感想書くのがすっかり遅くなってしまった。

 

波瑠さん主演の松本清張ドラマプレミアム「ガラスの城」は、波瑠さん演じる主人公・的場郁子の地味でミステリアスだけど人間味があり、次第に感情移入させられる行動と心情描写に引き込まれ、最後まで目が離せない、実に見応えのある作品。

 

波瑠さんの役どころは、「ホテル・ローヤル」以来の感情を極力抑えた、控えめで目立たないキャラクター。また、「愛しい嘘」以来のサスペンス展開で、「未解決の女」以来の刑事捜査ストーリーは、波瑠さんのお芝居の、表現のリアリティーに満ちて、観ていて物語に安心して(でも、どきどきはらはらして(笑))没入できる、その心地良いスリルを満喫した。

また、さすがに波瑠さんの芝居の魅力を熟知している大森美香の脚本だけあって、原作は読んでいないけど、昭和の古臭さを感じさせない、生き生きとしたキャラクター造形とプロットの説得力。

特に、前半は的場郁子と対照的なバリキャリ課長の三上田鶴子(木村佳乃)を一人称の語り手に据えて、的場郁子を第三者の視点で描き、後半は三上が失踪して、そのダイアリーを読む的場郁子が主人公(プロタゴニスト)になって、物語の核心に迫っていく、というドラマ構成は非常に秀逸。

波瑠さんのお芝居も、前半のあくまで他人からどう見えるか、ということを意識した表現から、後半は、地味で暗くてケチで寂しい、と言われていた女性の内面や人間味が次第に明らかになり、少しずつ感情が深化していく、その流れが素晴らしい。

そして、ドラマのテーマが単なる謎解きではなく、対照的な二人のキャラクターの間の切々とした共感、外見だけの華やかなビジネス社会の空虚な実相の中で、同じ似たような感性を持つ女性同士の心の絆、切ないシスターフッドの夢、というところへ重点が移り、最後は主人公の儚い涙に心を揺さぶられる。

「未解決の女」では、刑事ドラマの謎解きとのバランスで今一つ不完全燃焼の感もあった大森美香と波瑠さんのコンビネーションが、このSPドラマでは、おそらくは原作とも通底するであろう人間ドラマの魅力を見事に前面に出すことができたと思う。

 

波瑠さんと木村佳乃の芝居のハーモニーはばっちり。でも、それだけじゃなく、過去に共演歴のある、満島慎之介や丸山智己、今回もまた犯人役(笑)の武田真治、最近のドラマでも波瑠さんと良い芝居を見せてくれた仁村紗和や野呂佳代、脇役ではもったいない芝居を見せてくれた蓮佛美沙子など、キャスト陣もなかなか豪華な顔ぶれで大満足。

特に、後半の捜査行シーンでコンビを組んだ満島慎之介とのやり取りは、観ていて思わず笑みがこぼれる、いや、ネットでの感想でも言われているとおり、この二人のコンビでの刑事ドラマがあったら、それだけでも観てみたい気分になる。

ま、正月のSPドラマだけあって、予算もかけて、丁寧な作りで、最近の波瑠さん主演作品では出色の出来だった。

また、是非、大森美香とのコンビで波瑠さん主演のドラマや映画を観たい。