ガラスを割れ ~暗闇の中の絆~3 | じゅりれなよ永遠に

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じゅりれな・坂道小説書いてます。

クラブの煌びやかな照明が、

松井珠理奈の酔った顔を

浮き立たせていた。

 

彼女の目は、

普段の鋭い光を失い

深い失望感に包まれていた。

 

彼女の口からは酒の匂いと共に

悔しさと無力感が漏れ出ていた。

 

「また、上からの圧力だよ。」

 

彼女がぼそりと呟いた。

その声は、彼女の心の中に

溜まった怒りと悲しみを如実に表していた。

 

その時、クラブの入口が開き一人の女性が現れた。

それは平手友梨奈だった。

 

彼女は、クラブの中を見渡し

珠理奈の姿を見つけると

すぐに彼女の元へと向かった。

 

「刑事さん、大丈夫ですか?」

 

友梨奈が尋ねた。

 

珠理奈は、

友梨奈の顔を見上げ、苦笑いを浮かべた。

 

「ああ、大丈夫よ。

ただ、また上からの圧力で

捜査が中止になっただけだよ。」

 

珠理奈が言った。

 

その言葉に、友梨奈の顔にも曇りが見えた。

 

「君島でしたっけ?探していたのは?」

 

友梨奈が静かに言った。

 

「ええ、そうよ。

折角居場所を見つけたのに

これ以上詮索すると首だっていわれたわ。」

 

珠理奈は再びグラスを口元へと運んだ。

 

「君島は何をやったんですか?」

 

「殺人よ。あいつは元反社の人間。

 木下防衛大臣に腕を買われて拾われたの。

 木下の命令で彼の悪事を暴こうとした

 ジャーナリストを殺させたの。」

 

「酷いやつですね。」

 

「でも、これが現実だからね。

 

珠理奈が言った。

 

その言葉は、彼女自身への慰めでもあった。

 

友梨奈は、珠理奈の言葉を黙って聞いていた。

彼女は、珠理奈が抱える

苦しみと悔しさを理解していた。

 

その夜、二人はクラブで

長い時間を共に過ごした。

 

珠理奈は、

自分の心の中に溜まった思いを

友梨奈にぶつけ、

友梨奈はそれを受け止めた。

 

松井玲奈ならきっとそうすると思って

友梨奈は珠理奈の話を聞いていた。

 

それ辛い現実に直面する珠理奈の

癒しとなった。

 

そして帰り際珠理奈は

友梨奈にメモを渡す。

 

「何ですか?これは?」

 

「君島の潜伏先よ。

もう私は彼に手出しできない。

だから、あんたがもし必要なら

自由に使って。」

 

「それはどうもありがとうございます。」

 

「じゃあね、平手友梨奈。」

 

珠理奈は去っていった。