沓掛時次郎 遊侠一匹 | ロロモ文庫

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鴻巣一家に草鞋を脱いだ旅鴉の沓掛時次郎は頼みがあると言われる。「うちの縄張りに楯突く奴が一人いる。もう死んでしまった中ノ川一家の三蔵って奴で、たった一人で中ノ川一家を名乗っている奴だ。そいつを殺ってほしい。お前さんも渡世人だ。うんと言ってくれるだろうな」

三蔵と対峙する時次郎。「信州沓掛の時次郎と申すしがねえ旅人です。一宿一飯の義理のため、恨みつらみもねえお前さんと敵対する破目になりました」「左様でございますか」「勝負は一騎打ち。他人なしで綺麗にやりとうございます」「ありがとうございます」「それで場所は?」「ここで」「わかりました」

斬り合いの末に三蔵を倒す時次郎。「頼みがある」「何なりと言っておくんなさい」「村はずれの水車小屋に女房のおきぬと息子に太郎吉がいる。それを熊谷在の惣兵衛と言う叔父のところに」「わかりましたよ。三蔵さん」

おきぬに坊やの耳を塞いでくださいと言う時次郎。「三蔵さんは立派に死になすった。一宿一飯の義理であっしが斬りました」「……」「おかみさん。しっかりしてください」「……」「惣兵衛さんのところまで送らせてください。それまであっしと一緒でも我慢してください」

しかし惣兵衛は年貢の取り立てに苦しんで首を吊って死んでいた。沓掛に行こうとおきぬに言う時次郎。「沓掛に行けば、力になってくれる親戚があるはずです」しかしおきぬは病のために旅のできない体となってしまい、時次郎は子供相手のおもちゃ売りをしておきぬと太郎吉の面倒を見る。「時次郎さん。本当にすいません」「おきぬさん。太郎坊のために幸せになってください」

惣兵衛の息子の昌太郎は大仁田一家に入れるように時次郎に頼むが、時次郎は大仁田一家に昌太郎を子分にしないでくれと頼む。どういうことだと怒る昌太郎に時次郎はお前のことを心配していると言うおきぬ。「あんたはヤクザってものがどんなものか知らないけど、時次郎さんはあんたのためを思って頼んだんだよ。あのいい人はいい人なんだ」「そりゃあ、おきぬさんにとっていい人だ。自分の亭主をバッサリやって後家と息子を引取ったいい人なんだから」昌太郎に余計なことを言うなと怒る時次郎。「すまねえ。だけどもう一度大仁田の親分に口をきいてくれよ」「いい加減にしなせえ」「わかった。もう頼まねえよ」

太郎吉に三蔵のことを思い出すかと聞くおきぬ。「うん。時々。でもおじさんがいるから淋しくないよ」おきぬに喜んでくださいと言う時次郎。「先生が春祭りが終わるころは旅立ってもいいと言ってました。すぐに沓掛に行きましょう」「すいません」太郎吉とつくしを取りに行く時次郎。三蔵さんと呟くおきぬ。「私はこのごろお前さんに手を合わせるのがつらいんだよ。悪い女だねえ」

無邪気に眠る太郎吉を見て、子供っていいなあと呟く時次郎。「おきぬさん。今日はあんたの床上げのめでたい日だ。いっぱいやりなせえ」「いただきます」「……」「時次郎さん。本当にお世話になります」「何を言うんだい」「御恩は忘れません」しかし、沓掛に旅立つ日に、おきぬは太郎吉を連れて姿を消してしまう。

それから一年後、高崎宿で流れ者の三味線弾きとなったおきぬと再会する時次郎。「おきぬさん」「……」「探しましたぜ」「時次郎さん。恩知らずな女だとお思いだろうねえ」「とんでもねえ」「わたしゃつらかったんだよ」血を吐いて倒れるおきぬ。聖天一家との喧嘩を控えた八丁徳一家が優秀な助っ人を探していると知った時次郎は、おきぬの薬代を稼ぐために八丁徳一家に加勢することを決意する。

喧嘩の最中に時次郎に斬りかかる昌太郎。「てめえは。バカ野郎。それはいったい何の真似だい」「俺はやっと聖天一家の身内になった。これが初の御奉公だ。お前さんの命はもらったぜ」「馬鹿野郎。てめえ、俺のそばに寄るんじゃねえぞ。俺のそばに寄るんじゃねえぞ」時次郎の凄まじい働きで八丁徳一家は勝利を得るが、時次郎が闘っている間におきぬはあの世に行ってしまう。

時次郎は太郎吉を連れて沓掛に向かう。そこに現れる昌太郎。「時次郎さん。俺はお前さんの命をもらう。そしていい顔になるんだ」「昌太郎さん。悪いことは言わねえ。百姓に戻りなせえ。ヤクザってのはねえ、虫けらみたいなもんさ」「聞かねえ。聞かねえ。ヤクザが虫けらなら百姓はもっとみじめな虫けらだ。一生懸命働いて踏みつぶされるより、俺は羽のばして踏みつぶされたいんだ」

斬りかかる昌太郎を蹴飛ばす時次郎。さらに立ち向かう昌太郎に刀を抜く時次郎。「斬っちゃあ嫌だ」と叫ぶ太郎吉。襲いかかる昌太郎を刀の束で首筋を叩いて失神させた時次郎は刀を放り捨てると、太郎吉を抱き上げ、沓掛に向かうのであった。