BBCの「アトキンス・ダイエット」を見ました。
 
アトキンスが提唱したダイエットでは、糖質を制限するだけで、他の栄養素は制限せずに、好きなだけ食べます。アトキンス・ダイエット(低糖質食)は、減量効果に優れています。ただし、危険があります。長期的な安全性が確認されていません。飲酒時の低血糖など、短期的な危険もあります。
 
 BBCは、好きなだけ食べるのに体重が減ることを不思議であるとしていますが、野生の動物は好きなだけ食べますが、肥満していません。満腹したら、食べるのをやめるからです。人間が肥満するのは、満腹したはずなのに、食べ続けるからです。そのメカニズムを指摘する必要があります。
 
BBCのこの番組は、なぜアトキンス・ダイエットで体重が減るかを調べています。BBCは、アトキンス・ダイエットでは、少なく食べると言っています。少なく食べるので、体重が減るということです。なぜ少なく食べるのかについては、「蛋白を多く食べると、すぐに満腹するから」とのことです(43分20秒)。

私は、肥満の仕組みについて、次のように考えます。
 
(1)コンビニのお菓子のようにデンプンの食べ物に、グルタミン酸(アミノ酸の一種)が振りかけてあると、本当はデンプンであるのに、アミノ酸(つまり蛋白質)の味がします。いくら食べても、蛋白への渇望が満たされません。しかし、蛋白を食べているような気がします。蛋白の不足は、いくら食べても解消されません。これで、いくらでも食べるのです。
 
(3)もう一つは砂糖です。砂糖は、体内でブドウ糖と果糖に分かれて吸収されます。このうち果糖は、血糖をあまり上げません。それで、満腹感を与えません。そして満腹ホルモンであるレプチンを増やしません。ブドウ糖は、吸収されて血糖値を上げて、インシュリンを放出させて、血糖値が急落して、再び空腹感を作り出します。
 
(3)何か不足する栄養素があれば、不足が満たされるまで食べようとするでしょう。
 
アトキンス・ダイエットは、糖質を摂りません。特に砂糖を摂りません。デンプンを摂らないので、デンプンに振り掛けたグルタミン酸を摂りません。主食を食べない分だけ副食を食べるので、蛋白質を充分に食べている可能性があります。また、副食を多く食べるので、不足する栄養素が無い可能性があります。
 
つまり、アトキンス・ダイエットは、肥満を来たす悪循環を3つともクリアーしていることになります。肥満を来たす悪循環が無ければ、いくら食べても太らない野生動物と同じように、必要なだけ食べて、満腹したら食べるのを止めるのです。肥満している人は、体重が減るのです。
 
しかし、アトキンス・ダイエット(低糖質食)は、お勧めではありません。次のような、いろいろな危険があります。
・塩分が増え過ぎる危険がある。
・コゲやAGEが増える危険がある。
・蛋白質をあまりにも多く摂取する可能性がある。
・飲酒にて低血糖を起こす恐れがある。
・長期予後が調べられていない。
・世界保健機構WHOや米国の国立健康研究所NIHが勧めていない。

WHOや各国政府がお勧めするように、摂取エネルギーの半分以上は、糖質で摂るのがお勧めです。糖質のうち、少なくとも半分以上を全粒穀物から摂る必要があります。手に入りやすいのは玄米です。砂糖を全く摂らないのがお勧めです。グルタミン酸の加えられていないものがお勧めです。「アミノ酸など」と書いてあります。蛋白質を多く含む肉、魚、卵、牛乳、豆などを充分に摂るのがお勧めです。その他、野菜や果物もお勧めです。