沢木耕太郎さん著『天路の旅人』

読了しました。


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000760.000047877.html 


https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pE2YPOaAz9/ 


密偵として中国大陸の奥深くまで潜入した西川一三さんが日本に送還されるまでの8年間の「旅」がえがかれている。


沢木さんが西川さんに会って話を聞く序章、第一章から始まる。

沢木さんのどことなくチャーミングな面も少しのぞく。

密偵として過酷な状況の中、途中で終戦を迎えながらも蒙古人「ロブサン」として旅を続ける西川さん。

過酷な状況に置かれてもそれよりも自分の好奇心から先に進みたいという思いから「旅」を続ける西川さん。

その長い旅の中でたくさんの出会いがあり再会もあり別れもあった。

その旅の中で西川さんは熱く「生きていた」
生きる力が強いというか。


托鉢や無賃乗車など最初は抵抗があったものを生きるため前に進むためにするようになる。
その姿には勢いを感じる。

その過酷な中でほっこりしたりクスッとしたり優しい人々との出会いも印象的だった。
役人相手に芝居をうったり。

獰猛な犬・センゲイの描写がかわいく、動物ヤクとの関係も心に残った。

蒙古人ロブサンとして人に好かれて尊敬され、人に助けられ人のことも救ってきた。


たくさんのひとや安定した仕事にも恵まれているのにまだ先へ行きたいという思いからその生活を手放す。


それだけに強制送還が決まったときにはとても残念に思った。
まだ旅を続けさせてほしい、そう思った。


そんな西川さんの旅を読んできたので、日本に帰ってから普通に商事会社に収まったことが意外だった。

またすぐに旅に出ていきそうに思っていた。


沢木さんが会ったスーラーの太鼓の老人が西川さんが出会った人と同じかもしれないというところにゾワッとした。


西川さんの娘さんと沢木さんのやり取りなども印象的だった。

娘さんの思いや状況が少し自分と重なるところもあり読んでいて辛くなった。


570ページを超える本作だが、とても読みやすい。
読み始めると止まらない。
でも読み終わるのがもったいない。
そんな気持ちで読み進んでいった。


そしてあとがきまで読み、本を閉じて思った。
まだ西川さんの旅が続いてほしかった。
もっと西川さんの旅を追いたかった。