次のような論文を読みました。

(1)別居後に、国が養育費の支払いを強制すれば、父と子の交流は増えて、父と母の争いは増えるか? Will Child Support Enforcement Increase Father-Child Contact and Parental Conflict after Separation?

「養育費の支払いが少ないと親子の交流は少ない。養育費の支払いが多いと親子の交流は多い」という一般的な傾向があります。この論文は、米国において、養育費の強制が行われるようになって、それが交流に与えた影響を調べたものです。この研究は、米国「国立子どもの健康と発達研究所」からの資金援助を受けて、ウィスコンシン大学の研究者らによって行われました。
 
著者は、結論のところで次のように述べています。「(強制による)養育費の支払いは、非同居親と子どもの面会の回数を増やし、非同居親の子どもへの影響を強くする。」
 
この結論は、「養育費が原因で交流が結果である」という仮説を支持するように見えますが、著者は、そのように判断することには慎重です。
 
また、著者は「(強制による)養育費の支払いは、両親の間の争いを増やす」と述べています。

(2)「別居後の養育と養育費を決定する仕組みの公正さ」について、思春期の子どもはどう見ているか
Adolescents' Views on the Fairness of Parenting and Financial Arrangements After Separation
 
この研究は、シドニー大学の研究者がオーストラリアにおいて、親が離婚した12歳から19歳までの子ども60人に対して、インタビューを行い調べたものです。
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非同居親と多くの時間を過ごしている子どもの多くは、養育の決定過程を「とても公正である」または「やや公正である」と判断していますが、非同居親と少ない時間しか過ごせない子どもの多くは、決定過程を「とても不公正である」または「やや不公正である」と判断しています。
 
(3)離婚の子どもへの聞き取り:ワーラースタインらの結果とは異なる新しい知見 Listening to Children of Divorce: New Findings That Diverge From Wallerstein, Lewis, and Blakeslee
 
アリゾナ州立大学の研究者が、親が離婚した大学生に聞いたところ、非同居親ともっと多くの時間を過ごすことを望んでいることが判明しました。
 
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これは、親が離婚した学生による回答の平均値を示したものです。現実の養育のあり方と、各人が希望する養育のあり方について、学生はどうみているかを示したものです。親が離婚した学生の多くは、現実よりも多くの時間を父親と過ごすことを望んでいます。男子学生は、父親が望むはずの時間と同じくらいの時間を一緒に過ごすことを望んでいますが、女子学生では、それより少ない時間を一緒に過ごすことを望んでいます。
 
(4)合衆国における子どもの養育の方策と離婚率の関係 Child Custody Policies and Divorce Rates in the US
 
この研究は、子どもの権利評議会(CRC)の研究者と、ジョンキャロル大の研究者によって行われました。この論文は、共同親権に移行すると離婚率が低下すると述べています。米国の19の州について、単独親権と共同親権の割合を調べて、それが6年間の離婚率の低下に及ぼした影響を調べています。共同親権の割合が多い州、中くらいの州、少ない州は、それぞれ離婚率の低下が、多い、中くらい、少ないとなっています。
 
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表1は、各州における共同親権の割合を示したものです。共同親権が多い州と普通の州と少ない州の3つに分けています。これは身体的共同親権を集計したものです。
 
なお、例えばウィスコンシン州において、身体的共同親権とは、子どもが非同居親と過ごす時間が25%以上であることを意味します。2001年には、ウィスコンシン州においては、身体的共同親権の割合は32%でしたが、法的共同親権の割合は87%でした。
 
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表2は、離婚率の変化を示したものです。共同親権の割合が多い州では、離婚率の低下が大きくなっています。このデータの範囲内で、(身体的)共同親権になると離婚が減ると結論できます。なお、米国においては、離婚率は、1970年代以後、全般的に低下傾向にあります。