今日で日本を出てから11年が過ぎました。あっという間の11年でした。今でも日本を出発した日のことは忘れられません。家の前で家族で撮った写真。その写真を撮ったときの僕の気持ちは、「もう2度とここに戻ってくる事はない」という差し迫ったものだった。もちろんいろいろなことが日本にあり、後ろ髪をひかれる思いであったが、すべてを振り切るかのように日本をあとにした。
 始めの2年間は、とにかくメキシコで言葉を覚えるためよく勉強をした。日本人との接触もほとんどなく、日本語を忘れるぐらいスペイン語漬けになった。
 よく周りの人から、そんなに短期間で言葉を習得したね、と驚かれる。僕に言わせれば、どれだけ自分を追い込んでいるかの違いだと思う。海外に来る日本人の人たちの多くは、腰掛的な気持ちで海外に来る。もっと言えば、表面的な部分だけを見て、日本に帰る。
 本当に海外でやっていこう、というのであれば、自分の持っているすべてのバックグランドを消し去り、これから生きていこうとする社会、文化に一度どっぷり浸かり、自分の価値観を再構築するという過程を経なければ、海外でやっていくことはできないのである。