答えは“デジャヴ”に隠されている…。

『デジャヴ』

[Déjà Vu]

(2006年)アメリカ映画

 

 

 

 

 

 

<あらすじ>

543名もの犠牲者を出した、凄惨なフェリー爆破事件。捜査官ダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン)は、手がかりを握る一人の女性クレア・クチヴァー(ポーラ・パットン)の遺体を見た瞬間、強烈な“デジャヴ"に襲われた―「私は、彼女を知っている…」。彼は特別捜査班の一員として、政府が極秘に開発した【タイム・ウィンドウ】と呼ばれる映像装置を見せられる。その正体は、現在時間から《4日と6時間前》の映像を自由に見ることができる、驚くべき監視システムだった! まるで生きているかのように美しい彼女の姿を見続けるうちに、ダグは再びデジャヴを感じ、さらに「彼女を救いたい」と強く願うようになる…。やがて、《4日と6時間前》の過去と現在をめぐる《驚愕の真実》が明かされる。果たして、彼は“すでに殺されている女性"を救い出し、“すでに起こってしまった爆破事件"を防ぐことができるのか?―その答えは、“デジャヴ"に隠されている…。

 

<スタッフ>

監督 トニー・スコット

脚本 テリー・ロッシオ

   ビル・マーシリイ

制作 ジェリー・ブラッカイマー

制作総指揮 マイク・ステンソン

   チャド・オーマン

   テッド・エリオット

   テリー・ロッシオ

   バリー・オルドマン

音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

撮影 ポール・キャメロン

編集 クリス・レベンゾン

 

 

<キャスト>

デンゼル・ワシントン(ダグ・カーリン)ATF捜査官

ポーラ・パットン(クレア・クチヴァー)被害者の女性

ヴァル・キルマー(ポール・プライズワーラ)FBI捜査官

ブルース・グリーンウッド(ジャック・マクレディ)FBI捜査官

アダム・ゴールドバーグ(アレグザンダー・デニー)特別捜査班の博士<白雪姫>担当

ジム・カヴィーゼル(キャロル・オースタッド)テロリスト

エルデン・ヘンソン(ガナース)FBI特別捜査班

エリカ・アレキサンダー(シャンティ)FBI特別捜査班

エル・ファニング(アビー)ベスの娘

マット・クレイヴン(ラリー・ミヌーティ)ATF捜査官、ダグの相棒

マーク・フィンニー(ケヴィン・ドネリー)ATFニューオーリンズ支局捜査官

リッチ・ハッチマン(スタルハス)ATF捜査官

エンリケ・カスティーロ(クチヴァー)クレアの父

 

 

感想

フェリーの爆破テロを調べる

ATF捜査官ダグが事件の鍵を握る女性

クレアの遺体を見てデジャヴを覚える。

政府が極秘に開発した

4日と6時間前を覗き見る装置

「白雪姫」によってクレアを観察するうち

ダグはこの女性を救いたいと

思うようになっていくSFサスペンス。

 

 

初見は深夜のCS放送の流し見だった。

デンゼル・ワシントン主演で

『デジャヴ』というありふれたタイトル、

しかも2006年というやや古い映画で

聞いたことすらなかったので

期待せずに見ていたんですが……。

 

お、面白いッ!

これは伏線回収すごい系の

映画じゃないっすか。

Amazonレビューを見たら

★4.5以上という超高評価だった。

その理由はストーリーの

「謎解き」と考察の面白さでしょうね。

 

1回観ただけではすべては理解できません。

あのシーンもしかして……と

気になるところが何度もあって

もう1度観たら

「うわ~そういうことか」と

思わずうなってしまう仕掛けがある。

ただどうしても

他の有名作品と比較してしまうので

パラドックスの説明不足感は否めない。

 

 

物語はフェリーの爆破テロから始まる。

543人もの被害を出す大事件で

火災事件の専門家

ATF(Alcohol Tobacco Firearms)の

捜査官ダグが現場にやってくる。

爆薬の仕掛けてあった車は

クレアという女性の車で、

近くで彼女の水死体も見つかったのだが

事件の数時間前に殺されていたことから

この女性は犯人と

接触している可能性が高いとみて

数日前のクレアの足取りを追う。

彼女には何か既視感のようなものがあり

それもダグは気になっていた。

 

