「スケアクロウ」

SCARECROW

1973 アメリカ 112

@京都シネマ 平日10:00 観客17

「午前十時の映画祭」にて


70年代映画大好きに違いないって人ばかりのシアター。乾燥した田畑の香りが漂ってくるような、最高の雰囲気だった。懐かし地獄!かと思いきや、これずっと見逃してた作品だった。


厚着大男マックス(ジーン・ハックマン)と、小柄イケメンライオン(アル・パチーノ)の珍道中を描く。70年代前半特有の明日をも知れぬ環境の中、小さな夢を抱えてたくましく旅をするロードムービーだけど、かなりの珍道中を真面目に捉えていて実に面白い。


喧嘩っ早いマックスは、相手を怖がらせてそこに在る、その名のとおりのスケアクロウ。失笑を買う極端な厚着も防衛本能か。今度見る時は何枚着てるか数えなきゃ。ハッタリと弱さの両面を持つ男を演じるジーン・ハックマン、めちゃくちゃ上手い。笑いを取るカカシに転じるシーンは圧巻。


旅芸人みたいに人を笑わせる術を持つライオンだけど、それは過去の悔恨から喪失した自分自身を必死に保つためか。笑わせて、攻撃対象じゃないぞと居場所を必死に確保するカカシ。電話ボックスでの演技に見るアル・パチーノの負け男っぷり。強がりが痛い。あの男の子、パチーノによく似ていた。


騒動、夢、貨物列車、帰郷、妹、女、夢、刑務所、嫁、騒動、騒動。言葉になんか絶対にしないけど、なくてはならない存在になっていく過程、積み上げの上手さに唸らされる。

が、類を見ない余韻をもたらすラストでそれは上書きされた。たまらん、70年代。