【9・11で途切れた唐さんとの約束】金守珍よりニューヨーク公演に向けて | 新宿梁山泊BLOG

【9・11で途切れた唐さんとの約束】金守珍よりニューヨーク公演に向けて

金守珍次回演出作品は、Project Nyx『青ひげ公の城』(寺山修司作)ニューヨーク公演!!
世界中から注目される演劇祭「UNDER THE RADAR」への招聘を受け、エンターテインメントの殿堂・NYで大きな挑戦をします。

アングラ演劇を末長く続く文化に!

公演によせた金守珍からのメッセージをご紹介します。

 

※海外公演実現に向け、12/31までMOTION GALLERYでクラウドファンディングを行なっています!ご協力いただけますと幸いです

 

 

【9・11で途切れた唐さんとの約束】

 

20世紀の終わり、唐さん、僕、横浜国大の故・室井教授は真冬のマンハッタンにいた。
雪が舞うハドソン川のほとりで
「ここに赤テントを張りましょう」と決めたあの瞬間を、20年以上経った今でも僕は鮮明に覚えている。

 1999年、新宿梁山泊はニューヨークで「少女都市からの呼び声」を上演した。唐十郎の作品がアメリカで上演されるのは初めてだったが、大変な評判を呼び、劇場は満員の観客の熱気でいっぱいになった。
メディアでも随分取り上げられ、僕はコロンビア大学の講師として招かれることにもなった。

 唐さんは自分の作品がアメリカで受け入れられたことにかなり驚いたようだった。もともと唐さんはアメリカという国をなんとなく恐れているところがあったし(李さんと旅行した時は宿泊したホテルに閉じこもって過ごしたらしい)、アメコミやハリウッドが人気の国で難解な自分の作品が理解されると思えなかったのだろう。
だから、新宿梁山泊が「少女都市からの呼び声」をアメリカで成功させた時、唐さんは随分喜んでくれた。目を輝かせながら「金ちゃん、僕アメリカでテントをやりたいんだ」と言う姿を見て、これは絶対に実現しないといけない、と思った。

 幸い、ジャパン・ソサエティ(日米の文化交流を目的とする米国最大の民間団体)も応援してくれて「アメリカに紅テントを張る」夢はかなり実現に近づいていた。企画は具体化し、冒頭で書いたように現地でのロケハンも行った。唐組、新宿梁山泊、唐ゼミが合同で状況劇場再来かのように公演を行うはずだったのだ。

2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起きるまでは。

9・11をきっかけにアメリカは混迷の時代に入り、ハドソン川テントの企画も白紙に戻ってしまった。新宿梁山泊もその後アメリカ公演は実施できていない。

 だからこそ、来年Project Nyxがニューヨークで公演をするいうことは僕にとって非常に重要な出来事だ。

 アメリカで評価の高い寺山修司をきっかけに現地の演劇人たちと交流を持ち、アングラ演劇を通じて関係を深めていけば、唐さんが夢見た「ハドソン川のテント」を実現できるかもしれない。
河原者たちによる芸能の始まりのように、状況劇場の「乞食精神」のように、商業ベースではなく民間から、アングラ=唐十郎作品を世界に発信していきたいのだ。

 アングラは一時の風俗ではなく、現代歌舞伎となり得るだけの厚みと重みを持っている。
100年先も、500年先も続く財産を築くための最初の一歩として、今回のProject Nyxの挑戦を応援したいと思っている。

新宿梁山泊代表 金守珍