犯罪が行われ、死刑は確定した。だが、真実はまだ語られていない――

ケビン・スペイシー主演の映画で

前から気になっていた作品。

 

『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』

[the life of david gale]

(2003年)アメリカ映画

 

<あらすじ>

雑誌記者ビッツィー・ブルーム(ケイト・ウインスレット)は、死刑囚デビッド・ゲイル(ケビン・スペイシー)に指名され、死刑執行直前の3日間、彼のインタビューを行うことになる。死刑制度反対派の大学教授だったデビッドは、女生徒のレイプ疑惑で大学を追われた後、元同僚で死刑反対派の文学科教授コンスタンス・ハラウェイ(ローラ・リネイ)を殺害した罪で死刑を宣告されていた。面会所の金網越しに事件の経緯を聞いたビッツィーはデビッドが冤罪ではないかと思い始め、見習い記者のザック(ガブリエル・マン)と一緒に真犯人を探そうと事件を再調査するのだが、無情にも死刑執行の時はすぐそこまで迫っていた……。

 

<スタッフ>

監督・製作 アラン・パーカー

脚本 チャールズ・ランドルフ

製作 ニコラス・ケイジ

製作総指揮 モリッツ・ボーマン

    ガイ・イースト

    ナイジェル・シンクレア

音楽 アレックス・パーカー

撮影 マイケル・セレシン

編集 ジェリー・ハンブリング

 

<キャスト>

ケビン・スペイシー(デビッド・ゲイル)

ケイト・ウィンスレット(ビッツィー・ブルーム)

ローラ・リネイ(コンスタンス・ハラウェイ)

ガブリエル・マン(ザック)

マット・クレイヴン(ダスティー・ライト)

レオン・リッピー(ブラクストン・ベリュー)

ローナ・ミトナ(バーリン)

ジム・ビーヴァー(デューク・グローバー)

クレオ・キング(バーバラ)

ノア・トゥルースデル(ジェイミー・ゲイル)

エリザベス・ガスト(シャロン・ゲイル)

メリッサ・マッカーシー(ニコ)

 

感想

『ミッドナイト・エクスプレス』や

『エンゼル・ハート』などの

アラン・パーカー監督の第14作目。

 

死刑囚となった元大学教授が、

刑の執行直前に

1人の女性雑誌記者に真実を語りはじめる。

その驚くべき証言によって

事件を再調査した彼女は、

殺害現場を撮影した

ビデオテープの存在に辿り着く。

果たしてデビッドは有罪か?無罪か?

死刑制度の是非を問う

タイムリミット・サスペンス。

 

どんでん返しが凄いと聞いていたが

やっぱり凄かった。

「ああ、そういうことか!」という驚きから

すぐにエンドロールに入るので

その間にゆっくりと

物語を理解することができるし

終わり方に余韻があって良い。

 

ケビンのセックスシーンは2回あるが

どちらの女優もおっぱいは見せない。

ローラ・リネイはビデオテープ内で

ヌードになっている。

顔にビニール袋を被っていて

顔が見えないので替え玉かと思ったが

監督はローラ本人だと言っている。

このシーンは撮影したスタッフたちも

見るのが辛くて時間を短くしたそうだ。

 

終盤の雑誌社の中を

ケイト・ウィンスレットが走るシーンで

おっぱいが揺れる揺れる。

つい二度見しちゃったじゃないか。

一時期デブ化したが

この人はぽっちゃりな方が好き。

ヌードは無し。

 

この映画は

死刑制度の是非という

重いテーマを扱っているが、

それよりも

二転三転するサスペンス部分を

楽しんだ方がよいと思う。

 

この映画の公開時に

「あなたはこの結末に納得できますか…」

というキャッチコピーがつけられた。

俺はエンタメ作品として

高く評価するが、

リアルにこのようなことが

あってはいけないし

フィクションだからこそ

許される部分が多々ある。

この映画を観て

嫌悪感を抱く人も当然いる。

 

