トランスジェンダー ROSE 

 

               

         入院治療中の妻

 

結婚して10年が経過した頃、妻の様子に大きな変化が起こりました。

 

いつも笑顔を欠かすことがない妻の表情に、不安と疲れを感じること多くなりました。  


日常会話の中にも、終末的な言動が現れ、被害妄想による意味不明な行動も見られようになったのです。

 

暫くそのような事が続いたある日、妻は別人のようになりました。

 

これが、結婚前に妻が私に、カミングアウトした病気なんだと....

 

屋外から聞こえてくる生活音に対して、「もう地球が崩壊するから、

 

何処か一緒に逃げて欲しい。」  


妻の目は、真剣でしたが、焦点は全く定まっていませんただ何かに、怯えているようでした。

 

 

私は、妻を落ち着かせるために、ドライブに誘いました妻の言うままに、ただ車を走らせました。 


目的地はありません。

ただ、逃げたいという妻の言葉どおりに....

海が見たいと言うので、妻が好きな海岸にも車を走らせました。

 

自宅に戻ると、今度は、ひとりで家を飛び出しました。私は、妻の後を追いかけます。


妻は、私の手を振り払い、逃げるように歩きます。


途中で、すれ違う人を呼び止め、この様に言いました。

 「私、変な人に、付きまとわれている」

そして、指にはめていた結婚指輪を外し、道路のアスファルトに置き更に歩き出しました。

 

私は、その指輪を拾い、妻の後を追い続けました。

    

行き着いた場所は、私たちが結婚式を挙げた教会でした妻は、会堂の椅子に座り、手には、どこかで積んだ一凛の草花を握りしめていました。  


でも、その時に見せた表情は、普段の優しい妻 京子のままです。

 

    

私は、あふれる涙を拭いながら、神様に誓いました。

「私たちは、この教会で夫婦の誓い立て、一緒になった妻の苦しみを分かち合うことができれば、神様が、きと、また、もとの京子に戻してくれる。」

 

 

その後、妻は、かかりつけ病院に緊急入院することになりました。

 

     

入院当初は、治療の必要から、面会謝絶でしたが、主治医より、面会許可がおりてからは、面会が日課となりました。

 

それは、まるで結婚まで続けた夜間訪問のように.....

 

入院期間は、1年6ヵ月と長期になりましたが、毎日、毎日、ひたすらに面会を続けました。

 

ちょうど介護支援専門員の受験と重なり、病院の面会室で、妻の協力で勉強したことを覚えています。

 

退院の日 病室で待っていた妻の笑顔が、今でも鮮明に残っています。

 

  京子 よく頑張ったね 

 

 

作詞・作曲 ROSE