬉しそうに頷いた。
その表情は恋する少女そのものだった。
「はい。友梨奈さん、すごく優しくて、
一緒にいると安心するんです。
母のことで落ち込んでいた私を、
たくさん励ましてくれて…」
和は友梨奈との出会いから、
交際に至るまでの経緯を
幸せそうに語り始めた。
友梨奈とのレストランでのディナー、
プレゼントされたネックレス、そして告白。
和の言葉一つ一つから、
友梨奈への絶対的な
信頼と恋心が溢れ出ていた。
玲奈は黙って和の話を聞いていた。
和の幸せそうな姿を見ていると、
喜ばしい気持ちになるはずなのに、
胸の奥にはインクに染まったような
暗い感情が広がっていくのを感じた。
(やはり、友梨奈は和を利用しているのか…?)
玲奈は内心で深くため息をついた。
友梨奈が公安の人間であることを考えれば、
一般人の和に近づくこと自体が異常だ。
しかも、こんなにも早く関係を深めている。
すべてが計画的で、
作為的なものに思えてならなかった。
「そうですか…それは、よかったですね」
玲奈は表面上は微笑みを浮かべ、
祝福の言葉を口にした。
しかし、その声は内心から絞り出すようで、
冷たいものだったかもしれない。
和は玲奈の言葉に満足したように微笑んだ。
「ありがとうございます。
私、友梨奈さんと出会えて、
本当に救われたんです」
和の純粋な言葉が、玲奈の胸に重くのし掛かる。
和はまだ何も知らない。
友梨奈の本当の姿も、近づいてきた真の目的も。