言いたいことが、なぜ言えないのか」という本は、コミュニケーションを適切に行うための本です。元の本は、Wikipediaでも紹介されています。
著者は、ケリー・パターソン氏ら4人です。ケリー・パターソン氏は、プリガムヤング大の教官であり、企業の組織改革のコンサルタントをしておられます。この本は、著者らが、企業の中にいるコミュニケーションの能力が優れたトップ・パーフォーマーを研究して得られた結論を、一般向きに分かりやすく述べたものです。

この本は、敬意を持って相手と直面することの重要性を強調しています。この本は、部下の問題行動を正す中間管理職のための本ではありません。もっと普遍的な内容のある本です。精神論だけでなく、具体的な技術論も書かれています。

良好な人間関係を維持する上で、コミュニケーションの果たす役割は大きく、この本の内容は非常に有意義であり、繰り返し読んで、しっかりと習得すれば、誰にとっても大いに役立つことでしょう。

以下のようなことが述べられています。

(1). コミュニケーションが適切に行われないと、沈黙と暴力的対応が出現すること。
(2). 帰属研究によれば、人間には相手の行動の動機を正しく判断できる能力はないこと。
(3). 相手の行動を見て、その動機を邪推し、その真実でない動機に対して腹を立てて、非難することがしばしば行われること。
(4). 敬意を持って相手と直面すること。相手を人間として受け入れ、相手を助けたいと心底願うこと。
(5). 対話をすることについて、相手の許可を求め、共に協力して解決を目指すこと。
(6). 対話を始めるにあたって、これは詰問でなく相互の利益のためであることを確認すること。
(7). 相手の安心のために「対話の目的は○○であるが、△△ではない」と分かりやすく言うこと。
(8). 対話を始める前に、まず適切に話題を選択しておくこと。
(9). 自分の欲しいもの、相手の欲しいもの、相互関係のために欲しいものを意識すること。
(10). 邪推した動機でない、適切なストーリーを作っておくこと。
(11). 先ず事実関係を確認すること。その事態から通常通常予測されることを述べること。
(12). 相手の問題行動に対して、沈黙することによって、暗黙の了解を与えないこと
(13). トラブルの原因を能力の問題、動機の問題に分け、さらに相手、当方、その他に分けること。
(14). 相手の目標(ゴール)を尊重すること。相手にしばしば尋ねること。
(15). カリスマ、権力、報奨を使うと、真の解決から遠ざかることがある。
(16). 両者が心から納得できる具体的な対策を決めること。
(17). 対策を実施し、フォローアップを行い、問題が解決したことを確認すること。
(18). 適切な自己像は、「暖かい人間関係を大切にする世話人」であること。

自己啓発書は多くあっても、コミュニケーションの本はあまり多くありません。その点からも、本書は貴重です。なお、同じ著者らによる「言いにくいことを上手に伝えるスマート対話術」(前回作)という本もあります。前回作と今回作は、テーマと内容は同じです。前回作と比較して今回作は、まとまりが良いですが、インパクトは多少弱くなっています。それで、分かりやすさは、両者共に同じくらいです。