監督は「人々の心を

映画で変えることはできないが

刺激は与えられると思う」

「少しでも記憶に残れば

作った甲斐がある」と述べている。

この映画をきっかけに

何かを考えてくれたら

それだけで

この映画の意義はあったのだろう。

 

★★★★☆ 犯人の意外性

★★☆☆☆ 犯行トリック

★★★★☆ 物語の面白さ

★★★★★ 伏線の巧妙さ

★★★★★ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 ○

泣ける度 △

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

コンスタンス・ハラウェイ ---●コンスタンス・ハラウェイ ---自殺【窒息死:ガムテープ】

※自殺ほう助で、デビッド・ゲイルダスティー・ライト

 その後の秘密隠蔽でブラクストン・ベリュー弁護士も協力している。

デビッド・ゲイルの死刑は自殺に等しい。

 

<結末>

デビッドが死刑になる日。

ダスティーの家を捜索して

発見したビデオテープには

被害者のコンスタンスが

自殺する様子が映っていた。

このビデオがあればデビッドの冤罪を証明できると

ビッツィーは車を走らせるが間に合わず、

結局死刑は執行されてしまう。

 

死刑後にビデオを公開し、

無実の人間を殺したことで

世間は大騒ぎになり、

ビデオを撮影したダスティーは行方をくらました。

そんなある日ビッツィーの元に

ベリュー弁護士から荷物が届く。

 

「自由への翼」と題されたビデオを

再生するビッツィー。

そのビデオに映っていたのは、

死亡したコンスタンスに近づく

デビッド・ゲイルの姿……。

死刑制度の見直しを訴えるために

自らが死刑になるように仕組んで

「無罪の人間を死刑にした実例」を

作り出す計画だったことを知り、

ビッツィーは涙が止まらなかった。

 

どんでん返し&伏線解説

この作品のどんでん返しは3回。

 

最初のどんでん返し

コンスタンスは

殺されたのではなくて

自殺したということ。

 

殺害当時のビデオテープが出てきて

そのテープの中で

自分で手錠の鍵を飲み、

口にガムテープを貼り、

ビニール袋を被って

手錠をはめる姿が映し出される。

 

そのまま寝転がって

しばらくもがいた後、

窒息死してしまう。

この一部始終を録画していたのは

「デス・ウォッチ」の前支部局長

カウボーイのダスティーだった。

 

ビデオテープをわざと見せたり

怪しい動きをしていたダスティーだが

彼は犯人だと思わせるレッド・ヘリング。

実は今回の計画の協力者。

 

コンスタンスの身体には暴行された痕があり

手錠の鍵を飲まされて

後ろ手に手錠をはめられて

ビニール袋まで被らされていた。

あまりにも酷い状況のため

これが自演だとはとても思わないだろう。

 

一方で

なぜこのような自演をしたのかというと

デビッドが出演したテレビ討論で

ハーディン知事から

「私の就任以降、

無実で処刑された人がいますか?

冤罪だったと証明できる人物の

名前を言えたら死刑を停止しよう」と言われたが、

デビッドは

具体例をあげて

反論することが出来なかったから、

冤罪なのに死刑になった実例を

自分で作り出し

死刑の見直しを訴えようと考えたのだ。

コンスタンスが会話の中でも言っている。

「無実の人が処刑された確かな証拠があれば

死刑停止に踏み切れるわ、イリノイみたいに」

 

彼女が命を犠牲にしてまで

この計画を実行したのは

「白血病」が大きく関係している。

コンスタンスは白血病のため

もうあと何カ月生きていられるか

わからない状態だった。

尽きる命を有効に使おうと

考えたのがこの計画である。

 

