映画「Hachi」には子犬、成犬、老犬のハチ公が出てきます。老犬のハチ公はゆっくり歩きます。
老化はなぜ起きるのでしょうか。電気製品を買うと最初は新品ですが、使ううちに古くなってやがて壊れます。老化もそのようなものでしょうか。
動物によって老いる速さはかなり異なります。私がいた保健所ではイヌが10歳を超えると長寿犬として表彰していました。ネズミではもっと寿命が短くなります。
また、細胞のレベルでは、がん細胞は老化しないように見えます。ヒーラ細胞と呼ばれるがん細胞は、世界中で培養されていますが、老化せずに増殖を続けています。
京都大学の山中教授が作成されたiPS細胞では、分化した細胞(つまり老化した細胞)に4つの遺伝子を入れると、初期化され、幼若なiPS細胞に変わります。
どのような仕組みで老化は起きるのでしょうか。
(1)「老化の進化論」(マイケル・ローズ、2012年)を読みました。
「(ショウジョウバエは)生殖と生存の間のトレードオフをやっている」(p88)
「女王バチが働きバチよりもはるかに多産で、それなのに長生きでもあるという事実はとても重要だ。(中略)。ミツバチには生産力と長寿の生殖的トレードオフは存在しない」(p110)
(2)「老化という生存戦略」(近藤、2015年)を読みました。
「ヒトのテロメラーゼ遺伝子を細胞の中で人工的に強制発現すれば、テロメア長は維持されるとともに、細胞老化現象は観察されなくなる」(p41)
「テロメア長はヒト加齢性疾患とも相関する」(p44)
「生体側のがんに対する防御機構のひとつとして、細胞老化を誘導するというトレードオフが行われたのではないか」(p75)
(3)「老化はなぜ起こるか」(オースタッド、1999年)を読みました。
「医師たちは何年か前から、糖尿病を治療しないと老化が促進されたのと同じ状況になることに気づいていた。白内障、アテローム性動脈硬化症、心臓発作、脳梗塞、肺や関節の硬化といった老化にともなう一般的な病気が、糖尿病患者の場合には比較的早く発症するのである。(中略)。老化とは部分的にはメイラード反応の生成物が身体のなかでゆっくりと蓄積されて起こるのかもしれない」(p181)