涼風文庫堂の「文庫おでっせい」486 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ブレイク、

ブラウン、

ボール>

 

1462「野獣死すべし」

ニコラス・ブレイク
長編   永井淳:訳  植草甚一:解説
早川文庫
 
探偵作家フィリクス・レインは子煩悩だった。
 
その彼が、
最愛の一人息子マーティンを
暴走する自動車にひき逃げされたときの気持は
いかばかりだったろう。
 
自動車は警察の調査にもかかわらずついに行方知れず、
6カ月の月日はただ空しく過ぎてしまった。
 
この上は、
独力で犯人を探しださねばならない。
 
フィリクス・レインは見えざる犯人に復讐を誓った!
 
英国の桂冠詩人、
C・D・ルイスがブレイク名義で書いたこの小説は、
その優れた心理的サスペンスと
殺人の鋭い内面研究によって
アイルズの『殺意』と並ぶ近代探偵小説の
屈指の名作とされる。
 
                        <ウラスジ>
 
 
【桂冠詩人】
(古代ギリシアで名誉ある詩人が
頭に月桂樹の冠を戴いた故事による)
イギリスで、宮内官に列する名誉ある詩人。
今は名誉職で終身年俸を受ける。
国事の際にオードなどの詩を作ることもある。
ドライデン・テニスンなど。
 
<広辞苑:第三版より>
ワーズワースとかも。
 
日本でいったら、<H氏賞詩人>みたいな……。
 
あまり詳しくないのでこの辺で止めときます。
 
<本編>
原題は、
”THE BEAST MUST DIE”
 
この『野獣死すべし』という題名は
昭和二十一年のことだが江戸川乱歩がつけた。
 
こう言うとニコラス・ブレイクがつけた原題と
おんなじではないかと絡まれそうだが、
「死すべし」というふうに強い助動詞で処理するなんて、
ちょっとほかの人たちには考えつかないことなので、
ぼくはすっかり感心してしまった。
 
<植草甚一:解説より>
 
植草さんは ”ぼく” という一人称が似合う……。
 
それはともかく。
 
『野獣死すべし』の名付け親である乱歩は、
この12年後の昭和33年、
同じ題名を持つ日本の作品を
自分が編集長だった【宝石】に全文掲載することになります。
 
『野獣死すべし』
作者は大藪春彦。
 
本家のブレイク作品は
昭和51年のハヤカワ文庫刊行まで、
<伊達邦彦>の後塵を拝すことになります。
 
<探偵>
ブレイクが生活費捻出のために書き出した推理小説。
 
この『野獣死すべし』はミステリーの処女作でもないし、
ミステリーはこれ一作だけでもありません。
 
しかも、レギュラーの探偵、
ナイジェル・ストレンジウェイズにとっては、
四作目。
 
実は一作目から三作目までも日本語に訳されていて、
愛読者にとっては、『クロイドン発12時30分」』みたいに
後半でお馴染みの探偵が登場する、
というパターンに近いでしょうか。
 
<息子>
ニコラス・ブレイク、
本名は、セシル・デイ=ルイス。
 
息子は、
ダニエル・デイ=ルイス。
 
 
知らぬ間にアカデミー主演男優賞を
三回も取っていたなんて……。
 
何度も言いますが、
私は2000年前後から
新作映画をほとんど観なくなったので、
私の中でのダニエル・デイ=ルイスは、
『マイ・レフトフット』1989年
『ラスト・オブ・モヒカン』1992年
『父の祈りを』1993年
で止まっています。
 
私にとっては
『マイ・ビューティフル・ランドレット』1985年
かな。
 
ちょうど、
ジェームズ・アイヴォリー系(?)の、
”英国美青年軍団”
 
ジェームズ・ウィルビー
ヒュー・グラント
ルパート・グレイヴス
ジュリアン・サンズ
コリン・ファース
 
の流れに乗って登場したイメージですかね。
 
ああ、
アイヴォリーのおかげかどうか、
19世紀生まれの作家、
E・M・フォースターがにわかに
注目され始めたのを覚えています。
 
……そして文庫化。
 
『眺めのいい部屋』 ちくま文庫 (読了)
『インドへの道』 ちくま文庫
『モーリス』 光文社文庫
 
 
 
 
 
 

1463「ダムダム」

カーター・ブラウン
長編   田中小実昌:訳  早川文庫
 
 
ウィーラー警部は、
映画のオープンセットみたいな奇妙なでこぼこの家に、
おっかなびっくり乗り込んだ。
 
ダムダム弾を撃ち込まれた男が
ガレージで死んでいるから来てくれと
連絡を受けたのだ。
 
その家の住人は、
いずれも家に劣らぬ変わり者、
なんでも50万ドルもの大金を隠して刑務所入りした
ギャングの家を買ったのだという。
 
ところが、事件後まもなく、
当のギャングが出所してきた。
 
はたして始まった、
目もくらむような大金をめぐるギャング同士の珍騒動!
 
ナンセンスハードボイルドの旗手
カーター・ブラウンが放つ、
お色気いっぱいの痛快作!
 