大学を辞めたデビッドが

家電製品の販売員になって

コンスタンスの家を訪ねた時、

コンスタンスの腕にあざがあることに気づく。

「カウボーイにやられたな」と

デビッドは勝手に解釈したが

実は彼女は病気が悪化していて

内出血であざができた。

(ぶつけなくてもあざができる)

その後、額にキスした時も

「ひどい熱だ」と異変に気づいたが

あきらかに彼女の体調はおかしい。

 

コンスタンスが自殺ではないかと

ビッツィーが疑ったきっかけは

バスルームの床に投げてあったタオル。

 

最初に現場に見学に行った時、

ニコが説明する。

「指紋を残さないように家事用のゴム手袋をしてた」

それを聞いて

ザックがゴム手袋を持ちあげるが

ゴム手袋が裏返しになっている。

ゴム手袋は裏返して洗う方が乾きやすい。

これは主婦がよくやることなので

コンスタンスが使った可能性が出てくる。

 

犯人が使ったかもしれないが

洗いかごに戻してあったので

殺人犯にしては几帳面、

床に捨てたバスタオルのように

普通はその場に捨てるだろう。

 

以上の推理から

ビッツィーはコンスタンスが自分で

ゴム手袋を使った=自殺と判断した。

 

 

そして2回目のどんでん返し

デビッドが無罪だとわかったのに

助けられず死刑になってしまう。

 

避けられない運命とは言え

冤罪だった死刑囚を見殺しにしてしまった。

ビッツィーは自分のふがいさなに泣き崩れる。

これは物語として見れば

普通ならバッドエンド。

しかし最後に

彼女が救済される

「自由への鍵」が待っていた。

 

 

最後のどんでん返し

デビッド・ゲイルが

全てを知っていたこと。

コンスタンスの自殺も

自分が逮捕されることも

死刑になることも全て計画通りで

デビッドがその首謀者だった。

ビッツィーたちは彼に騙されていたのだ。

 

重要な手掛かりは

被害者の被っていたビニール袋に

デビッドの親指の指紋があったこと。

死亡直後の死体に

触れていることを意味する。

 

その場面が

最後のビデオテープに映っている。

それは命を捧げて協力してくれた

故人をいとおしむような

優しい手つきだった。

 

ビニール袋の指紋は

犯行前についていたかもしれないという件で

ビッツィーとザックが議論する。

「あなたビニール袋を撫でまわす?」

「俺は家庭にあるプラスチックに惹かれちゃう。

とくにタッパー」などと笑い話を入れて

指紋の件から目を逸らしている。

 

 

その他の伏線では

冒頭の車の警告ランプ

後のエンジントラブルに繋がる。

 

デビッドが同僚のコンスタンスを襲うという

可能性を視聴者に植え付けるため、

デビッドは妻と離婚後どんどん酒に溺れていく

昼間から飲んだり、

夜の街を哲学的に講釈しながら歩いて

何かしでかしてもおかしくない人間に見せている。

その後アルコール依存症の会に参加したり

家電製品の販売業者に就いて

立ち直る様子も見せている。

 

最初のビデオを見つけて

ベリュー弁護士に見せたが

思った効果を得られず

怒って出ていくビッツィーの後で、

フーッとため息をつくベリューの様子からも

何か裏にあるらしいことを匂わせる。

 

バーリンが姿を消して

サンフランシスコから手紙を出す。

「何でもする学生より。後悔しています」

この手紙をそのまま元妻に送っている。

 

別れた妻に

多額の慰謝料(養育費)を払ったと同時に

バーリンの謝罪の手紙を添えておいた。

(この意図は下で解説)

 

 

よくある疑問

Q,製作にニコラス・ケイジとあるが

どこに関わっているの?

 

この映画の脚本は最初

ワーナー・ブラザースにあって、

それをニコラス・ケイジの会社が買った。

しかし彼は2本の出演作と

監督作が控えていて多忙だったため、

脚本を読んで気に入ったアラン・パーカーが

この脚本を譲ってもらったらしい。

 

Q,エリス刑務所は実在のものを撮影したの?

