●パワフルなコンパクトリボルバー

 

 ポリスポジティブとポリスポジティブスペシャル…。名前こそ似ているが、実は別のリボルバーである。端的に言えば、ポリスポジティブの発展型がポリスポジティブということになるのだが、まずはその辺りの歴史から振り返ってみよう。

 

 ポリスポジティブスペシャルの前身である「ポリスポジティブ」が誕生したのは1907年のことだ。ポリスポジティブは、1896年に登場したスモールフレームの「ニューポリス」に改良を施したモデルで、その名称は「ポジティブロック」と呼ばれるハンマーブロックを新たに搭載したことに由来する。使用弾薬は.32コルトニューポリス(.32S&Wロング)や.38コルトニューポリス(.38S&W)などであった。

 

 

 1899年にS&Wが「ミリタリー&ポリス」とともに、従来のリボルバー用弾薬よりも強力な.38スペシャルを登場させる。38スペシャルは.38S&Wよりもカートリッジの全長が長いため、これを撃つには従来よりも長いシリンダーが必要となった。

 

 そこで、コルトがポリスポジティブのシリンダーを9.3mm延長して.38スペシャルを撃てるようにしたのが1907年発売の「ポリスポジティブスペシャル」である。1908年のカタログを見ると「The most compact and also the lightest revolver ever produced to take powerful ammunition」との謳い文句が見られ、軽量なスモールフレームでありながら、当時としては強力であった.38スペシャルを撃つことができる、革新的なリボルバーであったことが分かる。

 

 

●帰ってきたポリスポジティブ

 

 ディテクティブスペシャルに続き、DフレームのRモデル化の第2弾としてポリスポジティブスペシャルが発売された。正式な商品名は「コルト ポリスポジティブスペシャル 4インチ 3rd issue"Rモデル" HW」となっており、ポリスポジティブスペシャルのなかでも1947~1976年に製造された3rd issueをモデルアップしている。

 

 ディテクティブの記事でも申し上げたが、この「isseue」というのが厄介で、S&Wの「dash」とは違い、メーカーやファクトリーが付けたものではなく、コレクターが分類の便宜を図るために付けたものなので、文献によってバラつきが見られるため、注意が必要だ。

 

 

 パッケージは先に発売されたディテクティブと共通で、実銃のボックスを模している。

 

 

 最近のタナカの製品は本体のみにならず、パッケージの再現性も高いので、箱だけを眺めていても十分に楽しめる。

 

 

 バレル左側面には「POLICE POSTIVE SPECIAL」とモデル名を示す刻印が入る。

 

 

 バレル右側面にはメーカーを示す刻印。

 

 

 金属製のサイドプレートにはランパンコルトの刻印が入る。

 

 

 Rモデル化により、ポリスポジティブ専用のエジェクターロッドが新たに作られ、先端の形状がよりリアルになった。

 

 

 シリンダーの装弾数は6発。このコンパクトなサイズで6発装填できるというアドバンテージはデカい。

 

 現代において“.38スペシャルが強力なカートリッジ”という印象は全くないが、20世紀初頭では.32口径や.38S&Wなどの低威力なカートリッジが警察用や護身用として広く使われていた。そのような状況のなかで、最新の.38スペシャルをスモールフレームで撃つことができるポリスポジティブスペシャルは斬新なリボルバーだったに違いない。

 

 

 フロントサイトはランプタイプで、細めのセレーションが入る。

 

 

 リアサイトはフィクスドでスクエアノッチ。フレームトップには細かいセレーションが施され、光の反射を防ぐ。

 

 

 S&Wの繊細な形状のハンマーと比べると、コルトのものはスパーの付け根までしっかりと厚みがあり、いかにも頑丈そうな雰囲気が漂う。

 

 

 トリガーにはセレーションが5本入る。パーツの材質や嚙み合わせが見直されたRモデルというだけあって、作動はスムース。

 

 

 ポリスポジティブスペシャルはスクエアバットのイメージが強いが、タナカのモデルガンはディテクティブ同様にラウンドバット。実銃でも確かにラウンドバット仕様も存在する。

 

 

 メカニズムは松葉バネを用いた旧型のもの。これをプラスチックのモデルガンで再現し、作動させるというのは非常に難しい。実際に分解してみると分かるが、コルトの旧型メカはバランスが命なのだ。

 

 タナカが発売しているRモデルはパーツの材質や噛み合わせなどを徹底的に見直し、マニアの間では「コルト病」と呼ばれるパーツの摩耗によってトリガーが引けなくなる、シリンダーが回らなくなるといった不具合が起こらぬようにした、いわば、コルト旧型メカの決定版である。

 

 先に発売されたディテクティブを購入してから3か月になるが、作動に関する問題は一切なく、そういう話も耳にしないので、パイソンと同様にDフレームのRモデルも耐久性については問題ないと考えて良さそうだ。

 

★メカニズムについてはディテクティブの記事で詳しく解説しているので、併せてご覧下さい。

 

 

 弟分にあたるディテクティブスペシャルと並べてみる。エジェクターロッド先端の形状の違いに注目。

 

 

 続いてはS&Wのミリポリと。両者ともに.38スペシャルを6発装填することができるが、サイズはポリスポジティブスペシャルの方がコンパクト。だが、ダブルアクションはミリポリの方が遥かにスムースだ。どっちか選べって言われたら困っちゃうなぁ。

 

 

 最後はパイソンと。さすがは.357マグナム、フレームがデカい。この2丁を眺めていると、どうしてもダイヤモンドバックのことを考えてしまう。Dフレームのパイソン、さぞかし可愛いんだろうなぁ。タナカさん、ダイヤモンドバックもお願いします!