トランジッションとは、難しさとオリジナリティーの異なる段階をもった、様々な、目的のはっきりとしたフィギュアスケートのつなぎのステップ、動作、エレメントの使用として定義され、それはプログラムの技術的エレメントをひとつに結びつけるものである。
1. ある要素から別の要素への動きの連続性。
≪連続性≫-これは、つなぎのステップや動きの融合であり、プログラムのエレメントとエレメントの間でだけでなく、また入り/出 の間についても言える。
それによってつなぎと技術的エレメントから独自の組み合わせが生まれ、それは(ジャンプ、スピンの)エレメントそのもののGOEを増やすことを可能にする。
この場合、エレメントそのものがプログラムの構成に調和して描きこまれ、振り付けの一部となる。
2. 多様性(Variety)
つなぎのステップ-Footwork transition(ステップと回転)
つなぎの動き(フィギュアスケートのエレメント)-skating movement transition(イーグル、イナバウアー、ピボット、ハイドロブレーディング、スパイラル、突き(片足を前に出して重心を下げる)、アラベスク、ダック)
様々な組み合わせ(頭、腕、胴)での体の動き-body movement
禁止されていないが必須技術エレメントではない他のエレメント-non listed element transition(ホップ、マズルカジャンプ、内側アクセル、ハーフループ、ウォレイジャンプ、縦・横のスプリット、バレエジャンプ、バタフライ、半回転ジャンプ、半アクセル)。
3. 難しさ(Difficulty)-体、頭、腕の動きと動きの方向転換を伴うステップ。
つなぎのステップと動きはエレメントとエレメントの間と同様、プログラムのエレメントへの入りでも独創性と難しさが考慮される。
プログラムのエレメントの直前・直後に行われる独創的で難しいつなぎはGOEだけでなく、構成要素に対するTR(トランジッション)とCO(構成)の点数も上げる。
反対にエレメントへの準備が長かったり、(エレメントへの)入りにステップやつなぎの動きが欠如していると、全体として≪難しさ≫とトランジッション・コンポーネントの規準は低く反映される。
動きの方向転換(時計回りと反時計回り)と体の動きがあると、つなぎを行うのが難しくなり、全体としてコンポーネントに対する点数を上げることになる。
4. 質(Quality)-これはつなぎにミスがないこと。
つなぎの全体の数ではなく、片足滑走のつなぎの数に対するクロスオーバー(両足滑走)のつなぎの数の比率のように、なによりそれらの質と多様性を全体的として評価してみましょう。
クロスオーバーについて:
Footwork transition – 両足滑走(クロスオーバー)、スリーターン(片足での単純な回転)、難しいな回転(ロッカー、カウンター、ブラケット、ツイズル、ループ)と難しいステップ - チョクトー。
Skating movement transition – フィギュアスケートのエレメント(イーグル、スパイラル、イナバウアー、突きなど)
Non listed element transition – 評価される技術的エレメントのリストに上げられていないトランジッション。(ホップ、スプリットなど)
ステップシークエンスはプログラムの個別のエレメントなのでここでは入れません。
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男子の試合のファイナル出場者のショートプログラムの分析から始めましょう。
羽生結弦、アダム・リッポン、パトリック・チャン、ハビエル・フェルナンデス、宇野昌磨、ネイサン・チャン。
ファイナル出場者のショートプログラムは申告されている技術的要素が異なっている。
ショートプログラムに2つの4回転ジャンプを入れるのは、羽生結弦、ネイサン・チャン、ハビエル・フェルナンデス、宇野昌磨。
パトリック・チャンは4回転ジャンプ一つにとどめ、アダム・リッポンはなしで済ませている。
ショートプログラムでは単独の3回転あるいは4回転ジャンプは≪ジャンプ直前のはっきりと識別できるステップ/動き≫を伴わなくてはいけない。
ステップとジャンプの間に隙間があったり、ジャンプ直前のステップ/動きがひとつだけだと、エレメントに対しGOE合計を-1/-2下げなければならず、それらが全くない場合-3減点される。
