過去の苦い体験から、どこに何があるかがわかるように、常に整理、整頓を心がけているが、それでも時々探しものが見つからないことがある。目的の探しものが見つからないと気になってしょうがない。以前は夢見も悪かったが、最近はあたりをつけたところで見つからない時は、あっさり諦めることにしている。絶対あるのだから、そのうち意外なところからでてくるはず。探している時には見つからず、忘れた頃にでてくるとは昔からよくいわれることで、これに従うようにしている。

さて、前回は中古のアナログ・レコードの購入にあたり、目的の盤をなるべく安く、納得できる価格で入手するには、目安となる個人的な値段を設定したり、プライス・ガイド本の活用を勧めた。なぜならアメリカと異なり、日本国内の中古レコード市場は、各店舗が独自の価格を設定、たまに得もあるが、高値の買い物をさせられる場合が多いことも事実である。
音楽知識があり、経験も豊富なレコード収集家なら「なぜ」目的の盤が高いか、妥当かの、値付けの理由を理解し、見送るか、購入に適しているかを判断出来るが、そうでないユーザーは価格に不満を感じつつ、欲しいという目前の欲求に負け、後悔しつつも買ってしまったという経験もあるだろう。さらに後年、最悪にも同じレコードが自分が購入した価格の半分、3分の1で売られていたりしたらガッカリである。
この10年を振り返っても、日本国内の中古市場でのアナログ・レコードの価格はとても流動的で、ニーズがあるからという漠然とした理由だけで数年前まで700~1500円ぐらい盤が、現在は7~8000円代で売られている。
だからこそそういう風潮に左右されず、独自の、たとえばマニアックな、レアアイテムでない限り、1500~2000円が個人的な買う目安とか、それを大きく超えた値段のものは見送ることも必要である。そしてオリジナル盤にこだわり、レアアイテムの購入にバイブルとして重要なのが、プライス・ガイド本である。
アーティスト、レコード発売年順に記載、盤の状態、オリジナルか再発等の条件でアメリカ中古市場での取引価格が明記されている。日本よりも中古市場の歴史が古いアメリカならではのもので、通販や客と対面でレコードを売る際にこのプライス・ガイド本の値付けが頼られる。日本には切手はあるが、アナログ・レコードの国内統一のプライス・ガイド本はなく、レアアイテム盤の購入時にアメリカ発刊の同本を利用することがよい。
たとえばアメリカの中古市場で30ドルのレコードが、こちらでは3000~3300円で売られていたとすると(かりに1ドル100円と計算)、これに手間暇と輸送料を加えた価格としては良心的な値段である。もちろんその価格より安ければ買い得、高値、あるいは盤(ソリや目視しても傷がひどいもの)やジャケットの状態(角を切ったり、切れ込みが入ったカット・アウト、すれ傷や書き込みがあるものは見送ろう)も妥協や見落としがないように値段とは別にチェックする。
値段に納得できずに見送ってもよほど希少なレコードではない限り、時間をかけ、自分の足でレコード店巡りを心がければ、思いもよらない嬉しい出会いも体験できる。個人的な話で恐縮だが、61年発売の米アトコ盤、ボビー・ダーリンの「ツイスト・ウィズ・ボビー・ダーリン」を国内の中古レコード店で見つけた時の話だ。かねてから捜していた欲しい1枚だったが、3800円という価格にブレーキがかかった。ジャケットと盤の状態も良く、プライス・ガイド本の記載価格も40~50ドルで、むしろ得な買い物だったが見送った。
迷ったら買うか否かをはっきりし、後悔しない。というのが私の心情で、いずれまたどこかで見かけると、確証はなにもないが、思った。その後誰かが買ったらしく、店頭からそのレコードは姿を消した。それから1年後、再び別の店でそのレコードを見つけた。状態は見逃した盤と同じに良く、しかもときめくほど信じがたい破格の低価格だった。欠陥商品ではと思うほど、いまもって信じられない1500円だった。迷わず購入したが、こんな幸運ってある門だ、とつくづく感じた印象深い出来事だった。
さて、すでにもっていて活用しているレコード愛好&収集家の方もいると思うが、プライス・ガイド本の入手方法について紹介しょう。最も簡単なのがアマゾンの洋書中古本で見つけること。あるいはアメリカの音楽誌「ゴールドマイン」の書籍販売を利用すること。同誌発行のプライス・ガイド本はジャズ、シングル盤、ドゥワップ、カントリー、オルタナティブ、CD&プロモーション盤、ロック&ポップス・アルバムなど、12種類もあるので間違わないように。購入申込書もついているので英語が苦手でも大丈夫でしょう。
(つづく)