グレートスモーキーへ | 世界のブナの森

グレートスモーキーへ

セミだらけで喧騒のシカゴを後に、ブナ林を求めてアパラチア山脈のグレートスモーキーにやってきた。ここは4度目、初夏の撮影にも2016年に来ているので目新しさはほとんどない。目的は、前回どうしても会えなかった1つの蛾のみ。
川原を歩きながら、すでに発生が始まっていることを確かめた。

 

目的の蛾の発生は間違いなく始まっている。ただ、灯火のない国立公園のなかでは、いったいどうやって会えばよいのか見当がつかない。

 

グレートスモーキーで、早速アメリカブナの葉を撮る。シカゴでも自生していると思っていたのだが、今回歩いた範囲では見かけることがなかった。

 

アメリカブナの林に咲いていたホオノキの仲間Magnolia freseri。ホオノキの仲間は同じ場所に2種がある。これも北米と日本とのブナ林に共通する要素のひとつ。

 

林はすっかり初夏の色に包まれている。

 

シチメンチョウ。どうしても出てくるのは刈りこまれた路肩だし、メスばかり。日本のブナ林のヤマドリとエゾライチョウ、タイワンブナ林のミカドキジは撮っているので、あとはタイワンブナ林のサンケイと、テリハブナ・パサンブナ林のキンケイか。どちらも姿は何度か見ている。

 

アメリカのオオミズアオActias luna。日本のものに見慣れた眼には少し着飾って見えるし、月を冠した名前もよい。
世界各地のブナ林に共通する要素として、ルリボシカミキリやルリクワガタと同じように、この蛾はどうしても撮らねばならなかった。Great Smokiesには2015~2016年に足を運んでいたが、姿を見せてくれなかった。
今回はこの蛾を撮影するために、シカゴでのセミの撮影を4日で切り上げてGreat Smokiesに向かった。ただ、まともに灯火もない国立公園の保護区内で、いったいどうやって探せばよいのか分からない。国立公園を一歩出ればそこは繁華街、たくさんの明かりに囲まれ過ぎるうえに、銃社会のアメリカでは民家の街灯を見てまわるわけにもいかない。
ところが悪運強くというかなんというか公園内で道路工事をやっており、投光器があるではないか。車を停めて灯火を見せてほしいと頼むと、初日の現場監督は快く応じてくれた。そして、そこには1頭のビカビカのlunaが落ちていたのだ。

 

来てよかった・・・と月の女神に感謝しながら撮影しようとしたのだが、そこに突然驟雨が来て、枝や葉にとまらせようとしても滑ってしまい、ほどなく飛び立ったlunaは通りかかった車のライトにダイブして目の前で轢かれる・・・という安っぽい小説に出て来そうな結末に、ずぶ濡れになり打ちひしがれて宿に戻った。
翌日からは現場監督が替わり、この投光器も見せてもらえなくなった。

USA, North Carolina/Tennessee, The Great Smokies, 2024.6.3-5