                        <ウラスジ>
 
 
カーター・ブラウン初登場は、
あの ”女探偵” とともに。
 
 
アル・ウィーラー警部ものの一編。
 
最後はダムダム弾じゃなくて、小型機関銃の乱れ打ち。
 
(使われるのはトムソン、別名トンプソン
 ――いわゆるギャング御用達の銃。
 シュマイザーとともに、峰不二子の扱うサブ・マシンガン)
 
当然、そこそこ死体が転がります。
 
で、
 
「骨無しの芸ができるヌード・ダンサーとくらしてる男なんて、
そうザラにはいまい。」
 
最後は、
事件関係者の女と同居する破目になった、
と言うハッピーエンド(?)。
 
軽っ。
 
 
文庫だともう一冊、
『死体置場は花ざかり』
でお目にかかれます。
 
<余談 1>
ポケミスで60冊以上出ていたブラウンの著作も、
文庫になってからは
 
『死体置場は花ざかり』
『乾杯、女探偵!』
『ダムダム』
 
の3冊で打ち止めのよう。
 
読み捨てられ、二度と陽の目を見ない
パルプマガジンみたいなもんになってしまったか。
 
もともと、そこの出身だし、
著作も ”原点回帰” したってことか。
 
せめて
翻訳されたメイヴィス・セドリッツものの残り3編、
『明日は殺人』
『女闘牛士』
『女ボディーガード』
は文庫まで降ろしてほしい。
 
<余談 2>
このカーター・ブラウンの系統を継ぐのが
 
”冗談ハードボイルド” 
 
と呼ばれたロス・H・スペンサーの
”私立探偵パーデュー・シリーズ” 。
 
こちらはハヤカワ文庫で5冊読んでいます。
 
あと角川文庫から一冊出てるんだよなあ……。
『俺には向かない職業』
 
(出版社は変わっても、相変わらずフザけてる)
 
ちょうどこのシリーズを読んでいる最中、
後輩から
「スペンサーものって、読んでます?」
と聞かれたので、てっきりロス・Hのことだろうと思って
「読んでるよ」
と答えました。
 
しかし話が全くかみ合わないので、
よくよく聞いてみると、
後輩はロバート・B・パーカーの
<スペンサー・シリーズ>
のことを言ってるのでした。
 
正統派ハードボイルドの旗手。
 
当時わたしは
『ゴッドウルフの行方』か『約束の地』かを
読むか読まないかの時期だったので、
逆に後輩から色々と情報を得ることになりました。
 
 
 
 
 

1464「夜の熱気の中で」

ジョン・ボール
長編   菊池光:訳  早川文庫
 
 
八月の夜の熱気に包まれ、
死んだように平穏な南部の田舎町で殺人がおこった!
 
被害者は町を訪れていた著名な音楽家、
さっそく町中に非常線を張りめぐらせた警察は、
容疑者として一人の黒人を連行した。
 
だがその男こそ、
カリフォルニア州パサディナ警察の敏腕刑事
ヴァージル・ティッブスだった……!
 
偏見と蔑視の中で事件を追う黒人刑事を描いて、
本格推理小説に現代性を加味し
MWA最優秀新人賞とCWA賞を獲得した名作。
 
冷徹な頭脳とエネルギッシュな行動力を
兼ね備えた現代の名探偵ティッブス刑事初登場!
 
                        <ウラスジ>
 
 
”黒いシャーロック・ホームズ”
 
自分の疑いが晴れて、
二番目に容疑者となった男を
”犯人ではない”
とした観察力と分析力が、
まさにホームズの「つかみ」を彷彿とさせます。
 
しかし、
この作品はやはり映画とともにあるようで……。
 
という事で次のコーナーへ。
 
 
 
【涼風映画堂の】
”読んでから見るか、見てから読むか”
 
 

◎「夜の大捜査線」 

In The Heat Of The Night

 
1967年(米)ユナイト
製作:ウォルター・ミリッシュ
 
監督:ノーマン・ジェイソン
脚本:スターリング・シリファント
撮影:ハスケル・ウエクスラー
音楽:クインシー・ジョーンズ
原作:ジョン・ボール
出演
シドニー・ポワティエ
ロッド・スタイガー
ウォーレン・オーツ
リー・グラント
ラリー・ゲイツ
 
* ノーマン・ジェイソン。
* この時代から映画史に残る名作が目白押し。
* 『華麗なる賭け』1968年
  『屋根の上のバイオリン弾き』1971年
  『ジーザス・クライスト・スーパースター』1973年
* 以後もたくさん。
 
* シドニー・ポワティエの当たり役。
* 文庫の表紙も、『世界の名探偵50人』でも、
  ”ヴァージル・ティッブス” として
  彼の顔が描かれている。
 
* が、この作品でアカデミー主演男優賞に輝いたのは、
  警察署長を演じたロッド・スタイガー。
* これって、
  『フィラデルフィア物語』のジェームズ・スチュワート、
  『旅路』のデヴィッド・ニヴン
  と同じパターンか。
* オスカー獲るなら『質屋』だろうに。
* まあポワティエは『野のユリ』で一足先に獲ってるし。
 
* ウォーレン・オーツ。
* ペキンパー一家。
 
* リー・グラント。
* 「赤狩り」の犠牲者の一人。
* この作品と『オーメン2/ダミアン』の印象深し。
 
* この映画のスチール写真と言えばこれ。
 
  
 
最後のシーン
 
名作の名作たるゆえんは、
ラストシーンにあり。