(1)心理職の投薬
心理職の者が患者さんに精神科の薬を投与することについて、次のような文章を読みました。
「心理資格者が行う投薬について About Prescribing Psychologist 」米国心理学協会APA
http://www.apapracticecentral.org/advocacy/authority/prescribing-psychologists.aspx
http://www.apapracticecentral.org/advocacy/authority/prescribing-psychologists.aspx
「1991-1997に、米国国防省は、軍事基地において、10人の心理職の者が薬の投薬を行うプログラムを始めた。このプログラムは成功し、投薬は安全に行われた」
「2002年に、ニューメキシコ州で、適切に訓練をうけた心理職の人に、薬の投薬が認められるようになった」
「2004年に、ルイジアナ州で、心理職のうち、資格を取得した人に薬の投薬を認める法律が成立した」
「2014年にイリノイ州で、心理職のうち、神経薬理学で訓練を受けた人に、薬の投薬が認められるようになった」
今のところ、心理職の人に、抗精神病薬の投薬が認められているのは、米国ではこの3州だけであるとのことです(要件は州ごとに異なりますが、例えば博士号を取るなどの追加的な教育を受け、さらに投薬に関して1000時間を超える監督を受け、さらに投薬する資格を得るための試験に合格する必要があります)。英国には、こうした制度は無いようです。
日本では心理職の人は、病気の診断や治療を行うことはできません。行えば、医師法違反になって、罰則があります。日本では、病気の診断や治療は、医者が独占的に行っています。日本で心理職の人の投薬が可能になるのは、ずっと先になると思われます。米国のほとんどの州で可能になってから、さらにかなりの時間がかかるでしょう。精神の問題を扱う場合に、医者の免許証が無いと、仕事の内容はかなり限定されます。
(2)心理職と法律職との境界
親が離婚した子どもの処遇や、非行少年の処遇は、心理職が決めるのではなく、法律職が決めます。法的な議論を基にして裁判官が決めるのです。だから、子どもの処遇の問題を扱う場合には、法律の資格を持っていないと仕事の内容が制限されます。
心理学の資格は、排他的な資格ではありません。公務員試験(心理)や家裁調査官補試験(心理)は、就職試験であって資格試験ではありません。
私が心理学を勉強していた頃の司法試験には選択科目があり、商法の代わりに心理学を選択することが可能でした。司法試験(計6科目)の心理と、公務員試験(1科目)の心理は、同じくらいの難しさであると言われていました。心理職の人が、逆に法律を勉強して、法律の議論に参加しても良いわけですが、それは不可能です。もしそれが可能なら、司法試験を受けて通すでしょうから。このように心理学にはマンパワーの問題があります。
英国のCAFCASSという組織は、政府機関の一つです。裁判所の中で活動を行いますが、裁判所からは独立しています。CAFCASSは、良い情報提供を行っています。
https://www.cafcass.gov.uk/
https://www.cafcass.gov.uk/
日本の裁判所では、心理職は法律職の下にあります。心理職の処遇は、法律職が決めるわけです。それで、心理職の人は、法律職の利益を損なわないように行動します。家裁の調査官の中で、「子どもの権利」とか「欧米の状況」とか「父親が子どもの精神発達に及ぼす大きな影響」について、堂々と主張する人は見当たりません。私は、Wikipediaの「父親の役割」という項目を作成しましたが、日本ではそのような情報提供は行われないので、私が調べて書いたのです。心理職の内部では、価値ある仕事はできません。ドラッガーは「組織が腐っているときは、辞めることが正しい選択である」と述べています「仕事の哲学」(p78)。