鋭いダグの捜査力に目を付けた

FBIが協力を申し出て

政府が極秘に開発した

「現在から4日と6時間過去を見る」

監視システム<白雪姫>を見せる。

これは7人のこびとならぬ

7機の人工衛星データを使い、

4日と6時間(100時間)前の

街の範囲内のどこでも好きな場所を

まるでビデオ録画していたかのように

あらゆる角度から見ることができる装置。

これは『エネミー・オブ・アメリカ』の

あらゆる角度から監視できる装置に近い。

なぜ4日と6時間なのかというと

このデジタル映像を再現する時間が

4日と6時間かかるため。

ただし早送りや巻き戻しはできなくて

現在から4日と6時間前を

リアルタイムに視聴することしかできない。

見られるのは1度限り。

だからどこを重点的に見ればいいか

ダグに決めてもらおうというのだ。

 

このシステム最初は

ただ見ることしかできないと思われたが

過去に干渉して物を送ることもできると判明。

というか過去を見る装置を作ったつもりが

時空がねじ曲がって繋がってしまう

装置を開発してしまったらしい。

映像のクレアを見ているうちに

ダグはなんとかして

彼女を救いたいと思うようになり、

そのせいでまた

とんでもないことに巻き込まれる……。

 

あとこれはバラしても問題ないと思うが

犯人役でジム・カヴィーゼルが出演しています。

俺の生涯ベスト1映画

『オーロラの彼方へ』で主人公を演じた方です。

だから敵として出て来てきたのは

複雑な心境でした。

ちょっと応援しちゃったし、

あの手を真っ直ぐ突き出す仕草かっこよすぎた。

 

アビーという役で

エル・ファニングが出ていて

誰かと思ったら

ダコタ・ファニングの妹さん。

「ママー」と言いながら

人形を落としてしまう少女の役。

確かに可愛いから印象に残ってるわ。

 

監督はカーチェイスシーンを

もっと上手く撮りたかったようだが

朝の渋滞ラッシュの中を

ダグが片目でゴーグルを覗きながら

過去の犯人の車を

必死に追いかけるシーンは熱かった。

まるでマリオカートで

ゴーストと競り合ってる心境。

しかも向こうは深夜でスイスイ行けるのに

こっちは渋滞で思うように進めないのも

もどかしくて面白い。

 

★★☆☆☆ 犯人の意外性

★★☆☆☆ 犯行トリック

★★★★☆ 物語の面白さ

★★★★★ 伏線の巧妙さ

★★★★☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 -

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

フェリーの乗客543名 ---●キャロル・オースタッド ---信念【爆殺:ANFO爆薬】

クレア・クチヴァー ---●キャロル・オースタッド ---口封じ【焼死:ディーゼル燃料とプロパンガスの爆発】

ラリー・ミヌーティ ---●キャロル・オースタッド ---口封じ【射殺:銃】

警備員数人 ---●キャロル・オースタッド ---障害の除去【射殺:銃とマシンガン】

キャロル・オースタッド ---●ダグ・カーリン ---障害の除去【射殺:銃】

ダグ・カーリン ---●なし ---事故【爆殺:ANFO爆薬】

※ANFOとは、水溶性の硝酸アンモニウムと燃料油を混ぜた爆薬。

※実際の時系列は③②①/④⑤⑥---前と後は別の世界。

 

<結末>

偶然の産物で本当に過去に干渉できる

「時間の窓」を作ってしまった捜査班。

ダグはそれを使って

自分が過去に戻ることに成功する。

 

殺される寸前のクレアを助けて

これから何が起きるか知っていると

クレアを説得して現場へ向かう。

犯人オースタッドはダグが来たことで

フェリーに舞い戻り

それを見たクレアも船に乗り込んだが

オースタッドに捕まり

爆破する車に閉じ込められた。

 

救助に来たダグが

オースタッドと撃ち合って殺したが

爆弾を解除する時間が無い。

湾岸警備員が2人を取り囲んで

動くなと銃を向けてくるので

車を発進させてそのまま海へ飛び込む。

なんとかクレアを脱出させたが

ダグは外に出られずそのまま大爆発。

 

助かったクレアのもとに

もう1人のダグがやってくる。

ダグの名前を知っているクレアに

前に会ったことあるかと訊ねると

クレアは「ええ」と答えた。

そしてクレアの事情聴取のため

車を発進させるダグに

信じてもらえないかもしれない話があると

クレアは言うのだった。

 

時系列の整理

この作品は

主人公がタイムマシンで

過去に干渉するため

何が起きていたのか理解するのが難しい。

 

注意点としてパラレルワールド系の

時間軸が絡み合うものは

人によって理解や解釈が異なるため

これが正解というわけではないことを

頭に入れておいてもらいたいです。

 

※タイムトラベルを「TT」と略。

 

