共同親権の歴史について以下のようにまとめてみました。もう少し調べて、近いうちに Wikipedia に投稿したいと考えています。History of joint custody 、Joint Custody & Shared parenting p3-p5 、The Joint Custody Handbook p13-p24、「父親の役割」を参照しました。
(1) 19世紀まで
子どもは、父親の財産や持ち物として扱われた時代が長く続いた、日本でも旧民法下では、家父長制の下で、結婚中も離婚後も、父親が単独親権を持っていた。イギリスでも、コモン・ロー(不文の判例法)の下で、親権は父親の固有の権利とされた。
(2)1900年以後
野生児の研究、ゲゼルの双子の研究など、子どもの発達の研究が行われるようになった。子どもが言語を獲得する過程や、精神的に発達する過程で、母親との交流が重要な役割を果たしていることが明らかになった。また施設入所などにより親との接触が無くなると、子どもの精神発達が遅れる場合があることが知られるようになった。こうしたことから、子どもの順調な発達には、母親と子の手厚い交流が必要であると認識されるようになった。
こうして、子どもが小さい時には、母親が子どもと長い時間を過ごして子どもを育てることが基本であるとされるようになった(tender years doctrine)。
(3)1960年以後
ワーラースタインの事例的研究や、ヘザリントンの統計的研究が行われ、父親がいない家庭で育った子どもは、精神的な問題を抱えることが多いことが明らかにされた。父親がいない家庭で育った子どもは、両親がそろった家庭で育った子どもと比較して、平均して、精神的トラブルをより多く抱え、学業成績がより悪く、社会に出てからの地位もより低く、結婚しても離婚に終わりやすいなどの特徴があった。その後、Michael Lamb を始めとして、父親の役割について、多くの研究が行われ、子どもの健全な発達には、父親が大きな役割を果たしていることが認識されるようになった。
父親は、子どもと遊ぶことを通して、ルール(規律)、協力、競争、努力などについて子どもに教える。また、子どもが次に進んでいく世界を子どもに紹介をして準備をさせる。また、子どもの精神的自立や独立を促す。子どもの健全な発達には、父親も重要な役割を果たしていることが認識されるようになった。
子どもは、父親の持ち物ではなく、母親の体の一部分でもない。子ども自身の利益が尊重される必要がある。共同親権とは、子どもの側から見れば、二人の親を持つ権利である。二人の親と十分な関わりを持って育てられる権利である。子どもの利益の尊重や、子どもが二人の親を持つ権利の保障は、「児童の権利に関する条約」にまとめられ、1989年に国連総会で採択された。
各国の共同親権法は、子どもの発育に両方の親がかかわることを求めるものであり、二人の親を持つという子どもの権利を守るものである。