涼風文庫堂の「文庫おでっせい」  60.. | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<久々の海外推理>

 
 

189.「僧正殺人事件」

S・S・ヴァン・ダイン

長編   井上勇:訳  中島河太郎:解説  創元推理文庫

 

「童謡殺人」の嚆矢。

 

別名:”見立て殺人”

 

 

コック・ロビンを殺したのはたあれ

  「わたし」って雀がいった。

  「わたしの弓と矢でもって

  コック・ロビンを殺したの」

 

 

【マザー・グースの動揺につれて、その歌詞のとおりに怪奇惨虐をきわめた連続殺人劇が発生する。】

 

【無邪気な童謡と不気味な殺人という鬼気せまるとり合わせ!】

 

【友人マーカムとともに事件に介入したヴァンスは、独自の心理分析によって歩一歩と犯人を追いつめる。】

 

【「グリーン家殺人事件」とならんでヴァン・ダインの全作品の頂点をなす傑作とされている名編。】

 

【本書を読まずして推理小説を語ることはできないといっても過言ではない。】

 

                                              <ウラスジ>

 

えらく力の入った<ウラスジ>ですが、さもありなん、と言ったところでしょうか。

 

この作品の10年後に「そして誰もいなくなった」が書かれ、見立て殺人が市民権を得ることにはなりましたが、元祖は何といってもこちらです。

 

きっかけは初めの被害者のフルネームが、ジョジフ・コクレーン・ロビンだったことに始まります。

 

この青年の名がもし違っていたら、この童謡殺人の連続性は著しく損なわれていたかも――。

 

ヴァンスはこの殺人事件の裏に潜む”遊戯性”にいち早く気付いたのでしょう。

 

では、そんな事を為しうる人間とは、いかなる人間か?

 

と、ここである方のエッセイを取り上げて、この作品を読んだ後に感じた事と結びつけて披露しようと思ったのですが、止めておきます。

 

ある職業が特定されてしまうので――。

 

 

もう、次の「アクロイド」もそうなんですが、<超>のつく有名な推理小説を紹介するのはホントに難しい。

特に<トリック>が主題化しているもの、これが一番厄介です。

 

縦にも横にも拡げられないから――。

 

その点、「僧正」は殺人の形式という範疇に収まっていますから、まだましです。

 

ただ犯人に関してはねえ……。

 

クイーンの<悲劇>四部作じゃないけど、

 

つい、『ああ、○○が犯人のやつ(小説)ね』とか言ってしまいそうで……。

 

ヴァンスのディレッタントらしいペダンチックな物言いについては又次の機会に。

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 

190.「アクロイド殺害事件」

アガサ・クリスチィ

長編   大久保康雄:訳  中島河太郎:解説  創元推理文庫

 

エルキュール・ポワロ 初登場。

 

取りあえず<ウラスジ>から。

 

【ファラーズ夫人が、睡眠剤を多量に服用して死んでいるのが発見された。】

 

【自殺か他殺か不明のままに、つづいて村の名士アクロイド氏が、短剣で刺殺されるという事件がもちあがった。】

 

【シェパード医師はこうした状況を正確な手記にまとめ、犯人は誰か、という謎を解決しようとする。】

 

【ミステリの女王アガサ・クリスチィを代表する傑作で、独創的な大トリックにより、世界推理小説中、五本の指に数えられる古典的名編。】

 

【そのトリックをめぐり、つねに論争の的になる問題作!】

 

 

ううー。

 

 

ウラスジ書いてる人も大変だ。

 

どう書いても引っ掛かってしまいそうだもんな。

 

このウラスジだって、”セーフ” とは言えないし。

 

 

だから余計な賛辞を加えて原稿用紙を埋めたとしか思えない。

 

古典的名編である事は認めるとして、五本の指はちとオーバーだろう。

 

入るとすれば「そして誰もいなくなった」の方だろうし。

 

第一、五本の指に入る名作が、どうして、”つねに論争のまと” になるんだ?

 

そんな不安定な評価のものは ”問題作” 止まりだろう。

 

 

 

などと言いつつ、トリック以外の話題はないかなあと探してみたら、あったあった。

 

16章の「麻雀の夕」。

 

「荘家(おや)」「サンソウ」「リャンピン」「ポン」「スウピン」「チィ」「暗槓(あんかん)」……。

 

やってるやってる。

 

このころ欧州で流行っていたそうな。

 

私は最初、ヴァンスのポーカーのように麻雀で心理分析でもするのかと思っていましたが、残念ながら、この夕べにポワロは参加していませんでした。

 

ちなみに私の好きな雀士は、佐々木寿人プロとか山井弘プロ、女流なら高宮まりプロみたいな攻撃型雀士です。

 

ああ、しばらく<モンド杯>観てないなあ。

 

もとい。

 

とにかく、この「アクロイド殺害事件」の一点突破を目指して下さい。

 

そうすれば、これと同じようなトリックを使った作品、そしてその変形とも言える、結構な勢力を誇る、”と――。

 

いかん、言葉を変えて、”じょ――。

 

わっと。

 

◯◯和子じゃないけど、「危ない危ない」

 

以上です。

 

頑張ってください。

 

 

 

 

 

 

 

191.「バーネット探偵社」

モーリス・ルブラン

短編集   堀口大学:訳  新潮文庫

収録作品

 

1.したたる水滴

2.ジョージ王の恋文

3.バカラの勝負

4.金歯の男

5.ベシューの十二枚のアフリカ株券

6.偶然が奇跡を作る

7.白手袋……白ゲートル

8.ベシュー、バーネットを逮捕す

 
 
【ルブラン円熟期の作品で、ルパンはジム・バーネットと名乗ってパリの真ん中に探偵社を開業する。】
 
【パリ警視庁のベシュー警部は、ルパンのたんまりピンはねする営業方針を苦苦しく思いながらも、事件解決の際にはいつも知恵を借りる羽目になるので手が出せない。】
 
【その上警戒していてもピンはねされて地団駄をふむ結果になる……。】
 
【探偵小説には珍しいユーモラスな異色編である。】
                                            <ウラスジ>
 
とにかく楽しい読み物です。
 
探偵が事件を解決するという図式を取っていますから判りやすいし、ウラスジにもある通り、事件の後いかに儲けるか(ピンはねするか)が目的ですから、とにかく解決が早い。
 
この連作もののレギュラーであるベシュー警部の<ピンはね>されたもの、それは別居中の妻(座つきの歌姫)でした。
 
これには憤懣やるかたない態のベシュー警部でしたが、最終的には、
 
【無実の者が勝利を得、受けた損害がつぐのわれ、犯罪が何らかの方法で罰せられるという点が重要なのではないだろうか?】
 
【だから毎回事件の最後に現われる、そしていつも悪事を働いた連中、過失を犯した人たちの損害の形で行われる、バーネット流のぴんはねを、重要視する必要がはたしてあるだろうか?】
 
と言う悟り(?)を開いて、この知恵袋から離れて行きます。
 
最後の最後、ベシュー警部は<警視昇格>というプレゼントを、バーネットから受け取ります。