一応、俺の解釈は

①世界A:×フェリー爆発、×クレア死亡

《4日と6時間の世界、本編では出ない》

 ↓ダグが1回目のタイムトラベル

★②世界B:×フェリー爆発、×クレア死亡、×TT1回目のダグ死亡

《メインストーリー》

 ↓ダグが2回目のタイムトラベル

③世界C:〇フェリー無事、〇クレア生存、×TT2回目のダグ死亡

《4日と6時間の世界、映像の中》

 →クレアを救う、フェリー爆発回避

この3本の世界線(大きな川)が

あったという解釈で進めます。

ダグのタイムトラベルで

世界線を移動し

クレアを救いフェリーを守った行動で

結末が変化したと解釈。

 

ただし3本というのは

あくまでも本作で確認できているもので

世界Aの4日と6時間後には

別の世界があり

世界Cの4日と6時間前にも

別の世界が存在する。

ということから

ダグのタイムトラベルの回数は

2回ではなく∞回行われている。

(※後で解説します)

 

ダグがラリーにメモを送った時に

世界が分岐しなかったのは

本流はミシシッピ並なので

小石を投げ込んでも波紋ができるだけと

デニーが説明しているためです。

なお本編でも説明があったように

ダグが消えた後の世界は残るのか?

これはおそらく消滅するのだと思われる。

 

俺の考察では

この映画が開始した時点が

世界Bスタートになっています。

現場に現れたダグは世界Bのダグです。

世界Aからタイムトラベルをして

クレアを救うことに失敗した後から

何も知らない別のダグで

再スタートしたと思ってください。

 

 

世界AからきたTTダグは

世界Bのどこで死亡したのか不明。

世界BのTTダグは世界Cで

海中の爆破で粉々になる。

(みなさんが見た映画のラストがこれ)

何も知らない世界Cのダグが

残ったという解釈になる。

自分自身に会うという

パラドックスは起こらなかった。

 

一方クレアは複雑。

ダグが過去にメモを送り

ラリーを動かして犯人の車に発砲し

穴を開けたせいで

至急クレアの車が必要になった。

犯人に拉致されて

釣り餌屋で焼かれて右の指を切られて

海へ流された悲惨な運命を辿る。

世界AもBもクレアは死亡。

世界Cでダグがクレアを救った。

ただしクレアの死には矛盾が多く、

クレアが2人いないと

この話はおかしなことになっている。

(※ここも後で解説します)

 

ラリーは

4日と6時間前の世界Cは死亡。

ダグがメモを送ったせいで

オースタッドに射殺されて

燃やされて仕上げにワニの餌にされた。

監督と脚本家の「監視の窓」で

あれはラリーだと確定している。

世界AとBでも死亡している。

残念ながらラリーはどうやっても助からない。

 

犯人のオースタッドは

世界Aも世界Bでも

フェリーを爆破して逮捕される運命。

世界Cのダグの行動で変化、

フェリーに乗って殺される。

この流れが本流になるエンディングのため

オースタッドも救われない。

 

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

タイムトラベル系の作品だけに

伏線回収はとくに素晴らしい。

前半の違和感が後半に

なってやっとわかるようになる。

 

【「Don't Worry Baby」】

フェリーの駐車場で

車のカーラジオから

Beach Boysの

「Don't Worry Baby」が流れて

不審に思った警備員が近づいてくる。

後部座席に爆弾を発見した瞬間に爆発。

  • オースタッドの仕掛けた爆弾の悲劇と陽気な音楽のギャップが効果的。この曲がラストにラジオから流れて、ダグが妙な表情になる。これはタイムトラベルした別の世界線の記憶がデジャヴとして蘇り、ダグが何かを思い出しかけているのだろう。

 

【橋の上の犯人】

冒頭のフェリー出港の場面で

橋の上に人がいるのがわかる。

  • 意味ありげに犯人が登場している。終盤でダグが橋の上に人がいないのを見て伏線回収。自分の知っている歴史と変化が起きていることを悟ることになる。

 

【黒い死体袋の中から同じ着信音】

現場に到着したダグ。

自分の携帯が鳴っているのかと思ったら

黒い死体袋の中から携帯の着信が聞こえた。

  • 序盤の意味不明シーンその1。実はこれが1回目にタイムトラベルして任務失敗した自分の死体という考察が多いが、それだと2つの携帯が同時に鳴っていないことや(ダグの電話は着信してないから不思議な表情になっている)、身元確認してダグだとわかったら大騒ぎになること、それなのに4日間もダグに死体確認の連絡がないこと、そもそもダグがタイムトラベルする時は下着だけで携帯は持って行っていない、など無理が多いため却下。
  • 一方で「ただの一般人」とする説が有力。これは俺も、同じ着信音の他人だと思う。監督たちのコメンタリーでもここに触れていなかったので重要ではなさそう。家族が心配して電話しているのだなと気づいたダグがやるせない表情になっている。ここに新しい考察を付け加えるのならば、この死体袋の中はベスだったかもしれないと言っておこう。ベス・ウォルシュはクレアの友人で娘のアビーと一緒にフェリーに乗っていた。未公開シーンでは助かった未来でクレアに挨拶しに来ている。せっかく名前のある脇役なのだから、もし俺が監督ならこの死体をベスにすると思う。

