次のような文章を書きました。


第12.5章 認知症

認知症もメタボ系の病気の1つと考えられます。他のメタボ系の病気と同じように、認知症も近年増加傾向にあります。未開の地ではほとんど見当たりません。リンドバーグ氏はKitava島において認知症の人がいる兆候を全く見かけませんでした。また認知症の症状のある人を知っている人を見かけませんでした。認知症のうち、アルツハイマー病と糖尿病とは共通のリスク要因があります。また「アルツハイマー病は脳の中の糖尿病である」と主張する説があります。

アメリカの国立老化研究所は、アルツハイマー病を予防するために、砂糖、白いパン、白い米を減らし、全粒穀物を摂取するように勧めています。またハーバード大学は、認知症を予防するために、野菜や果物の多い食事、運動、十分な睡眠、ストレス対策、社会との関係、頭を使うことなどを勧めています。これらは、メタボ系の病気の予防対策と多く重なっています。これに対して、例えば水銀などの重金属障害では、そのようなことでは予防されません。

前に申し上げたように、英国政府は食事中の塩分を15%減らすなどの対策を行ったところ、心筋梗塞が40%減少すると同時に、アルツハイマー病の発生が2割減少しました。このことも、アルツハイマー病がメタボ系の病気であることを示唆しています。

また、アルツハイマー病においても、他のメタボ系の病気と同じように、慢性的な炎症反応が関与しています。脳内の炎症はマイクログリアと呼ばれる免疫細胞の蓄積によって生じますが、「脳内の炎症を標的として治療をおこなったところ、アルツハイマー病の進展を止めることができた」とする報告があります(BBC)。

プレデセン氏によれば、アルツハイマー病の原因は36あり、患者さんによって異なるとのことです。そして、その原因に対して正しく対応すれば、アルツハイマー病の進行を止めて、改善させることも可能であるとのことです。この本の日本語版の監修者である白澤教授は、「日本人の場合、ビタミンD不足、ホモシステイン高値がアルツハイマー病の原因であることが多く、後者は、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12で治療できる」と述べておられます。私は、勤務先のほとんどの患者さんに、ビタミンD(1000国際単位)と総合ビタミン剤を、飲んで頂いています。

またレイティ氏も、ビタミンD(1000国際単位)と女性にはさらにカルシウム1500ミリグラムを摂るように勧めておられます。また同氏は、記憶力と処理速度を高めるためにビタミンB類と800ミリグラム以上の葉酸(ビタミンB9)の摂取を勧めておられます。さらに同氏は、「低炭水化物ダイエットは、減量はできても脳には良くない。全粒穀物は複合糖質を含み、単純糖質のように急激に増減しない安定したエネルギー供給をもたらす」と述べておられます。

私は、2、3年前に、記憶力の低下を自覚しました。それ以来、体を動かす量を増やしています。毎日1万歩以上歩いています。週に1回15㎞を歩きます(7月と8月は休んでいます)。片道2時間の通勤中には、座れる場合でも立っています。帰宅後もなるべく立っています。以前は、日焼け止めクリームを毎日塗っていましたが,今はやめています。白米を玄米に替えています(葉酸の摂取が増えます)。現在は,記憶力の低下を自覚していません。

老人になっても、認知症を予防すると同時に、学び続けることにより、知恵を多く持つ者になることができます。そして、社会に貢献することができます。