単独のジャンプ直前に複雑なステップがあることは、追加基準によって奨励され、エレメントに対するGOE合計を上げることができる。
「ジャンプ直前のはっきりと識別できるステップ」という基準は、はっきりした明らかなステップを伴い、ステップの間には休止がなく、最後のステップと同じリズムでジャンプを跳ぶことを意味している。
男子の試合のファイナル出場者のショートプログラムで、ステップを伴う単独ジャンプに関する要求がどのくらい実現されているか、見てみましょう。
宇野昌磨は4回転フリップに入る時、一連のクロスオーバーの後、ひとつのチョクトー-歩行を行い、その後ジャンプ前に胴体の体勢を安定させながら、二つ目の足を差し出している。この後シンプルな方向転換とスリーターンが続き、そこからジャンプも行われる。入りのステップは十分ではない。少なくともジャンプ前のステップに切れ目があるとGOE合計は-1/-2下げられるはずである。
私の見たところ、スケーターはトップ選手としては十分に≪寸足らずな≫入り方をしている。
ハビエル・フェルナンデスは4回転サルコーを一連のスリーターンとモホークから跳んでいる。(スリーターン-モホーク-シャッセ-スリーターン、モホーク)。ジャンプ前に途切れない、はっきりと識別できるステップがある。しかしステップは複雑でないので、ショートプログラムでの単独ジャンプのための追加基準にはあたらない。
パトリック・チャンはチョクトーの後、一連のモホークから3回転ルッツを跳んでいる。入りへのステップは十分であるが、難しいものではない。このような入りも同様にGOE追加基準にはあたらない。
正直言うと、スケート靴を自由に操るこのようなレベルを持ったトップスケーターの演技では、単独の3回転ジャンプはより面白い、複雑な入り方で見たいと思う。
ショートプログラムでの単独ジャンプに最も複雑で、組み合わせのある入り方をしているのは羽生結弦である。
加えてこの単独ジャンプは非常に難しい4回転である。
結弦は複雑な入りとステップから4回転ループを跳んでいて(チョクトー-カウンター-チョクトー-スリーターン-イーグル)、イーグルへの創造的な出を伴っている。
ジャンプ直前のステップが複雑でないので、GOE追加基準は考慮されない。残念だ。
規定は、現在このような組み合わせの入りの真価を評価することができない。
アダム・リッポンはトレードマークとなっている3回転ルッツを複雑な組み合わせの入りとステップから跳んでいる(ウォレイジャンプ-エッジプル-シャッセ-チョクトー)。しかしステップとジャンプの間の休止は、エレメントに対するGOE合計をジャッジが下げる根拠となっている。
ネイサン・チェンはショートプログラムで単独の4回転フリップをシンプルなステップから跳んでいる。(モホーク-シャッセ-スリーターン-モホーク)。しかしながらスケーターは、単独ジャンプ前の必須ステップに関する要求を満たそうと努力している。
ステップは複雑ではないので、GOE追加基準にあたらない。
表ではファイナル参加選手のショートプログラムの様々なトランジッションが表されている。
図はすべてのスケーターのトランジッションの数と多様性の質について視覚的理解を促している。
それでは男子ファイナル参加者それぞれのショートプログラムにおけるトランジッションコンポジション(構成)のすべての規準を分析してみましょう。
宇野昌磨のプログラムでは、クロスオーバーが基本的なスケートのつなぎである。
もし、プログラムからジャンプとスピン、ステップシークエンスを取り除いたなら、そこに残るのは基本的なつなぎのステップとしての絶えまない一連のクロスオーバーと、エレメントの間にある両足滑走、味付けされた稀にあるスリーターン、方向転換のためのモホークだけである。
下のGIFでは、フリップとコンビネーションの間、また足換えシットスピンの後アクセルへ入るイーグルまでのつなぎを見ることができる。
エレメントの間にある動きは次のような構成で実現されている。
一連のクロスオーバー-スリーターン(またはモホーク、あるいは方向転換)-一連のクロスオーバー-モホーク(あるいはスリーターン)-また一連のクロスオーバー。
昌磨のプログラムでのトランジッションの多様性は“中くらい”である。
シンプルなトランジッションが優勢である。
片足滑走はクロスオーバーより2倍少なく、行われたつなぎのエレメントはスプレッドイーグルとクリムキングイーグルだけである。
トランジッションの難しさは“中くらいより高い”。
