<めくるめく、推理小説の世界へ>
26.「黄色い部屋の謎」
古典中の古典、名作中の名作、と謳われるフランス産の推理小説です。
今でこそルルーと言えば、『オペラ座の怪人』が代名詞となっていますが、この頃は圧倒的にこの作品の知名度の方が高かったと思います。
――密室犯罪と意外なる犯人に二大トリックを有する本編は――。
見開きにあるウラスジ(?)通り、十八歳の新聞記者
ジョゼフ・ルールタビーユ
がこの二つの謎に挑みます。
密室の方は――。
しばし指摘される、”古色蒼然たる” といった形容を否定するつもりはありません。
ですが、シンプルなだけに、そうならざるをえない理由付けさえしっかりしていれば、今でも使えるものだと思います。現に、何かの2時間ドラマで使われていたのを見た事があります。
意外なる犯人は――。
犯人と目される人物の過去を洗うため、ルールタビーユは旅に出ます。
24.ルールタビーユ、犯人の二つの面を知る
25.ルールタビーユ、旅に出る
26.ルールタビーユ、到着をひたすら待たれる
27.ルールタビーユ、栄光に包まれて現われる
こんなに ”章” を使いますかね。
それはともかく、この方法はのちの雛形となって、犯人と思しき人物が今の地位や職業に就くまで、何をやって来たのかを探る手段として探偵が旅に出る、というパターンが定着します。
『悪魔が来りて笛を吹く』なんかもそうですね。
で。
意外な犯人、こんにちに至っては別段、意外でも何でもない気がするでしょう。
ネタバレになるでしょうが、一応、仄めかしとして――。
○○役が二人いる場合、そのどちらかが犯人である可能性が非常に高い。
以上。
27.「Yの悲劇」
28.「Xの悲劇」
人によっては「Yの悲劇」よりも評価が高い一品です。
市街電車の中である株式仲買人が殺されます、凶器はポケットに入っていた小さなコルク玉で、これにニコチンの毒を塗った無数の針が刺さっていたのです。触って指にちょっとでも刺さったらアウトとなります。
この事件は解決せず、第二、第三の殺人が行われます。
特に第三の事件で見られた被害者のダイイング・メッセージ――。
――中指が人さし指の上に重ねられて、奇妙なかたちに堅くからみつき、親指と残りの二本の指は内側へ曲げたまま硬直していた――。
実際にやってみればお判りになると思います。
そう、これが ”X” です。
これが何を意味するのか、レーンの頭脳が答えを導き出すのです。
余談になりますが――。
この四部作にはいろいろ個人的な曰くがあって、それについては残りの2作を紹介したあとに語りたいと思います。