TWO ROSES ~ハーフムーンセレナーデ~8 | じゅりれなよ永遠に

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じゅりれな・坂道小説書いてます。

その日珠理奈が家に帰ると

21:00をまわっていた。

 

玄関に入ると玲奈がすぐにキッチンから顔を

覗かせたのだ。

 

「おかえり・・遅かったのね・・」

 

「あ・・・玲奈ちゃん・・うん・・ちょっとね・・」

 

珠理奈には後ろめたい感情が

芽生えていたので

はっきりと友梨奈と一緒にいたことを

言い出せなかったのだ。

 

「平手さんと一緒だったの?」

 

「・・あ・・うん・・彼女の音楽の話を

 聞いていたんだ」

 

すぐに友梨奈のことを言わなかったことに

玲奈の不安はさらに強くなったのだ。

 

しかし、これ以上聞くのが怖いので

玲奈はあえて聞かないことにした。

 

「ご飯、まだでしょ・・今、温めるからね。」

 

玲奈はそう言って、キッチンに入っていき

珠理奈も後に続いた。

 

夕食を温めた後、玲奈は自分の

不安を珠理奈に知られたくないために

 

「じゃあ、勉強してくるから・・」

 

と言い残しすぐに自分の部屋に戻ったのだ。

 

珠理奈は友梨奈に惹かれ始めていることを

自覚しており、玲奈の顔を直視できなかったのだ。

 

(私・・どうしちゃたんだろう・・・)

 

波乱を含み、月曜の朝を迎えていた。

 

玲奈はあえて友梨奈のことは

聞かないようにしていた。

 

もし、何かあるなら珠理奈は包み隠さず

言ってくれると信じていたからである。

 

そして、その日のお昼休み

 

珠理奈が玲奈と昼食を食べ終えた時だった

 

廊下に友梨奈がいるではないか。

 

それに気がついたのは玲奈であった。

 

「珠理奈・・・平手さんが来てるよ・・」

 

珠理奈は廊下に視線をやると友梨奈と目が合い

友梨奈はお辞儀した。

 

「ちょっと、行ってくるね・・」

 

珠理奈はそう言って廊下へ向かった。

 

玲奈はあえて、気にしないように努力していたのだ

 

「友梨ちゃん・・どうした??」

 

「ごめんなさい・・教室まで押しかけて・・」

 

友梨奈は申し訳なさそうにする。

 

「大丈夫だよ。」

 

珠理奈の優しい笑顔で友梨奈にも笑顔が灯る

 

「今日の放課後に私の演奏を

聴きに来て頂けませんか?

珠理奈さんに聞いて頂くと

さらに、いい音色がだせるんです。

お願いします。」

 

友梨奈は頭を下げた。

 

珠理奈は悩んだ・・・

 

玲奈と一緒に帰って勉強を

しなければならない

 

ましてや玲奈を

1人で帰すことなんてできない

 

珠理奈は悩んだ挙げ句結論をだした。

 

「玲奈ちゃんも一緒に連れて行っていい?」

 

「玲奈さん??」

 

友梨奈は玲奈の存在を知らなかったのだ。

 

珠理奈は玲奈の方に視線を送り

 

「あの窓側の一番後ろに座っているでしょ?

私の姉なんだ・・・心臓病で1年留年したんで

私と今は同学年なんだ・・」

 

「はい・・もちろん構いません。」

 

友梨奈は

珠理奈と玲奈の関係を知らないでいた。

 

「じゃあ、放課後・・」

 

そう言って、珠理奈は玲奈の元へ

戻っていく。

 

玲奈はなにも聞かないでいた。

 

「玲奈ちゃん・・・放課後一緒に

 10分程度いいんで、吹奏楽部に

 来てもらえない?」

 

「え・・?」

 

「彼女の自作曲が私、大好きなんだ。

 それを聴いたらすぐ帰るから」

 

「うん・・・わかった・・」

 

それ以外に理由があることに

玲奈はわかっていたが本当のことを

聞くと珠理奈が自分から離れていきそうな

気がして聞けなかったのだ。

 

友梨奈はその恵まれた才能ですでに音楽大学に

特待生として入学が決まっていた。

 

だから、彼女は未だに部室に顔を出し

バイオリンを部室で演奏していたのだ。

 

吹奏楽部は全部で30人。各自、個人練習をしているので

色々な楽器の音が響き渡っていた。

 

友梨奈はこの部室にある

 

防音設備の整った個室で練習している。