 

【ゴーグルのFBI捜査官】

現場にゴーグルで捜査をしている

FBI捜査員のガナースがいる。

  • 後に活躍するゴーグルを早い段階で視聴者に見せておきたいという監督の意図らしい。

 

【女性からの電話】

ドネリーがダグ宛てに

女性から電話があったと言う。

ダグの特徴を聞かれたので

「背が高く色黒のハンサム」と答えた。

その電話番号にダグが

折り返し電話をかける。

「お電話頂いたダグ・カーリンです。

私の番号は504-555-0130」

  • 序盤の意味不明シーンその2。この女性がクレアで、クレアの家の留守電に自分の声が入っていることにダグは驚く。事件の直前にATFに何の用事があったのだろうと謎をばらまいている。実はこの時に未来から来たダグがそばにいて、ダグの素性を怪しむクレアがATFに確認をしていたことが後でわかる。

 

【左の耳にピアスが無い】

クレアの遺体には

左の耳にピアスが無かった。

どこかで落としたようだ。

  • このピアスがオースタッドの釣り餌屋の残骸で発見され、クレアがここで殺されたことが判明する。TTしたダグが真っ直ぐ釣り餌屋を目指すための伏線その1。

 

【右手の指が切断】

クレアの右手の指が切断されていた。

爆発に巻き込まれたのか?

  • 右手の指が切断された理由は、犯人の顔を引っ掻いたため。爪の間に残った皮膚のDNAを検出されることを犯人は恐れている。こういうことをする犯人は前科者の可能性が高い。

 

【クレアの猫】

クレアの飼い猫ジンジャーが

ダグに懐いていて餌をもらう。

  • この猫はクレアによれば「人見知りする」らしい。しかし、すぐ懐いてダグが触っても大人しかった。実は過去に戻ったダグが1度会っているという伏線。
  • この時にダグが迷いなくキャットフードを出しているのは、後に⑨クレアがキャットフードをあげている場面を「白雪姫」で見ているから知っていた無意識の行動。

 

【お前は彼女を救える】

クレアの家の冷蔵庫の

アルファベットのマグネットで

「U CaN sAVe heR(お前は彼女を救える)」

と書いてある。

⑪右下には

「パプティスト教会復活の日」のビラ。

  • 序盤の意味不明シーンその3。タイムトラベル系だと知っていたら、こういう謎はだいたい未来の自分の仕業とバレバレなんですが、この作品はタイムトラベルできることを隠して、過去を監視するだけだと思わせているので、この時点では謎のまま進む。後半に再びクレアの家でこのメッセージを読み、ダグは未来の自分からのメッセージだと気づく。「パプティスト教会復活の日」のビラも最初にチラッと写るが後半で大きく注目される。磔にされたイエス・キリストは3日後に復活した。事件から3日後の金曜日、ダグはやっとその本当の意味を理解する。クレアを復活させることができることに。

 

【血のついたタオル】

クレアの家に

大量の血のついたタオルが捨ててある。

  • 序盤の意味不明シーンその4。クレアが家で犯人に襲われてその血かと思わせているが、実は撃たれて治療したダグ自身の血だった。

 

【ダグの白い手袋とペン】

クレアの家に入った時、

ダグはちゃんと白い手袋をして

電話のボタンもペン先で押している。

   ↓

⑭だが後でクレアの家にいる

スタルハスから電話で

そこらじゅうにダグの指紋が

ついていると怒られてしまう。

  • ダグは手袋もはめてペンでボタンを押していた。指紋がつくはずがない。いつのダグの指紋なのか。そう、未来のダグの指紋です。

 

【留守番電話の履歴】

月曜 午後7時48分 父:明日の8時に空港に迎えに来てくれ

火曜 午前9時44分 ベス:電話に出るクレア「人が来てるの、後で掛け直す」

火曜 午前9時50分 無言

火曜 午前10時4分 父:いつまで待てばいいかと電話

火曜 午後1時18分 ダグ:留守電メッセージ「私の番号は504-555-0130です」

ATFに電話してきた

「877-504-8423」がクレアの番号。

  • 9時44分のベスの電話が重要。クレアのそばにいるのはもちろんTTしたダグ。この時のベスの台詞をダグは未来から来た証拠としてクレアに話す。
  • ダグは表情にこそ出さないが矛盾を感じている。クレア遺体の状況から爆発の2時間前には死んでいると推測しているが、9時44分に生きていたのはどういうことなのか?と。事実と違う何かが起きている。
  • 9時50分の無言電話は不明。

