銀魂夢小説 迷いながらも | もっちの銀恋∴銀魂夢小説
2013-12-13 00:00:00

銀魂夢小説 迷いながらも

テーマ:夢小説 伊東

山際から上る朝日の中、最後に発した言葉は……

「ありが……とう」

仲間への感謝の言葉だった。
そして広がる漆黒の暗闇。
わずかな光もない音も届かない深淵。
死後の世界とはこんなものかと無常の世界を漂う。
間違った選択だらけの人生ではあったけれど、それでも望んでいたものを一瞬とはいえ手に入れることができたのだし、悪い人生ではなかった。
そう思いながらも……それでもただひとつの悔いに胸が軋んだ。
江戸を発つことさえ彼女には知らせていない。
どうか、誰か心穏やかに過ごせる一生の相手を見つけてほしい。
どうか謀反を企み血まみれになって死んでいく男のことなど、早々に忘れてほしい。

「どう……か…」

言葉に出すとやけに唇が渇いていて、うまく声にならない。

先生……? 先生!

暗闇の中、彼女の声が聞こえる。
まさか……幻聴だ。
そう思いながらも声の主を捜す。
上手く体が動かない。

先生、しっかりしてください!

「どこ、だ…?」

左手を失った今、必死に右手を暗闇へと伸ばす。

「先生!」

一瞬にして世界に光があふれて目がくらんだ。

「先生、先生……よかった……」

こちらを覗きこみ大粒の涙をこぼす彼女の頬に手を添える。
やけに温かくてこれが現実なのだと知らされる。

「僕は……生きている、のか?」
「はい。近藤局長が内密に先生をここに運んでくださったんです」

一息に言い終えると、彼女は声を詰まらせ嗚咽を漏らした。
どうやら自分はどこかの古い民家で布団に寝かされているらしい。
周りには隊士の姿はなく、彼女と二人きりだった。

「先生、よかった……ご無事で……本当によかった」

よかった……? 僕が生きていたことが本当に良かったのだろうか?
己の欲望のためだけにすべてを巻き込み、黒色に染めた隊士たちの命を簡単に切り捨てた。
そしてまた自分も簡単に切り捨てられた。
そんな自分の生還を喜ぶ彼女をじっと見つめる。

「先生……」

高揚した頬を伝う彼女の涙はとめどもなくあふれ続けた。


****


山深い人里離れた古い農家の家、そこが真選組局長暗殺をたくらみ失敗した自分の幽閉の場所だった。
つつましい食糧や書物が定期的に届けられる。
それを受け取るのは彼女の仕事で、自分は全く外の世界と触れ合うことができない。
彼女はよく働き慣れないまき割りや井戸水を汲んだりと忙しそうにしている。

「先生、お薬の時間です」

白湯と飲み薬を盆にのせた彼女がにこやかに微笑み、布団に横たわる自分のそばに座った。

「すまない」

体を起こして受け取った薬を飲む……ふりをして、そっと着物の袖に落とす。
ここに幽閉されている間は彼女も自由はない。
おそらく僕の恋人であったことで、彼女はここで世話をさせられている。
もしくは自分から世話役をかって出たのだろう。
少し頼りない彼女だが、ここぞというときに芯が強いところを気に入っていた。
けれど死ぬまで幽閉される自分の世話をさせるなど、若い娘には酷すぎる。
近藤が内密に僕をここに運んだということは、たぶん個人的に動いて上にも知らせてはいない。
だとすれば自分はすでに書類上は死んだとされているだろう。
つまり彼女は死人の世話をしているのだ。
一刻も早くこの異常な生活から解放してやりたい……そう思い、与えられる薬はすべて捨てていた。

「先生、もう少し体調が良くなったらお庭に出てみましょう。今は緑も枯れてしまっていますが、山の形も綺麗で一幅の掛け軸のようなんです」
「ああ、そうだな」
「梅の花が咲くころには出られるといいですね」

そう嬉しそうに話す彼女を抱きしめる腕も足りない。

「そうだ、これ……」

彼女が袖の中からいそいそと何かを取り出した。

「これは……胡桃(くるみ)?」
「はい、二個あるのでこれを手のひらで強く握ると、身体を動かす練習になるそうです」
「そうか……やってみよう」

小さくうなずくと、彼女は表情を明るくしてまた仕事に戻っていった。
早く僕に死が訪れてくれればいい。
これ以上、彼女のそばにいては別れがつらくなる。
布団に横になり、胡桃はそっと枕元に置いた。

