第四話 読書 ①初読の効能
読書好きにとっては、買っておく、積んでおく、読んでおく、といった
「置く」というものがあるという。
それらの言葉は、揶揄するためのものでなく、そうしたことが必要なのだと
いう教えなのである。古希がきて書棚を見れば、おやっ、という書物に気づく
ことがある。取り出してみると付箋もついてなく、目次を見ると、これは読ん
ではいないな、と読み始める(初読)のである。
そんな一冊が、軸なき国家は滅ぶ『天下不穏』(著者:久保紘之、発行:産
経新聞ニュースサービス、発売:扶桑社)である。平成七年(阪神大震災)か
ら十三年までの七年間の我が国の政治についての産経新聞のコラムの抜粋であ
る。
それを読むとこの十六年間なにも変わっていないということである。未解決
のまま先送りしてきたのである。政治の抱える内政・外交問題、政府の無責任
体質、首相の無能さ、沖縄問題、尖閣問題、竹島問題、核兵器問題、消費税問
題、市民運動家あがりの政治の危うさ、などなど何も変わっていないのであ
る。
記事のなかでドイツ紙の『(阪神)大震災の際、村山氏は無能ぶりをさらけ
出した。取組が遅すぎた』と厳しい評価を下している、と紹介している。
これなどは、今回の東北大震災と政府首脳との無能さはなんら変わっていな
いことを証明している。
ということは、選挙民であるわれわれ国民自身が変わってないのである。当時も今もムード選挙に変わりはない、ということでる。 読書の効能は初読にしても再読にしても、こういうものなのである。
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