 

【人の気配】

クレアが誰かが見ている気配を感じるが

家の周りには誰も居ない。

ダグはこっちに気づいてるのかと質問したが

それはありえないとプライズワーラが答える。

だが確かに過去のクレアが反応していた。

 ↓

ダグがレーザーポインターを大画面に照射すると

過去のクレアにも光が見えて驚く。

  • 最初の違和感が過去改変のきっかけになり、レーザーで確信に変わる。これは過去を覗き見るだけじゃなくて、過去に干渉できる装置だった。⑱過去の映像なのに巻き戻しも早送りもできないのはリアルタイムで流れる別の世界だからです。実はこの大画面の裏に転送するタイムカプセルがある。
  • ダグは、最初はフェリー乗り場にテロリストが現れるというメモを送り、次はダグ自身が過去にタイムトラベルした。ちなみに、何かを過去に送る時には大量の電力を使うため、辺り一帯が停電してしまう。

 

【葬式に現れた5人目の運転手】

クレアの葬式に

ハイヤーの運転手を装った男

オースタッドが姿を見せている。

  • 彼がここに現れたのは、クレアの死亡を確認して自分のやり遂げた仕事に満足したいためだと監督は言う。

 

【犯人からの電話】

クレアの働いているレストランに

犯人から電話が掛かってくる。

「ブロンコを売りに出してる人?」

ダグはその声を聞くなり犯人だと断定する。

  • この時のダグはオースタッドのことは知らないし、もちろん声も聞いたことはない。しかし、犯人だと確信する何かがあった。もしかしたら、別の世界線の記憶が混ざっているのかもしれない。

 

【ラリーの死】

フェリー乗り場に現れる男を押さえるため

過去の自分に手紙を送るが

ダグではなくラリーが見てしまう。

  • その結果、ラリーがオースタッドに射殺されて死体を燃やされる悲劇に。ダグの過去への干渉がラリーの行動を変えてしまったと悔やむダグ。
  • それだけでなく、㉒ラリーがオースタッドの盗んだ車に発砲して穴を開けクレアのブロンコが至急必要になり、クレアの命が狙われることになってしまった。

 

【停電】

過去にメモを送った時

付近一帯に停電が起きた。

  • 送った世界と送られた先の世界で停電が起きる。送る物が大きければ大きいほど電力を必要とするらしい。

 

【釣り餌屋に突っ込んだ救急車】

犯人を尾行して辿り着いた

釣り餌屋に救急車が突っ込んでいる。

本部の見ている4日半前の映像には

救急車は無いし建物も壊れていない。

  • TTしたダグが真っ直ぐ釣り餌屋を目指すための伏線その2。ダグは翌日タイムトラベルして、救急車に乗ってここに突っ込む。

 

【オースタッドの運命】

オースタッドは未来を見たという。

有罪にも裁判にもならない運命。

ダグが運命を止めようとすることが

引き金になると言った。

  • オースタッドはダグが過去を変えようとすれば、自分がフェリーに乗って死ぬことを予知している。だから裁判で有罪判決を受けることはないと知っていた。しかし彼はタイムスリップしているわけではない。ダグが過去に干渉したことでオースタッドの行動が大きく変化するため、別の世界線の記憶が「デジャヴ」として流れ込んだのだと思われる。

 

★㉖【「2度目だとしたら?」】

金曜日の深夜、

ダグの電話に出たデニー。

「掛かってくる気がしてた。危険は承知だろうね」

ダグはタイムマシンを使って

過去に行くつもりだった。

一度は協力しようとするデニーだが、

直前になって

「やっぱりやめよう」と弱気になる。

ダグはデニーに言う。

「(タイムトラベルが)2度目だとしたら?」

それを聞いたデニーは納得したのか

「ああ」と頷いた。

  • デニーはダグがタイムマシンを使うことを予感していた。そのために深夜まで待っている。本当に人間を送れるのか不安なデニーだったが、ダグが「2度目」だと言って安心させている。これはダグの嘘なのか事実なのか意見が分かれるところだが、ダグはそれまでに感じていた「デジャヴ」から自分が1度はタイムトラベルしていることを確信したのだろう。
  • デニーが未来の自分からのメモで「金曜日の夜にダグが来ることを知らせていた」というのは、俺はあり得ないと思う。デニーは人間を送ることは不可能だと言い切っている。態度が変わった金曜日の4日と6時間後は3月7日になり、事故から1週間、それだけ遅れてからメモを過去に送る理由付けが難しい。
  • あり得る説が1つある。㉗ダグは「過去に行ったらこの体験を過去の君に話してやろう」とデニーに言い、別れ際にデニーは「昨日会おう」とダグに言っている。もう0時を過ぎ、日付が変わって今は土曜日。デニーがダグをタイムマシンに乗せようと急に態度の変わった金曜日が昨日である。確かに伏線として張れていれば秀逸。しかしTTしたダグはフェリー事故で死亡している可能性が高い。もしも生き伸びていたら、この世界の自分は3月4日(土)に過去へ消えるので、入れ替わりに戻ることはできそう。果たして……。

