今日のテーマは、これまでにも何度か触れたことのある有り触れた話題なんだけど、「死別の二次被害」である。

 

「死別の二次被害」とは、愛する人を亡くした後に遺族が周囲の人の心ない対応や言動が原因で傷つくことをいう。

 

私も二次被害の犠牲者である。夫が他界して7年が過ぎ、これまでに心が切り刻まれるような経験を星の数ほどしてきた。経験を重ねるほどに心は強くなる。死別直後なら深く傷ついたであろう言動にも最近は耐えられるようになり、右から左へ聞き流すことが上手くなった。

 

だけど、今でもたまに深く傷ついてしまう時がある。

 

********************

 

昨夜は勤め先のお別れ会が催された。近々店が閉店するので、同じ売り場の人間だけで集まり小さな会食をした。参加メンバーは私を含む総勢8名。全員女性。51歳の私が最年少で、73歳が最年長。高齢社会の象徴だ。

 

メンバー8名のうち、3名が既に夫を亡くしている。73歳の人はその時60歳だった。68歳の人はその時58歳だった。二人とも比較的若くで夫を亡くしたと言える。がしかし、私の44歳とは少し意味が違う。

 

まあ、それはいい。とにかく、8名中3名が社会の平均より早くに夫を亡くした後家さんだという席で、私の隣に座っていた72歳女性が夫のノロケ話をする訳だ。

 

そのノロケ話は典型的な浪花節パターンで、最初に散々夫のことが嫌だと言い、ところが深く追求すると実はとても愛しているという流れだった。馬鹿馬鹿しい。

 

「好きで恋愛結婚したけど、今となってはうっとおしいだけ。顔を見るのもゾッとする。一緒に旅行もいきたくないし、お買い物も行きたくない。」から彼女の講演が始まった。これは何も今始まったことではなく、彼女はいつもその話をしている。よほどその話が好きなんだろう。

 

周囲のものが「そういう割にはよく一緒に旅行に行くよね。買い物も一緒だし。」と突っ込むと、彼女は「私は嫌やけど、着いてきはるねん。」とのろけた。

 

彼女は夫がウザくて仕方がないとボヤく割には、夫の世話を甲斐甲斐しくする女房気取りが好きである。夫を置いて自分だけで外出する際には、夫の食べる料理を作ってから外出するなど、良い奥さんぶりを語ることが多い。誰かが「嫌だと言いつつ、甲斐甲斐しく世話してあげてるよね。」と突っ込むと、「長生きしてほしい。」と彼女が言った。

 

「顔を見るのも嫌な夫なのに、長生きしてほしいの?」

「あの人死んだら私一人になるから、嫌。一人になりたくないから長生きさせんと。」

 

 

 

その時だった。矛先が私に向いたのは。

 

 

彼女が隣にいた私に向かってこう言った。

 

 

「ブルさん、あんた若いのに、一人でよく平気やな。私やったら耐えられへんわ。強いんやなあ、あんた。」

 

 

それを、言うか?

私に、それを?

72歳で夫がいる女が、44歳で夫を亡くした女に?

 

 

そしてさらに罪深き発言を彼女がした。

 

 

「そやけど、あんた、若くで夫亡くして、良かったなあ。あんたの中にある夫のイメージはいつまでたっても若くて格好良い時のままやろ?私ら、いくら好きな夫や言うても、歳とってブサイクになって小汚くなって。ほんま嫌やわ。」

 

******************

 

72歳にもなって、成長がない、愚かな人だなあと思った。

 

彼女には私の気持ちがわからない。私は一人でいることが平気ではない。孤独感に押しつぶされそうになる。だけど、仕方がない。夫はもうここにはいないのだから。それに、ブサイクになっても良いから、ハゲても良いから、夫にもっと長く生きていて欲しかった。

 

 

彼女は以前から少しボケた発言が多い人で、私が夫を亡くして子供もいなくて一人だと公表した時から何かにつけ彼女の次女を引き合いに出してくるようになった。

 

 

「私の下の娘があんたと全く同じ状況やねん。今はまだ若いし良いけど、これから先、歳をとったらどうするやろうと思ったら心配になるわ。子供がいたら面倒見てもらえるけど、子供がいいひんしなあ。あんたと下の娘をついつい重ねて見てしまう。」

 

 

それを聞いて、私は彼女の娘さんも子供がいない未亡人なんだと思って話を合わせていた。ところがある日、よく聞くと、娘さんの夫は普通に生きていると判明。病気でもなく、普通に生きている。私との共通点は子供がいない点だけだった。

 

 

おいおい!

夫が死んだ私と、夫が生きている娘と、何が全く「同じ」状況なんだ!

全く「別」だろ!

私だって、夫が生きてた時には、どちらかといえば子供がいなくても平気だったよ!

問題は、夫が死んだことなんだよ!

夫がいて、共に長生きして、80歳ぐらいになって夫が死んでいたら、今の私が持っている心境とは全く別だったよ!

 

 

日頃から、そんなボケた発言の彼女なので、昨日の会食の席で何を言われても「またか」程度だっが、もちろん嬉しくはない。むしろムカッときた。その後も彼女の夫嫌いの話で持ちきりで・・・と言うか、彼女がその話で円テーブルをまとめようとするのだ。本当に迷惑な話だ。そこでその話題を打ち切るために、私が言った。

 

 

「はいはい。わかりました。そんなにウザくて嫌いな夫なら、とっとと死んでもらいましょうね!」

 

 

すると彼女は「アメリカ帰りの人が、とっとと死んでもらいましょう!、って言ってはったって、帰って夫に言うておくわ。」と返してきた。

 

 

 

馬鹿馬鹿しい。喧嘩売るなよ。

 

愚かすぎる72歳。

 

 

優しい言葉をかけてほしいなんて、そんな贅沢な望みはとっくの昔に捨てたよ。だけど、せめて、傷つけるような無神経な発言はやめてほしいな。自分に経験がなくても、それぐらいは考えたらわかるでしょ。