スケートアメリカの後、昌磨はコンビネーション4T+3Tへの入りを難しくし、ステップからエレメントを行い始めた(何回ものスリーターン)。その他、スケーターはトリプルアクセルをスプレッドイーグルから跳び、クリムキングイーグルへ出る。エレメントへの組み合わせのある入りはない。
トランジッションのステップは基本的に単調な腕の動きを伴って行われ、トランジッションを行うときの胴体の働きは十分ではない。
トランジッションの質は“良い”。
ハビエル・フェルナンデスのプログラムでは、エレメントの間にシンプルなステップの形での両足滑走のつなぎが優勢となっていて(モホーク、シャッセ)、それは音楽のスタイルに合っている。
エレメントからエレメントへの動きは振り付けのポーズを伴っている。
最初のGifではスペインのダンスのリズムでシンプルなステップへの移行を伴うそれらのひとつと、エッジプルとカウンターへの移行を伴うアーチ型の動きを見ることが出来る。
二つ目では、スケートのつなぎは腕と頭の動きを伴っていて、再びステップに移るトランジッションエレメント(スプレッドイーグル)に替わっている。
シンプルなステップの形でのつなぎが優勢である。
昨シーズンと比較すると、プログラムの中にクロスオーバーと、スプレッドイーグル、二つの“突き”、2つのホップで表されるトランジッションエレメントの数が増えている。
プログラムにはエレメントの間の複雑なスケートのつなぎの結合がない。
トランジッションの難しさは“良い”。
4回転サルコーはステップ(一連のスリーターンとモホーク)から行われ、トリプルアクセルは組み合わせの入り(ホップ-突き-スリーターン-イナバウアー-エッジプル)を伴っている。創造的な(難しい)出はない。
トランジッションの質は“良い“。
パトリック・チャンのショートプログラムでは、片足滑走の数はクロスオーバー(両足滑走)の数とバランスがとれている。
行われるジャンプエレメントがすっかりこれを可能にしている。
プログラムの中に十分な数の片足滑走のつなぎがあり(複雑なツイズル、二つのチョクトーとカウンターを含む)、またつなぎのエレメント-突き、スプレッドイーグル、3つのホップを見ることができる。
エレメントの間のトランジッションを行いながら、スケーターは長いアーチ、深いエッジとスピードを見せており、それは選ばれた音楽が少なからず助けとなっている。
下のGIFでこれらすべての素晴らしいものに見とれることができる。
全体として、パトリックはスケートを楽しんでいる。
しかし跳ぶことも必要だ。だからパトリックのプログラムではトランジッションはジャンプがなく、複雑な入り/出ではない場所に集中している。
3つのジャンプエレメントはすべてシンプルな入り方である。ステップから跳ぶのはトリプルルッツだけで、そこからスケーターはホップに出ている。エレメントの間の片足滑走のつなぎは、前回のオリンピックサイクルにそうであったように、存在していない。
トランジッションの質は“とても良い”。
羽生結弦のショートプログラム-これはひとつの大きなトランジッションであり、その中のクロスオーバーはジャンプへの入りの前にスピードを上げるためだけに使われている(数で言うと2-3回)。
プログラム全体にわたり、複雑なものを含むステップと回転がつなぎの要素に替わり、また胴体、頭、腕の動きを伴っている時、トランジッションはコンビネーションが際立っている。
特にこの点ではプログラム後半が特徴的である。
トリプルアクセルへの勢いのある入りと、そこからの独創的なきざな出の後、揺れるキャメルスピンを経て、足換えシットスピンに移行するいたずらな出がある。
このスピンの後すぐに、大胆な所々ドヤドヤしたステップシークエンスが、そして入る時にスケートの刃ではっきりと音楽のリズムを刻む、ラストのコンビネーションスピンがある。
(ちょっとした叙情的脱線をお許しください。)
最初のGIFは-4回転ループ後のつなぎ:ホップとチョクトーへ移行するイナバウアー。
二つ目は-コンビネーション後のつなぎ:ピボット後にスリーターンと“電話の音”に移行するチョクトー。
私はプログラムのすべてを表示用GIFに切り分けたくなってしまったのだが。
プログラムでは片足滑走のつなぎ(スリーターン、いくつかのカウンター、ロッカー)、また複雑なステップ(6つのチョクトー)とつなぎのエレメント(3つのスプレッドイーグル、2つのイナバウアー、ピボット、突き、ホップ)が優勢である。
トランジッションの多様性はとても“良い”。