 

【撃たれるダグ】

救急車で釣り餌屋に突っ込んだダグ。

オースタッドに撃たれて

肩を負傷してしまう。

  • この傷の手当てでクレアの家に立ち寄ることになり、血のついたタオル「お前は彼女を救える」のメッセージ、なぜクレアはATFに電話したか、留守電で言っていた来客など、次々と伏線回収が繋がっていく。

 

【重大な秘密を話す相手】

クレアの家の中のことを

知りすぎているダグを疑うが

ATFに確認したら本人に間違いない。

でもクレアはまだ信じられない。

ダグはクレアに質問する。

「もし誰も信じるはずのない

重大な秘密を握ったらどうする?」

「信じてくれるかもしれないから話すわ」

とクレアは答えた。

  • 政府の機械で未来の出来事を予知したと話すダグ。クレアはその話を信じてダグと行動を共にする。そしてフェリーの爆破を回避し、クレアだけが助かった。そこに現れた何も知らないダグにクレアが同じ質問をする。「ダグ、もしもあなたが誰も信じてくれないような秘密を握ったらどうする?」と。それにダグは「話すよ」と答えた後、しばらく考えて「……まさか」とつぶやく。台詞の質問者と回答者が逆になる伏線回収で物語を締めくくった。

 

欠点や疑問など

  • 1度ですべて理解するのは難しすぎる。理解するために字幕2・吹替え5・「監視の窓」2・未公開シーン1など合わせて10回ほど観たが……やっぱりわからんところがある。綺麗に繋がっていないと思う。
  • オースタッドの車を追う時におもいっきり事故ってるけどダグは逮捕されないのか?
  • 「白雪姫」があらゆる過去の音声をどうやってクリアに拾えるのか説明がなかった。電話の相手の声まで聞こえていた。
  • タイムマシンの構造が腑に落ちない。紙1枚過去へ送るのにあれだけ時間と電力がかかっているのだから、人間を送るのは1時間くらい時間かかってもおかしくない。心臓が止まるだけなら蘇生も可能とか都合良すぎる。タイム・ウィンドウの空間転移は監督や脚本家の間でも議論になっていて、科学的に説明することが困難な無理のあるSF装置は避けたかったそうだが……。結局、つっこみどころ満載の装置になってしまった。
  • 正直、過去に介入できるのはメモくらいにしてほしかった。人体実験に今まで失敗してきたのにダグであっさり成功してしまうのも……ん?って感じ。
  • ダグの「2度目だとしたら?」でデニーがあっさり納得した理由がよくわからない。
  • わざわざ葬式にやってきて確認するほどなのに、なぜオースタッドは釣り餌屋を爆破した時、2人の死体を確認しなかったのか。ここで死体が見つかるのはまずいはず。死体を海へ投げてフェリーの爆発に見せかけるんじゃなかったの?まだ9時だし十分に確認の時間はあった。
  • 1回目の失敗がどうなって失敗したのか説明不足。
  • クレアの家から「フェリーに爆弾を仕掛けた」と警察に電話して、フェリーに警備を回してしまえばわざわざ負傷した自分が行かなくてもいいしクレアも助かる。
  • 重大なタイムパラドックスがある。クレアの家にあった血はダグの血で、未来のダグが残した「お前は彼女を救える」まであるのなら、TTしたダグはクレアを救っていなければいけない。でも実際にはクレアは焼かれて死んでいた。クレアは助からなかったが、撃たれたダグは死んだクレアの家で治療したことになってしまう。それはおかしい。クレアがいないのにクレアの家で治療するのは不自然。治療したと言うことはクレアが生きているということになる。矛盾しています。それともあれはクレアの血だった?猫のジンジャーが懐いていたことの説明はどうする?午前9時44分の留守電に出たクレアは?理解しようとすればするほど矛盾が出て来てしまう。
  • もう1つのダグとクレアは生存したがそのために頑張った元の世界線のダグの死がつらい。他のタイムマシン系の映画なら好きな人のために頑張った主人公が残るはずなのに、これでは後味悪く感じるし、ダグがクレアにまだ何の感情も持っていない。この後、普通に別れて何もない可能性もある。オチが弱く感じる。

 

クレアは2人いるのか?