 

外観は本物のエリス刑務所だが

内部は撮影不可なので

飛行機場にセットを建てて刑務所を再現した。

日本庭園が出てくるが

これは実際のエリス刑務所にもある。

興味があって映画に出したかったそうだ。

 

ちなみに1時間6分頃に映る

ボール遊びをしている囚人は

本物の囚人とのこと。

 

Q,デビッドは自分の無実を証明する役を

なぜビッツィーに託したのか?

 

ビッツィーが情報源の秘密を守って

刑務所にまで入れられたことから

この人物なら秘密を託せると判断した。

ジャーナリストであることも

真実を発信する人物として適役だった。

 

Q,ダスティーはなぜ

カウボーイの帽子を被っているのか?

 

俺の想像ですが

終盤でビッツィーが

ビデオテープ②を見た時に

倒れたコンスタンスをまたいで男が登場する。

この男はダスティーなんだけど、

視聴者にはオチのデビッド登場までは

一瞬でも「デビッド?」と思わせたくないから、

遠目にも帽子でダスティーだとわかるよう

カウボーイの帽子を被らせたのではないか?

というか自分だったらそうする。

 

舞台がテキサス州オースティンなので

カウボーイの帽子を被っていても

おかしくないところもポイントだ。

 

Q,ベリュー弁護士は無能とか言われているが

実はやり手なのか?

 

無能のふりをして裁判で敗北。

弁護士としての評判に傷をつけてまで

デビッドの味方をしてくれた。

実はデビッドとは昔からの友人で

2人でバーで会話するシーンもある。

情には厚いが

やり手かどうかは別の問題。

 

Q,バーリンという

「何でもする学生」の役割は何だったの?

 

彼女はビッチな学生。

妻の浮気と酒の勢いで

落第したバーリンとセックスするが

彼女はその事実を逆手に

レイプされたと訴えた。

すぐに告訴をとり下げたのは

罪悪感があったからだ。

彼女としては仕返しをしたかっただけ。

手紙以降は出て来ない。

 

Q,ゲイルの授業に遅れて入ってきたバーリンが席へついた際に、隣の女性からもらった手紙は開けずにそのままファイルの中へ入れたのですが一体なんだったのでしょう?特に意味が無ければあそこでそのシーンを入れる必要がありません。その後パーティーでバーリンは除籍処分となった事実が判明しますが、あれはその通知書でしょうか?またそのパーティーへの招待状?それとその手紙を渡した女性は誰からもらったのか、そしてその女性は誰?ゲイルがパーティーへ向かう際に家にいた女性、ゲイルがバーリンレイプの起訴を取り下げられた際にコーヒーショップから出てきた際に車の中に声をかけた女性は同一人物なのか?

 

手紙は退学通知です。

点数を稼ごうとデビッドを誘ったのが

中身を見る前だったので知らずに誘った。

その後のパーティーで同僚の教師から

バーリンに退学通知が届いたことを聞かされて

ああアレがそうだったのかとわかるわけです。

あの講義に集まった学生は本物の学生で

手紙を渡した女はただの端役。

 

妻の留守に家に居た女はベビーシッターと

エンドクレジットに書いてありました。

車の窓をすぐ閉めたのも彼女。

名前はジョアンナ(ジョー)。

見ての通りデビッドは嫌われています。

 

Q,ダスティーが登場すると

オペラの「トゥーランドット」が流れる意味は?

 

物語の核心に迫っているという合図。

ダスティーが最後に自分のBGMだった

「トゥーランドット」を観劇するのは

ちょっとした遊び。

 

Q,モーテルへ泊まった部屋でビデオテープを発見するのですが、なぜその部屋に工作ができたのか。あのモーテルへはたまたま泊まっただけにしか見えませんし、どこかで予約を取っていたようなシーンもありません。おそらくダスティーが工作したと思うのですが、2人がチェックインした際にどの部屋へ泊まるかダスティとつながりがある受付が作為的に誘導したとしても、そもそもそのモーテルへ宿泊すると限らないのでどうしてあの工作が成り立つのかがわかりません。ダスティが後をつけていたとしてもどの部屋に泊まるかチェックインするまでわかりませんし、それをダスティがどう確認するのでしょう?