これは、「多様性」の規準で演技される中でもっともバランスのとれたプログラムである。(図を参照)
トランジッションの難しさは“とても良い”。
トランジッションはエレメントとエレメントの間にも、それらの近く(入り/出)にも均等に配置されている。
3つのジャンプエレメントすべてがステップから行われ、その他、3つのうち2つは組み合せの入りと独創的な出をもっている。
:4回転ループ(チョクトー-カウンター-チョクトー-スリーターン-スプレッドイーグル-イーグルへの出)とトリプルアクセル(イナバウアー-エッジプル-シャッセ-チョクトー-スリーターン-エッジプル-シャッセ-カウンター-、ファンスパイラルへの出)。
トランジッションの質は“とても良い”。
ネイサン・チャンのプログラムは素晴らしく振り付けされている。ズエワの手腕が見える。
エレメントからエレメントへシンプルなステップ(モホーク、シャッセ)と回転(スリーターン)はつなぎのエレメントに替わる。
下のGIFでは、シットスピンの後トリプルアクセルまでの部分を見ることができるが、そこではステップは片足滑走のつなぎとトランジッション要素と結びついており、動作の絶え間ない方向転換を伴っている。
スリーターン、ホップ、スリーターン、方向転換、スリーターン、ハーフループ、ホップ、さらに一連のモホークとチョクトー。
トランジッションの多様性は”中くらいより上”。
スケートのつなぎはシンプルな形でのステップ(シャッセ、モホーク)と方向転換、あまり多くないクロスオーバーが優勢である。
ジャンプとジャンプの間にはつなぎのエレメントが素晴らしく描きこまれている。
二つのスプレッドイーグル、二つの突き、ハーフループと二つのホップ。
トランジッションの難しさは”中くらいより上”。
トランジッションはエレメントとエレメントの間に集中しており、(4回転フリップを除いて)難しい入り/出ではない。つなぎのステップと動きは、腕と頭の動きを伴って行われている。
トランジッションの質は”中くらいより上”で、”良いに近い”。
アダム・リッポンのプログラムでは、エレメントとエレメントの間の動きについては、クロスオーバーが方向転換のためにモホークとスリーターンに替わっている。
プログラムのいくつかの部分では、つなぎはコンビネーションが際立っている。(二つ目のGIFを参照) そこではつなぎの要素がスケーティングトランジッション(リストにないジャンプ-ロッカー-クロスロール-ロッカー)に入れ替わっている。
シンプルなステップの形でのスケートのつなぎと体の動きを使ったつなぎ(body movement transition)が優勢である。
エレメントとエレメントの間には複雑なスケートのつなぎ(3つのチョクトー、2つのロッカーとカウンター)もある。つなぎのエレメントはホップとバレエジャンプ、リストにないジャンプが見られる。
トランジッションの多様性は”良い”に近い。
トランジッションの難しさは”良い”に近い。
3つのジャンプエレメントからトリプルルッツだけが複雑な組み合わせの入りを伴っている。(バレエジャンプ-エッジプル-シャッセ-チョクトー-シャッセ)。
複雑な出はない。(シーズン初めにスケートアメリカでルッツの後、アダムはジャンプからスリーターンとスプレッドイーグルに出た。)
トランジッションの質は良い。
こういうわけで、ショートプログラムでの4回転ジャンプの数、エレメントからエレメントの動きの融合、エレメントの前のつなぎの難しさ、それらの密度と多様性を考慮すると、まさに羽生結弦は、プログラムの中ですべてのエレメントが一つのまとまりに連結し、振り付けの一つとなっている、最も難しいプログラムを披露している。
終わりに、考察のための情報として、ファイナル出場者のグランプリシリーズ2つの試合でのトランジッションコンポーネント(構成)の平均点を提示します。(高いものからの順で)
ハビエル フェルナンデス 9,09
パトリック チャン 8,91
羽生 結弦 8,88
宇野 昌磨 8,21
アダム リッポン 8,16
ネイサン チャン 7,97
忍耐とご注目をありがとう。
次に続く・・・
尊敬をこめて。ユリヤ。
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グラフと表、GIFはユリヤさんから使わせてもらっています。
Спасибо Юлия за большой разбор, представление диаграммы и гифки в моем блоге.