ネットの某ブログによると

「ダグは3回タイムトラベルをして

過去へ戻っている」と書いてありました。

ダグがラリーを動かしてしまったために

クレアが死んだのだから

クレアが死ぬのは2周目からで

3周目が今回のストーリー。

そこから3回目のタイムトラベルで

4周目でクレアを救ったというのだ。

 

俺はダグがタイムトラベルした回数は

無限にタイムトラベルして

ずっとループしている説を推します。

そこで立ちはだかる壁が

TTする直前のダグの台詞。

「やっぱりやめよう」と言うデニーに

ダグは「2度目だとしたら?」と言った。

ダグはこれが

2回目のTTだと思っているようだ。

まずはこれを崩してみましょう。

 

素直に受け取れば

今が2回目のタイムトラベルのはず。

しかし英語で原文を見ると

「You don't have to do this.

(こんなことをする必要は無い)」

と言うデニーの発言にダグはこう答えた。

「What if I already have?

(すでにやっていたら?)」

日本語の邦訳は2度目と解釈しているが

原文は「前にもやった」ということなので

これは解釈の幅が広がります。

無限ループを繰り返している自覚はないけど

自分の知らないところで指紋がついていたり

不思議な痕跡や自分宛のメッセージに

自分がTTしているだろうと察している。

1度TTして生きてるんだから心配するなと

「2度目だとしたら?」と余裕を見せたのではないか?

 

先程の某ブログからの引用。

もしタイムスリップを1回しか行っていない場合、その1回目でクレアが拉致されることや犯人がアジトへ向かうことなど分かるはずがないので、タイムスリップ直後の病院から敵アジトへ突っ込んでクレアを救おうという行動はあり得ないことになります。そもそもこの時はクレアは死んでいないわけですから。

2回目のタイムスリップの時点では、クレアが拉致されて死亡することを予測していたからこそクレアを病院から直行で助けにいったわけですね。まぁ結局死んでしまったわけですが。

これが、映画のタイムスリップは最低でも3回目、という証拠になります。

 

クレアに関しては

<ダグがラリーにメモを送る>

 →<ラリーが車を撃つ>

  →<クレアの車が必要になる>

   →<クレアが殺される>

この連鎖反応がすべての世界で起きていると

俺は考えていますので

クレアが生きている世界線は1つもない。

 

ラリーはダグの送ったメモで

行動が変化したように思わされるが、

ラリーは1周目から

未来のダグのメモで動いて殺されている。

未来のダグの世界でも

ラリーは未来のダグに、

そのダグの世界のラリーも

そのまた未来のダグに……と無限ループ。

タイムパラドックスです。

 

「俺が原因だったのか……」と

ダグがひどく落ち込んでいる姿を見ても

過去を書き換えてしまったのではなく

過去の答え合わせだったように見えた。

脚本家の解説でも

「ダグが何をしても物事の結末は変わらない」

と重要なことを言っている。

確定した過去は改変できないのが

この映画のルールだ。

 

「もともとの事件では、

ラリーはフェリーの爆発に居合わせて死亡、

犯人は自分の車を使って爆破を成功させ、

クレアには何にも関係ない事件だった」が

ダグがラリーにメモを送っただけで

「無関係なクレアが死んでしまった」のでは

さすがに結末が変わりすぎである。

 

初めてメモを送ったつもりで

初めてではなかった。

前にもその前にも

ダグのメモがラリーの死因になっていた。

そのために自らタイムトラベルして

別のパラレルワールドで結末を変えるため

世界をいくつも移動してきた。

だからクレアはどの世界線でも

死んでいると考えるのが正しいと思う。

 

さらにこの人は

「3周目でクレアを助けたが

クレアの家にいって

ベスの留守電を聞いた後で

クレアを家に残して

ダグ1人でフェリーに行ったために失敗した。

4周目でクレアと一緒に

フェリーに行って過去が変わった」という。

 

もっと古いブログ(2010年)の人が

同じ考察をしているのを引用。

ここからは推測だが、ダグN-2はクレアを家に残して一人で爆弾を阻止しに行ったのではないか?犯人はクレア宅を知っているので、さっきのガス爆発で奴らは死んだとは思うが念のためチェックしてみようとクレア宅を訪れて鉢合わせ。せっかく助けたのに結局犯人の餌食になってしまったのではないだろうか。
このシーンを解く鍵だと考えられるのは、映画の中でクレア宅の留守番電話に入っていた記録。ベスの電話後すぐに入った無言電話(9:50)があり、この電話の主は不明。クレアが何らかの形で電話を受けられなかったということではあるが、これだけでは何が起きたか絞る事は出来ない。
10時42分、河川敷で殺害されたクレアの死体が発見される。犯人は流石にここまで早く見つかるとは思わなかったろう。それを知らない犯人はその後橋の上でバイクに乗ってフェリーを見ているシーンが監視カメラに残っている。

