(疲れた~!)


頑固親父を説得して家まで帰ってきた時、僕の体は疲労困憊していた。

それと同時に身体中が悲鳴を上げていた。

どんなに気丈に見せても、身体の痛みとだるさは容赦なく僕を襲ってくる。

入院してからここ何ヶ月の間に、こんなにも身体がいう事を効かなくなっていたなんて。。。

体力がなくなっていたなんて。。。

普通なら歩いて片道15分程度の距離


それが、今の僕にはもの凄く遠い距離に感じた。
実際に時間も相当かかった。途中、何度も何度も座り込んだ。

今迄気にもならなかった、ちょっとした段差にもつまづいたり、なんども転びそうになった。


・前から蛇行してきたり、後ろからベルを鳴してくる自 転車

・元気に走ってくる子供達の声

・友達通しと仲良く話しながら前を向かずに歩いてくる人達


今までまったくと言っていいほど気がつかなかった日常の当たり前の風景が、

杖をついて鉛を体中に着けたような、今の僕にとっては大きな障害であり恐怖となっていた。  


ちょっとした浦島太郎になった気分だった。

(たまて箱、開けちゃったかな?)

今となって見ればこの頃から、「すみません」と言って歩くのが口癖となった。
(僕の方が不自由な身なのに。。。)

郵便受けに溜まっていた、ゴミなのか重要な書類なのかわからない紙の束を部屋まで持ってくるのにも苦労した。

「疲れた!」

本当にその言葉しか出てこなかった。

部屋に入ってベッドに横になり、携帯の電源を入れた。
何件かあったメールの内、ゆみえからのメールだけを開いて見た。

『おかえりなさい。やはり自分の家は落ち着くでしょう!

少し動きやすい様に掃除もかねて整理しましょうね。


今回の入院でいろいろな事を考える時間ができたでしょう。


今後に役に立ててください。

そうあなたはタダでは起きないよね、何かをつかんで退院してきたでしょうから・・・

あせらずマイペースでやってください。 


* お願い *

一ヶ月の間でなにか行き詰まったらメールなり℡して下さい。


どんな些細なことでもいいから・・・

貴方が考えている事でうまく行かない事もあるでしょうから。


携帯なるべく近くに置いておくからね。

ご遠慮なく。』

「何言ってんだか。。。」と思ったが正直、嬉しかった。
何度も読み返しているうちに、いつのまにか僕は眠りについてしまった。

しかし、この文章の本当の意味がわかったのは、もう少し後になってからだった。


 

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