S&Wの.357マグナム・リボルバーといったら、「コンバット・マグナム」の愛称で知られるM19が有名ですが、.357マグナムをバカスカ撃っても大丈夫というほどの耐久性はありません。基本的には.38スペシャルを撃ち、必要なときだけ.357マグナムを撃つというのがM19の正しい使い方なのです。

 S&Wは.357マグナムを撃つのに十分な耐久性を持ったリボルバーを作るため、新たにKフレームを強化、大型化したLフレームを開発し、1980年にステンレス製のM686を発売しました。1981年には、そのバリエーションとしてスチール製のM586を発売しました。Lフレームは、Kフレームを強化し、大型化することで.357マグナムの使用に耐えうる十分な耐久性を確保していますが、グリップサイズは、Kフレームと同じなので、Kフレーム用の各種グリップを取り付けることができます。ちなみに、M586には「ディスティングイッシュド・コンバット・マグナム」という立派な愛称が付けられていますが、あまりに長すぎるためか、あるいはM19の愛称と一部が重複しているためか分かりませんが、その知名度は低く、ガンマニアの中でもM586を愛称で呼んでいる人は少ないのではないかと思います。

 

 

 マルシンは、ガスとモデルガンの両方でM586をモデルアップしているのですが、今回ご紹介するのは、4インチのABSのモデルガンです。3年ほど前に再販された最新ロットのものです。

 マルシンM586は、1980年代に発売された発火式のモデルガンで、コクサイ、MGCに次ぐモデルアップです。モデルガン3社の中では、マルシンのものが最も完成度が高いと言われ、今なお人気があります。

 

 

 M586の特徴は、フルレングスのエジェクターシュラウドで、コルト パイソンを彷彿とさせます。ただ、M586にはベンチレーテッドリブがないので、パイソンに比べると、ずいぶんとシンプルな印象です。

 

 

 バレル左側面には「SMITH&WESSON」の刻印がしっかりと入れられています。

 

 

 右側面は、サイドプレート、フレーム、バレルに刻印が入れられており、賑やかな印象です。

 

 

 サイドプレートのマークは、ホンモノのS&Wマークかと思うほどリアルな出来栄えですが、本来あるはずの線がなかったり、繋がっているはずの線が途切れていたりと細部が若干異なります。

 

 

 フレームには「MADE IN JAPAN」の刻印が。下3行の刻印はバッチリなのですが惜しい!

 

 

 トリガーは、スムースタイプ。シングルアクションのトリガーストロークは非常に短く、トリガープルも軽いのですが、特筆すべきはダブルアクションの素晴らしさ。同社のガスリボルバーからは想像できないほどスムースで、軽いトリガープルです。店頭で購入前にトリガーを引いて作動確認を行ったのですが、あまりにスムースなトリガープルに感動し、もう1丁買おうかと悩んだほどです。ゆっくりとトリガーを引いても確実にシリンダーが回り、シリンダーストップが「チッ」という音を立ててシリンダーを止めます。マルシンの技術力の高さが伺えます。

 

 

 

 目立たないようにインサートを黒染めをしているメーカーもありますが、マルシンM586のインサートは大きく、また色もシルバーなので非常に目立ちます。ひと目でモデルガンだと分かるので、安全対策としてはバッチリです。

 

 

 発火カートリッジは6発付属します。弾頭の塗分けもない素っ気ないものですが、空撃ち用のスプリングが付属しますので、それを組み込むと空撃ち用カートリッジとしても使える優れものです。私は発火せずに鑑賞したり、空撃ちをしたりして楽しむタイプなので、このような配慮は嬉しいですね。

 


 

 モデルガンということで、ハンマーノーズも当然ながら再現されています。リアサイトは、オーソドックスなフルアジャスタブルのものです。

 

 

 フロントサイトには、レッドランプが入れられているため、サイトピクチャーは良好です。

 

 

 同社のガスリボルバーのM586は、バレルをマズルで固定している関係で、マズルフェイスが残念な感じになっていましたが、さすがはモデルガン。リアルで、迫力あるマズルフェイスです。

 

 

 ウッドグリップを模したと思われるプラスチック製のグリップが付属します。ジャガイモのような色をしているので、私は「ジャガイモ・グリップ」と呼んでいます。握り心地は悪くないのですが、見た目があまりにもチープなので、別のグリップに交換された方が良いと思います。

 

 

 というわけで、私はホーグのラバーグリップに交換しました。黒一色に統一されたことで、アーバンな雰囲気の1丁になったと思います。冒頭でも申し上げた通り、LフレームはKフレーム用のグリップが使えますので、着せ替えを楽しむことができます。

 

 

 マルシンM586は、造形、作動ともに素晴らしい傑作モデルガンです。やや価格が高いような気もしますが、リボルバーファンなら、1丁は持っておきたいモデルです。マルシンのモダン・リボルバーのモデルガンはM586だけですので、その素晴らしい技術力を用いて、他のモダン・リボルバーを出していただけたら嬉しく思います。