***

身体が熱い。どうやら熱が出たらしく思考がうまくまとまらない。
彼女は手拭いを水に浸し、こまめに額に載せて熱を取ってくれる。

「先生、薬湯を持ってきました」
「ああ、後でいただくよ。君はもう休んでくれ」
「お願いです、いま飲んでください」

ここに来て一度も薬は口にしていない。どんな薬も飲む気はなかった。

「大丈夫、後で飲んでおく」
「……いいえ」

彼女は唇を噛んで首を横に振った。
揺れる大きな瞳から、今にも涙が零れそうだった。

「先生は……まだご自分を許してない……だから、一度も薬を……」

最後までしゃべることができず、彼女が声を詰まらせた。
気が付いていたのに今まで黙っていた彼女の胸の内を思うと申し訳なさがつのった。

「君は……ここにいては駄目だ。はやく外の世界に戻るんだ」
「いいえ。そんなことは願っていません」
「願わなくても……戻ってほしい。頼む」

熱のためか舌がもつれてうまく話せない。
それ以上喋る気力が持たずに目を閉じる。

「先生……先生……」
「すまない。少し休ませてくれ」
「せめてお薬を……」

頼む……どうかこんな男には早く愛想をつかしてくれ。
そして自分が死んだ時も悲しまないでほしいと強く願う。

「……先生、失礼します」

その時、何か決意したような彼女の声が届いた。
頭の後ろに手が差しこまれたかと思うと、まぶたを下ろしていても目の前が翳ったのが分かる。
そして唇に柔らかな熱が触れて……

「っ?」

重なった唇から苦い液体がのどに流れ落ちていった。

「なに、を……っ!」

むせながら目を開けると彼女は薬湯が入った湯呑を手に、ぼろぼろと涙をこぼしていた。

「先生、お願いです……生きてください。せっかく助かった命ですよ」
「助かった……そうだな。だがこんなところに閉じ込められて一生幽閉生活では死んでいるのも同然だ」
「先生は……私のことを案じられているのではないですか? 私が幽閉生活を嫌になっていつか出て行ってしまうのではないかと……それで自暴自棄になっているのではいのですか?」

それはあまりに鋭い言葉だった。
彼女の身を案じているふりをして、いま彼女が僕のもとを離れていけば今度こそ耐えられないとそればかりを思っていた。
そのために死に急ぐ自分を彼女はちゃんと見抜いていたのだと、今さらに気づかされる。

「私は出ていきません。出ていこうにも先生同様に私は戸籍上死んだことになっています」
「死んだ……?」

思いがけない言葉に息を呑むと、彼女はふっと頬を緩めた。

「近藤局長もそこまでする必要はないって……土方副長にも止められました。でも私が望んだんです……二度と先生のそばを離れない決意をするために」

強い口調に圧倒されながら、ずっと心の奥に押し込めていた気持ちが口をついて出た。

「だが……僕は君を選ばなかった」

あの時の僕は、近藤を暗殺することを選んだ。
彼女との平穏な日々を捨てたのは自分だ。

「先生……」

彼女は新しい手拭いを水に浸して額に置いてくれる。

「先生は幼いころから文武両道で神童と呼ばれていたと聞いています」

だから失敗の経験があまりなくてご存じないかも知れませんね。と、彼女がくすりと笑った。

「どういう意味だい?」
「失敗しても、やりなおせばいいんです。人生は何度でも選びなおせるんですよ」

頭を殴られたような衝撃に、一言も発せられない。

「先生はすぐにかっこつけたがるけど……失敗は悪いことばかりじゃないんです。次に失敗しないように気をつけるでしょう? そうやって学んでいけばいいんです」

先生相手に偉そうなことを言ってすみません、釈迦に説法ってこのことですね……そう言いながら彼女は涙をこらえるような笑みを浮かべた。
胸が痛くて何か口に出さないと潰れてしまいそうだった。
熱で身体が思うように動かない。
それでも必死に手を伸ばして彼女を搔き抱いた。

「行かないでほしい……ずっと僕のそばにいてくれ」
「……はい……」

腕の中で彼女が大きくうなずき、そして誰にはばかることなく声を漏らして泣きだした。
きっと彼女もずっと不安だったんだろう。

「これから薬もすべて飲む。胡桃も毎日欠かさず握る」
「はい……」
「ずっと言えなかった……言うのが怖かった」

親に愛されずに育った自分が口にしていいのか迷っていた。
けれど……

「君を愛してる」

そう口にした瞬間、彼女も僕もただ抱き合ってひたすら涙をこぼし続けた。
春はまだ遠い。
けれど、それまでには体を治して彼女と一緒に庭を歩こう。
淡い願いを胸に、片手で強く彼女を抱きしめた。


おわり





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どうも皆様お久しぶりでございます。
鴨の誕生日だということで、一年ぶりに夢小説を書いたもちこでございます。(と言ってもこれ書いてるの実は夏なんですけど)
ああ、夢小説最高。やっぱ楽しい!
しかも最愛の鴨w
需要がなくても誕生日にまるで関係なくても、己の欲望のままに書き散らかしてみました。
もしここまでお付き合いくださり読んでくださったお嬢様がいらっしゃれば、スライディング土下座で感謝させていただきたいと存じます。

そして銀魂が10周年なんですよね。
なんてめでたいんだろう。
いまだに銀魂が好き。
映画もすごーーーく素敵だったし、改めて銀魂が好きだなって思えた作品でした。
アニメの復活は厳しいかもしんないけど、それでもやっぱり期待してしまうわ。
それまで単行本買い続けますw

なかなかここに来る時間が持てないのですが、それでもここは私にとって大切な場所なので
またひょっこり顔を出したときにはよろしくお願いいたします。

それでは!( ´艸`)

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