由依side



「わぁ、立派なマンション……



大学生になり、家を出て一人暮らしを始めた私はもちろん自分でお金を稼がなければいけないわけで、小さい時から1人で遊んだり作業するのが好きだった私は出来るだけ1人で、かつマイペースに稼げるバイトを始めた。



そして、今日が初めてのバイトの日なんだけど


このマンション大きすぎないか?私が今までいたところが田舎すぎただけ?東京ではこれが普通なの



ひとまず、配達時間原則な為少し緊張しながら

部屋番号を入力してインターホンを鳴らす。



「はーい」

小林「ぁ、…Uber Eatsです。」

「今開けますね」



と言ってすぐ自動ドアのロックが解除され中に入る。こんな高級感溢れる静かなマンション、歩いたこともない私にとっては自分の靴音だけが響くこの廊下がとてつもなく耐え難い。


変な緊張感がするし、この世に私1人なんじゃないかと錯覚してしまうくらい変に静かだ。怖〜


すっかり雰囲気に飲み込まれてしまった私は出来るだけ足音を立てないように少し肩を窄めてなんとか部屋までたどり着いた


そして扉の横のインターホンを鳴らす。いやぁ、もう早く帰りたいから早く出てきて〜……。そんなことを思いながら待っていると扉が開いた。そして私はその出てきた人に目を奪われた


綺麗な人、すっごく美人……

 


「あの〜…?」

小林「ぁ、すみません…!ご注文された品をお届けに参りまし

   た!お間違いないでしょうか…?」



中身を確認しているその人をまた凝視してしまう。本当に顔の整っていて凛としている美人さんだ…。


すると確認を終えたのかニコッとはにかんでくれた。



「はい!大丈夫です。全部合ってます。」

小林「良かったです…!ありがとうございました…!」

「あ!ちょっと待って!」

小林「はぃ…?」



何か指摘されてしまうのかも、そう思うと自然と体に力が入ってしまう。でも、彼女の行動は私の予想を遥かに超えるものだった。



「あなた、新人さん?」

小林「っ、!はいぃ…」

「ふふ、やっぱり。すっごく丁寧だし緊張してるから」

小林「ぁ、すみません…」


「謝らなくていいのよ!ごめんなさい。謝らせる気はなかった

のだけど…。実は、今回初めて利用させて貰って悪い評判も聞くからちょっと心配だったの。だけど、思いもよらないほど丁寧な子に配達してもらえたからお礼を言いたくて」


小林「お礼なんて、そんな…!大したことできてませんから」

「いやいや!立派よ!こんな都会でそんな丁寧な子あまりいないわ。本当にありがとう」

小林「いえいえ、!そんな…!」



わぁ、私こんないい人に頭下げさせてしまってる…。

こう言う人だからちゃんと出世してこんな高級マンションに住んでるんだろうな…なんか納得。



「止めて悪かったわね。これからも頑張って」

小林「いえ、ご利用ありがとうございました」



来る時はあんなに帰りたかったのに、帰りはなんだか幸福感で溢れている。静かな廊下に響く靴音も別に気にならなくなるほどいいバイトデビューだった。


それから私は空いている日は毎日バイトに明け暮れた。

友達と遊ばないのかと言われるとちょっとそっちの方が魅力的だったりするけど私が休んでる間にあの人からまた注文が来たらと思うとこっちの方がよっぽど魅力的だった。



そしてわかったことがある。あの人は毎週金曜日に必ず夜ご飯を注文する。そして毎回お洒落で美味しそうなお店ばかりを選んでくるから自転車を走らせるたび私も「こんなところにお店あったんだ」とか「今度ここのやつ食べてみよう」とか色々勉強になっている。


今日はチキン南蛮か、相変わらずお洒落なの食べてるなぁ。

……私も今日の夜ご飯、チキン南蛮にしようかな。


そう思って注文されていたのと同じものをもうひとつ買って行った。



小林「Uber Eatsです。」

「はーい。今開けます♪」



小林「お届け物です。」

「いつもありがとうございます」

小林「いえ、いつも違うものを頼まれるので私も勉強になって

   ます。」

「あー(笑)ここら辺、変わり種の店多いから食べてみたいものが沢山できちゃうのよ」

小林「わかります!いつもお洒落なもの食べていらっしゃる

   なって…」

「まぁそのかわりここへ引っ越してきてから凄い勢いで太ってるんだけどね…(笑)」



そんな体型で言われても説得力ないな…モデルさんみたいな体型なのに太ってるだなんて。きっとこの人の家の体重計が壊れているんだ。



「ぁ、話しすぎちゃったかな?なんか貴方と話すと落ち着いちゃって…」

小林「いえ、楽しかったです!また来てもいいですか?」

「もちろん。また来週もあなただったら嬉しい。」

小林「じゃあ、ありがとうございました。おやすみなさい」

「おやすみなさい。」



この日、初めて夜の挨拶を交わした。だけどなんだろうこの

胸の高鳴りは…










お読みいただきありがとうございました。

UberEatsさんのお名前を拝借しても宜しいのかどうか迷ったのですがダメだったらアメンバー公開にするか違う名前にするかもしれません。

一旦ここで切りたいと思いますが、続きを書くかどうか…


それでは、おっす。