健康的な生活習慣が行えない理由

健康的な生活習慣が行えない理由は、人間の側に弱みがあることと、それを利用しようとする人がいることです。

（タバコの例）
私は、20歳の頃はタバコを吸っていました。タバコを止めようと思いましたが、止められませんでした。なぜ止められないのだろうと不思議に思いました。それを突き止めたいと思いました。

今分かるのは、タバコには強い習慣性があるということです。ニコチンによる身体的依存と、精神的な依存とがあります。１人で禁煙する場合は、アメリカの国立がん研究所の解説が分かりやすく書かれています。拙訳もあります。禁煙マラソンの成績も良好です。

もう一つの要因は、タバコで利益を得る人がいるということです。社会がタバコに対して、合理的な対応を行うのを妨げる人たちです。

彼らは政治の過程を通じて国家に働きかけます。国家は、どんなことも出来る魔法の玉手箱です。日本では、学校で効果的な禁煙教育は行われていません。青少年に対するタバコの宣伝も止めることができません。厚生労働省は喫煙率の数値目標も作れません。日本には禁煙に対処する24時間の無料電話カウンセリングはありません。日本の裁判所は、「タバコの依存性は強くない」などと、タバコ会社も本気では思っていないことを平気で言っています。

業者は、自分たちの利益を最大にするように、国家に働きかけます。多くの若者が、新しく吸い始めてしまいます。

（虫歯の例）
私は小さい時から虫歯で苦しみました。歯のブラッシングに問題があると思って１日２回しっかりと磨いていましたが、虫歯は減りませんでした。虫歯で化膿して頬が腫れて入院したこともあります。

神戸に来て、一通り虫歯を治療した後に、砂糖の消費をゼロにしたところ、それ以後、虫歯は発生しませんでした。今は甘いものを食べる時もありますが、フッ素入りの練り歯磨きで１回歯を磨いて口をゆすぎ、さらにもう１回磨いて、そのまま５分ほど泡を口の中に入れたままにした後に吐き出しています。２回目は吐き出すだけでゆすぎません。これで、やはり虫歯は発生していません。

簡単な予防法があるのに、教えてもらえなかったということです。治療はしてくれるが、予防はしてくれないということです。予防に力を入れている歯科医は、多くありません。予防すると患者が減り、収入が減ります。歯科医師会の会長さんは１億円をヤミで献金して逮捕されました。

（その他の例）
その他の例はいくらでもあります。というよりは、たいていそうなのです。利害関係者が、政治過程などにより、自己の利益を図るということです。効率が悪すぎます。
（ＷＨＯなどの国際機関は、正しい情報提供をしています。ＣＤＣなどのアメリカの政府機関も正しい情報提供をしています。アメリカ歯科医会ＡＤＡや、アメリカ小児科医会ＡＡＰも同様です）。

・現在も、クジラの肉が警告無しに売られています。（水銀が多いので、妊婦さんや小さい子どもは、食べないのがお勧めです。マグロも、妊婦さんや小さい子どもは、食べる量を制限すべきです）。
・日本では長い間、視診と触診だけの乳がん検診が行われていました。疑問の声もありましたが、有効であるというデータがずっと出されていました。２～３年前に、視診と触診だけの乳がん検診は、突然中止されました。効果が無いとのことでした。特に反対の声も見当たりませんでした。（その後は、マンモグラフィーが併用される乳がん検診になっています）。
・ＡＩＤＳの血液製剤の問題では阿部被告は無罪の判決でした。（２審の途中で病気になり、裁判は停止され、その後死亡しています。ミドリ十字の社長は有罪でした）。

予防については、業者はしてくれないので、自衛するしかありません。タバコを止めて、お酒を止めて、肥満を避けて、新鮮な食事をして、フッ素入りの歯磨きを使って、日光を避けて、仲良くして、適度な運動をするというようなことです。

野口教授が言われる通りです。「産業として成立するビジネスであれば、一般的に、「供給者の論理」が支配的になる。学ぶ側としてはその論理を見抜き、それに陥らないように注意する必要がある」（超英語法）。生産者の利益と、消費者の利益は異なります。現状では、生産者が、政治の過程を利用して、本来の健康の基準を不当に捻じ曲げています。全員が、生産者であり、かつ消費者です。基準から外れる分だけ、皆で損しているだけなのです。全体でアホをしているだけなのです。

もちろん現状を変えれば痛みは出ます。虫歯と歯槽膿漏を簡単に予防してしまえば、歯医者さんは余るでしょう。リエンジニアリング革命（日経ビジネス人文庫）によれば、「オムレツを作るためには卵を割らなければならない」（p340）。「No pain, no gain.」ということです。

私は、インターネットに大いに期待しています。情報がいくらでも無料で入って来るのです。予防医学についても、急速に欧米先進国と同じレベルになって行くと予想しています。