 

ビッツィーたちがビデオを発見したのは

2日目のモーテルです。

 

1日目に前乗りでオースティンに着いた後、

朝のシーンでモーテルが「満室」と出るので

ここに泊まったのは間違いない。

さらに1日目の夜に晩飯を買った後で

尾行するダスティーの姿が映り、

そこからすぐ2日目になるのですが、

その夜も当然

同じモーテルに泊まったと考えられます。

 

1日目に尾行されていたのですから

2日目の夜に部屋に入られて

工作されたのは筋が通る。

 

Q,ではダスティーはどうやって

ビッツィーの宿泊していた

モーテルの部屋に入ったのか?

 

あのモーテルは

エリス刑務所に一番近いモーテルなので

ビッツィーたちがここに泊まることは

あらかじめ想定内だろう。

 

一番簡単な解釈は

モーテルのオーナーが金を貰って

マスターキーでビッツィーの部屋を開けた説。

次にダスティーがあのモーテルに泊まって

全部の部屋の合鍵を偽造した説。

おそらくなさそうなのが

ダスティーが鍵開けのプロだった説。

真相は明らかにされていない。

 

Q,自分が殺したと認めていないのに

デビッドが死刑になるのは都合良すぎ。

 

物語の都合上とはいえ

確かにその通り。

デビッドは殺しを認めていないが

酒を飲んで当時の記憶が無いから

強く否定できないという

曖昧な態度をとったものと思われる。

 

あと1度目のレイプ事件が

心証を悪くしている

あれは合意の上のセックスなのだが

世間には「レイプ魔」という印象を与えたので

あえてレイプ殺人に見せかけることで

デビッド=犯人だと納得しやすくなっている。

そういう伏線。

 

Q,車のエンストは意図的に仕掛けられたものか?

 

あの車は最初から調子が悪かった。

誰かが工作したわけではなさそう。

エンストの前にザックが電話しているはずだが

それでも死刑は延期にならなかった。

もしも車が無事に辿り着いていても

延期になったか微妙だ。

 

この計画は

もし死刑が執行されなくても

冤罪者を死刑にしようとした未遂事件として

十分に意味のあるものになっていた。

ただデビッドはコンスタンス1人を

犠牲にすることはできないので

自分も逝きたいと思っていただろう。

 

Q,デビッドの最後の食事のメニュー、

甘いものが多いのはなぜ?

 

パンケーキにメイプルシロップ、

生のいちご、ホイップクリームに

たっぷり削ったチョコレート。

 

このメニューは以前に

ジェイミーがデビッドに

食べたいと言っていたもの。

「明日の朝パンケーキ食べたい。

シロップといちご乗っけて、チョコも……

それとホイップクリーム」

つまりジェイミーの大好物。

デビッドは最後の最後まで

息子を愛していたのだ。

 

Q,スペインに戻った元妻シャロンの

家にいた男が不倫相手?

 

その人は「デビッドか?」と

元夫の名前を知っていたので

シャロンの父親の可能性が高い。

不倫相手なら別れた男の名前など

とっくに忘れるか

気にもしないでしょう。

しかし父親だとしたら少し若く見えるので

不倫相手の可能性も……。

 

Q,シャロンに50万ドルと一緒に

バーリンの手紙を入れた意味がわからない。

 

コンスタンスの容疑が晴れた今

もう1つの心残りであるのが

バーリンのレイプ事件。

あの手紙はバーリンが実在していることと、

自分のやったことを反省している証拠です。

それを見せた意図は

要するにバーリンの事件も冤罪だった

妻に気づいてほしかったのです。

 

Q,コンスタンスはデビッドが好きだったの?

