その週の土曜日に僕は退院した。
当初、「薬漬けにはしたくない」という医師の言葉とは信じられないくらい大量の薬と杖を渡されて。。。
これからこの「杖」がもう1本の僕の重要な足代わりになる。
初めて聞いた医者の「わかりません」と言う名の病名。
今はそれどころじゃないから。。。
と、なんとか振り切ろうとしていたが、僕は帰りの車の中で当方に暮れていた。
後から聞いた話だと、神経内科で入院した患者の多くは原因不明で退院していくらしい。
現状の医学会では、医療過誤や誤診を防ぐ為にエンビデンス(医学的な事実に対する臨床的、学問的証拠、裏付け)がそろわない以上、病名をつけることが難しくなっているのだ。
だから、「疑い」という言葉を多用する。
これからの自分の事を考えると、まったくの未知数のため、不安でいっぱいになった。
それと、どういう風に父を病院に行かせようかと前もって考えていたプランをもう一度、頭の中に叩き込んだ。
幸いうちの家族には長期で入院した人間はいない。
それが退院して来たとすれば、普通なら良くなって退院して来ただろうと思うはず。
入院する前よりも、身体の自由が利かなくなって帰って来たとは誰もが思わないだろう。
まず家に帰り、久しぶりの我家の空気を入れ替えようと思った。
そこで、最初の試練が起こった。
窓を開ける程の力がでない
確かに僕の部屋は大通りに面しているので窓ガラスは普通の家庭の窓よりも厚く出来ている為、重いのはわかっているがその
窓を開けることさえも、こんなに重労働になるとは。。。
なんとか窓を開けることができた。
決してきれいな空気とはいえない東京の空気が、とても新鮮に思えた。
(やっぱり、家がいい。。。)
病院からもらってきた薬をならべてみた。
スーパーで大量に物を買った時のようにでてきた薬をならべてみて、改めてビックリしたのといらだった感情が笑いとなってでてきた。
(これで薬漬けじゃなかったら、本当の薬漬けの患者はどれ位の量を飲んでいるんだ!)
あきれはてて少しの間、ベッドで横になった。
退院したのに入院疲れみたいなものを感じた。少し、うとうとしてしまった。
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