天界の花 | 日々の感心

日々の感心

日々の感心事を
感じたままに。

ぼやき声が聞こえてくる

 

 

『どうせ俺たちなんかを誰も見ちゃくれないさ。紅く妖艶に花をつけていた時期には、高い駐車料金払ってまでして、しかも大行列までつくって見に来るくせにさ。いつだったっけかな?少し離れた目立たないところに咲いていた俺の彼女は、いつの間にか誰かにワァ綺麗とか言われながらもポキッと胸から上を折られて連れ去られて行っちゃったしさ。人間なんて自分に都合よく理由をつけちゃあ脇目も振らずにというか、見て見ぬ振りをして強引に物事を進めていくことがあるからな。自分勝手。自分本位。利己主義。我が儘。って怒鳴ってやりたくなるぜ。もし俺が声を出すことが出来たらだけどな。俺はただの植物に過ぎないけど、こんな俺たちにだって使命感はあるんだぜ。俺たちを見て人間たちに喜んでもらったり、元気を出してもらったり、感動してもらったり、心を癒してもらったり、その時だけでも悲しみを忘れてもらったり、楽しい思い出を作ってもらったりとかさ。もちろん人間のためだけじゃないさ。俺の球根のところに有毒アルカロイドを蓄えているからそれで土の中を動き回って畑とかを荒らす害獣たちから他の草花や野菜を守ったりもしてるんだぜ。でも待てよ。そうか。そうだ。冷静になって考えてみると、俺は誰にも見られていなくったって気にする必要はないんだった。拗ねていた自分が恥ずかしくなってきたぞ。さっきは随分とぼやいちまったが、すまなかったな。申し訳ない。師走に入って益々寒くはなってきたが、俺は来秋の彼岸頃にまた人間たちを惹きつけて人々の心を少しでも洗って清めてあげられればそれで満足なんだった。今になって俺はそれに気がついたよ。だから人間たちにお願いしたい。木の実を花を動物たちを必要以上に摘んだり捕獲したりしないでくれよ。何事も“過ぎる”は良くないよ。木を切ったらまた種や苗を植えて欲しいな。その心が大切なんじゃないのかい。自然をもうこれ以上壊さずいてくれよ。お願いだ。来年も再来年もずっと俺たちは人間たちに喜んでもらえる綺麗な花を咲かすからさ』

 

 

 

長いよ!

 

読者のボヤキが聞こえてきそうである

 

 

ぎゅうぎゅうに

詰め込まれた 『鍵カッコ』 の中の文字を

全て読み切るという読者は凡そ居ないであろう

 

という憶測が

 

曼珠沙華の気持ち を

「やっぱり内に秘めておこう」 と

思い直した私の狙いである クスクス

 

 

曼珠沙華(まんじゅしゃげ) は 天界の花

 

 

鍵カッコに詰め込まれた文字は

 

ボヤキ声ではなかったのだ

 

 

悪いと気がついたら

その行いから離れれば良い

 

行いの

失敗は誰にでもある

行いの

過ちは誰にでもある

それに気づいたのに改めないことこそ

人生の

大きな過ちに至り

人生の

大きな失敗に至り

 

悔やんで自らを苦しめてしまうのだ

 

視野を広げて

耳を澄ます

 

周囲に寛容であれ

周囲に寛大であれ

 

大きく深く

大気を吸い込み


愛情豊かに

心豊かに

 

それこそが

豊かさの本質

であるのかもしれない

 

 

ひたむきな曼珠沙華は

 

そっと私に

 

 

そのように語りかけて

 

くれていたのに

 

間違いない

 

 

 

 

今日の感心