※このお話は個人の妄想(BL)であり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。


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「……なぁ潤……」
 


潤の背中に両腕を伸ばした七之助が、後ろから潤の上半身を搦めとるようにバックハグをすると、周りにいる女子たちの色めき立った黄色い悲鳴のような叫び声が教室中に響き渡った。


潤はどうでもいいとばかりに七之助にされるがままになっていると、七之助がバックハグの姿勢のまま後ろから潤の耳に唇を寄せて耳打ちをする。


「……知ってる?
俺ら周りから『付き合ってるんじゃないか』って言われてるんだぜ」


潤は顔色を変えず、うるさそうに七之助の腕を振り払った。


「……くだらない……

そういうのマジだりぃ」


カバンを掴み、潤は立ち上がる。


「……帰んの?」


「今日はこれから仕事があんだよ
じゃあな」


仕事があるなんて嘘


教室が息苦しい
全てがめんどくさい


あれから潤は何度となく七之助を抱いている
請われるままに


七之助のことは嫌いじゃない
むしろ好きだ
それは変わらない


だけど……


「あれ?潤?
帰るのか?
仕事?」


「……しょおくん……」


潤は芸能コースがある校舎の外で教室移動をする翔とばったり出くわした。


「……しょおくん、、
うん、、仕事……
……いや、、仕事じゃなくて、、」


潤は赤くなって俯く
翔を目の前にすると、学園中から『俺様キング』として崇められている潤はどこにもいなくなってしまうのだ。


「……?
何だか様子が変だぞ?
どうした?大丈夫か?」


翔が心配そうに潤に声をかける。
その優しく落ち着いた声に
潤は何故だか目頭が熱くなってきて……


「……潤、、
今日は仕事じゃないんだな?
このまま帰って家にいるのか?」


「……え?
あ、うん、、
ちょっと、、ゆっくりしようと思ってる……」


「……そうか
じゃあ、、俺も今から潤と一緒に帰るから」


「え?!
しょおくん、、授業あるでしょ?」


潤はびっくりして顔を上げた。


「……別に
授業なんか聞いても聞かなくても同じだし
教師の言ってることは全て教科書か参考書に書いてあるから
潤、校門の外で待ってて
すぐカバン取ってくるから」


「あ、しょおく……!」


潤の制止も聞かず
翔はひらりと身を翻し、その場を去ったのだった。





ーーーーー





「……潤の部屋は相変わらずいつも綺麗で整頓されているなぁ
俺の部屋とは大違い」


「……しょおくんは勉強で忙しいから……」


「潤だって仕事が忙しいだろ?」


「……忙しいったって、デビューしたばかりだし、、
まだまだだよ……」


潤は自室のローテーブルに2人分の飲み物を置く。


翔がこの部屋に来るのは久しぶりかもしれない。
芸能コースにいるデビューしたばかりの潤は、進学コースにいる翔とは色々とタイミングが合わなくて。

最近は2人で話すこともほとんどなかった。



そして翔は部屋に入ってから何故か潤をじっと見つめてきて。


あからさまな視線を感じて、、潤はもじもじしてしまう。


しばしの無言。
 


授業をサボったからまだ日は高く、潤の両親は仕事でいない。
帰ってくるのは夕方以降だ。


潤と翔しかいない部屋は2人が黙っていると妙に静かで……


「……潤さ、、
俺に隠してることがあるだろ」


沈黙を破り、翔が潤に問いかける。


「……え……。。
いや、、別に……」


「とぼけても無駄
……だって、、ほら、、ここ……」


翔が自分の首筋辺りを指で軽くトントンと触れる。
最初翔の意図が分からなかった潤だが、すぐにその意味に気づき、、咄嗟に潤は自分の手で首筋を隠した。


七之助のヤツ……!
あれほど痕はつけるなって言ったのに……!


手のひらで首筋を覆ったまま潤は俯く
どうしていいのか分からなくて


「……潤は……
恋人が、、できたのか……?」


「……!
そんな!
恋人なんて……!」


翔の言葉に驚いて潤は頭を上げる。


「……じゃあ潤は、、好きでもないひとと、、そういうことをするのか……?」


「……すき、でもない、、ひと……」


七之助のことは嫌いじゃない
むしろ好きだ


でも……


翔が潤を真っ直ぐに見ている。
何もかも見透かして優しく赦してくれるようなその大きな美しい眼差しに、、
潤は全てを委ねたくなって……


「……しょおくん……
……おれ……」


潤は七之助とのことをひとつひとつ語り始めた。