 

おそらくこの人の考察に

先程の人も引っ張られているようですが

すべて鵜呑みにするわけにいかない。

明らかに間違っている箇所がある。

しかしフェリー乗り場に向かおうかというそのとき、彼は部屋の状況が自分が捜索した先の時間軸とまったく変わっていないということに気がつく(まさしくデジャヴ)。ダグはクレアを時間軸N-1とは違う服へ着換えさせたうえで「2人で」フェリー乗り場へと向かうことにする。

クレアは青い服は1度も着ていませんが……。

助かった時も赤い服です。

起きていなかったことを想像で補完するより

起きたことが他の世界線でも起きていたと

考えた方が論理的ではないでしょうか。

ねえ?

 

なぜクレアを家に残して殺されて

ダグ1人がフェリーで死ぬ必要があるのか?

俺にもよくわかります。

要するに午前9時44分の留守電で

クレアが生きていたのに

その後死体になったことを

無理矢理説明しようとしているためです。

 

その世界線(本編ストーリー)なら

10時42分にクレアの死体が発見され

爆発の2時間前が死亡推定時刻になっています。

しかし午前9時44分のベスからの電話に

生きて電話に出ている。

仮に留守電の後でクレアが殺されて

最速で上流に流されたとしても

死後1時間前になって

死亡時刻が矛盾してしまう。

死体に弾丸の跡も無かったし

ディーゼル燃料で焼かれたので

街中でそんな殺し方できないでしょう。

殺害に手間取ったら

船に爆弾を仕掛ける時間が無くなってしまう。

 

 

……そうなんですよね。

結局クレアの死体がもう1つ必要

これがどうにもわからないんだなぁ。

 

タイムマシンで過去に行けること自体が

トンデモ設定なので

あまりリアルに考えても駄目なのでしょうが、

俺が今まで知ってる作品を参考にして

別の世界線の歴史が混ざって

クレアの死体が残ってしまったと考えたら

一応は説明できそうです。

 

それは

「シュレーディンガーの猫」

 

鋼鉄の箱の中に

毒ガスの発生する装置のスイッチと

1匹の猫を入れてしばらく放置した後、

その猫が死んでいるのか生きているのかは

「箱を開けて

中を確認するまで誰もわからない」

という有名な思考実験です。

「観測者が箱を開けるまでは、

猫の生死は決定していない」ので

事象は重なり合った状態で存在する。

 

俺の大好きな

『シュタインズ・ゲート』という作品では

7月28日に主人公に届いたムービーメールが

「シュレーディンガーの猫」でした。

その時の主人公には

ノイズだらけで見ることができないが

確かにメールは着信している。

実はこのメールを送ったのは

「15年後の主人公」で、

ヒロインの救出に1度失敗したからこそ

過去を変えるためにメールを送った。

だから救出に1度失敗するまでは

未来の主人公は存在していないから

確定するまでメールは見られない。

1度失敗したことで

「未来が確定」してから

メールが見られるようになりました。

 

有名なタイムトラベル映画

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

マーティの写真が

「シュレーディンガーの猫」

母が未来の息子に恋をして

両親が結婚しない未来に近づくと

マーティと兄姉が写った写真から

人が消えていきましたよね。

あれが2つの事象が重なった状態です。

どちらになるか不透明なままで

どちらも存在している状態。

これがタイムトラベル系を

読み解く鍵ではないかと思います。

 

『デジャヴ』に話を戻しましょう。

なぜ死んだクレアの死体があるのに

クレアが生きているのか?

死んでいる世界線のクレアを助けたために

クレアの生死が不透明になり

時空に歪みが生じて

2人のクレアが同時に存在することになった。

と考えたらどうでしょう。

別の言い方をすれば、

世界Aと世界Bと世界Cの

事象が混ざり合って

いるのではないかということです。

それが「デジャヴ」の原因になる。

 

クレアの生死はまだ「確定」していない。

なぜ確定していないのかというと

クレアを殺した原因である

オースタッドが生存しているため。

オースタッドの死によって

やっとクレアの未来が確定するのだろう。

 

――かなり苦しいけど

そう推理しないと、

この矛盾は解決できそうにない。

映画を観てからこの矛盾に取り組み

何度も考えて出した結論がこれ。

自分でも苦しいフォローだと思う。

はっきり言って死体の状態を

爆発の2時間前にしなければ

納得いくようにできたはずです。

まあタイムマシンの出る

荒唐無稽な話なので

細かいことは気にせず

楽しむのがいいのでしょうね。

 

 

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