六月の紫陽花とカエルの涙

六月の紫陽花とカエルの涙

ソープ嬢に恋した僕。
石鹸の香りの青春だってある。
公開後も適宜、加筆修正しております。

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それから少しの間、待合室で待つことになった。
待っている間にドリンクを持ってきてくれるとのことだったので何となくウーロン茶を頼んでみた。正直なんでもよかった。
待合室には週刊誌などの雑誌が置かれているだけでなくテレビもついていた。
週刊誌を手にし深々とソファに腰掛け、読み始めるが緊張でまったくと言っていいほど中身が頭に入ってこない。
パラパラと何ページかめくっていると、先ほどのボーイとはまた違ったボーイがウーロン茶を持ってきて「もう少々お待ちください」と深々と頭を下げ去っていった。人生でここまで人に頭を下げられるのはもちろん、丁寧に扱われるのは初めてだった。
呆然としながらウーロン茶を口にし、テレビに目を向ける。
緊張して気づかなかったが、AVが流れているではないか。
待合室には僕一人。パンパン、アンアンと静かな室内にピンク色の声が響いていた。

数日後、まだ日も明るいうちにソープ街に足を踏み入れた。
そこは自分の知っているどの街とも違っており、独特の雰囲気を醸し出していた。漢字、片仮名、アルファベット、様々に表記された看板が上に下に掲げられていた。どの看板も妙に明るい色であったり、逆に夜を思わせるような黒色や青色の背景にピンク色などの蛍光色で店名が書かれている。建物の色や形も様々で統一性はない。この一画だけが異様に感じられた。
システムも判然としないまま先輩に薦められた店に行くことにした。
真夏日だったこの日、付近のコインパーキングに車を止め、炎天下の中を店まで歩いた。清潔感を出すためにも、朝にシャワーを浴びてきたのに、炎天下の中を歩いてかいた汗でTシャツは重くなっていた。
店の中はエアコンで冷えており待合室に足を踏み入れたころには汗はひきはじめていた。
待合室まで案内してくれたボーイと思われる男性が片膝をつき、「本日、ご予約はございますか」と言う。
(予約!?)
いえ…
「本日、ご指名はございますか」
(指名??)
いえ…
「それでは、フリーでご案内してよろしいでしょうか」
(フリー????)
ええ…

システムくらい調べておけばよかった。
激しく後悔した。
ソープランドに行けばセックスができる。

先輩からソープランドの存在を知らされた僕の頭の中はこれからするであろう初体験のことでいっぱいだった。

寝ても覚めてもその事が頭から離れず、悶々とした数日間を過ごすことになった。
なかなか店に行く決心がつかなかったこともあってか、時間を見つけてはネットでソープランドについて調べていた。

1店舗しかないのであれば、そこまで悩む必要もなかったのだが、店舗がいくつかあることもあり、各店舗のホームページを見ては在籍している女性の写真とにらめっこをしていた。
ふと、ホームページを見ていると、ある単語に?となった。

どの店舗のページにも書かれていたことなのだが、それは、「入浴料」「サービス料」という単語だった。

ネットでこの2つについて調べたところ、サービス料は入浴料の2~3倍が一般的で、入浴料とサービス料を足したのが総額だと書かれていた。

さらに、店舗には高級店、中級店、大衆店、激安店と大きく分けて4つの種類があることを知った。

自分の初体験に金を惜しむのもなぁと思ったが、いきなり高級店に行けるような懐の余裕もなかったので、一般的な中級店若しくは大衆店に行くことに決めた。

もちろん、いきなり高級店に行き、「性行為未経験者はご遠慮願います」とボーイに追い返されるのではないかという不安な気持ちもあった…。

その後は、お店のホームページを見て、どの店に行くか候補を絞ろうとしたが、ほとんどの女の子はモザイクや手で顔を隠していて、写真の雰囲気やプロフィールに記載されているスリーサイズ、年齢などで、自分の好みの女の子を探すしかなかった。

あの頃抱いていた甘酸っぱい初体験への憧れは、ふんわりと漂う石鹸の香りの初体験へとダウングレードするわけなのだから、せめて少しでも自分が理想とする相手に近い女性を探してやることは過去の自分への罪滅ぼしを含めてもするべきなのだろう。

自分の初体験相手になるのだから必死に絞り込んだ。
AVや漫画などの影響もあってか、この頃はまだ風俗嬢は全員スタイルが良くて美人だと思っていた。