 

これは難しい。

コンスタンスは仕事のパートナーとして

彼を見ているだけで恋愛の対象ではなかった。

2人が口論になった時、

「うるさいな。君は僕の妻じゃない」

「そんなものになりたくありませんから」と

嫌そうに言っているが

心の内はわからない。

 

俺の解釈としては

2人はお互い気になる存在だったが

同僚ということもあって

恋愛感情抜きで見ていたが、

コンスタンスに死が迫った

今になって愛おしく思い、

彼女も自分の気持ちに素直になれた。

本当は好き合っていたのだと思う。

 

Q,ビッツィーは最後のビデオを公開したか?

 

いいえ、公開はしません。

それを公開してしまうと

デビッドとコンスタンスの

命を賭けた計画を壊してしまう。

 

記者としては真実を明らかにすべきだが

情報源を絶対に明かさないから

デビッドに信頼されたわけだし、

真実を隠すことがデビッドの真意と判断して

最後のビデオの内容は

胸にしまっておくことにしたはず。

 

Q,人の気持ちを

逆手に取った映画作りは賛成しがたい。

これだと死刑制度に問題があるんじゃなくて

自作自演を見抜けない警察や法廷に

問題があるってことになるんじゃないか?

 

冤罪をでっちあげて死刑を執行して

世間を騙すやり方には

批判的な意見もあるだろう。

実際にこんなことをしたら大問題になる。

 

あくまでもフィクションとして楽しんでほしいし

上にも書いたが監督の狙いは

概念に刺激を与えること。

死刑を悪だと思って見ていた視聴者が

ラストで悪の概念が逆転したことは

「人の見ているものが全て真実だとは限らない」と

言いたいのだと思う。

 

 

デビッド・ゲイルの人生

タイトルが

ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』なので

彼の人生や命の意味について考えてみたい。

 

デビッドは死刑制度反対派として

何度も訴えて来たが

誰1人として死刑を止められなかった。

もう普通に活動していたら

この先いつまでたっても、

死刑を失くすことなんてできないだろう。

 

一緒に活動していたコンスタンスが

白血病でもうすぐ死ぬ運命にある。

デビッドも妻と離婚し

息子にも会わせてもらえない。

このまま生きて、

意味の無い活動を続けるより

死を選んで意味のあることをすべきだと。

そうしてこの計画は始まった。

 

デビッドは死刑になったが

最後にビッツィーにこんな言葉を残す。

「僕は救わなくていい。息子の“父親の思い出”を救ってもらいたい。それだけでいい」

「甘んじて死んで行くの?」

「ビッツィー、人間は一生死に逆らおうとする。食べて、発明して、愛して、祈って、戦って、殺して。死んだら帰って来られない。それぐらいしか知らないのに。だが、ある時何かが変わる、突然に。己の理性が欲望を打ち負かす。執着心、染みついた習性が夢を忘れさせる。そして過去の敗北が……。死はご褒美かもしれない」

 

デビッドの最後の望みは

「父親がどんな人生だったか」を

息子のジェイミーに知って欲しかった。

「レイプ魔」のままで終わるより

「冤罪の死刑囚」で終わること、

それだけが彼の望みだった。

 

この映画のラストシーンは

ビデオテープの中のデビッドが

こちらを見つめるシーンで終わるが、

この最後のビデオは

ビッツィーに見せる必要が無い。

処分しておけば

秘密は完全に守られるからだ。

 

それをあえてビッツィーに見せたのは

自分のせいでデビッドを救えなかったと

思いこんでしまうことを

心配しているからだろう。

「全て僕が悪いんだよ」と伝えることで

心の重みを取り除いた。

最後まで協力してくれたビッツィーに対する

お礼だったのではないだろうか。

 

 

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