風が強く吹いている | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

寛政大学4年生のハイジは1年生のカケルを自分の住むボロアパートの竹青荘に連れていく。「まかない付きで月3万円なんて夢の御殿だろう」ジョージとジョータの双子の兄弟にカケルを紹介するハイジ。「今度ここに住むことになったカケル君です」ヘビースモーカーで25歳の大学3年生のニコチャンと司法試験に合格しているユキにカケルを紹介するハイジ。「今度ここに住むことになりました。お金がなくて大学の構内で野宿していたんです。やっとこれで最後の一人が埋まった」成り行きで竹青荘に住むことにするカケル。「野宿よりはましか」

竹青荘は実は寛政大学陸上部養成所だとカケルに言うハイジ。「つまりここの住人になれば自動的に陸上部の部員となるわけだ」それはおかしいと言うカケルに形だけだと言うニコチャン。「そうすれば家賃3万でここで飯が食える。バイトをしなくてもいいわけだ」一応陸上部だから毎朝5キロ走っていると言うハイジ。「その条件だけはみんな守っている。それで陸上部員はここにいる10人だ」ここには9人しかいないと言う留学生のムサ。王子がいないと言うクイズマニアのキング。漫画オタクの王子にカケルの歓迎会に来いと言うハイジ。「部屋から出てないというとジョギングもさぼったな」「すいません」

重大発表をすると言うハイジ。「これから一年、この10人の力を合わせて、一つの事に挑もうと思う」「10人でこのアパートを建て直すとか」「いや。俺たち10人で箱根を目指す」「なんだ。卒業旅行に温泉か」「違う。目指すは箱根駅伝だ」「箱根駅伝を見に行くわけですか。あんなものは雑煮を食いながらテレビで見たほうがいいでしょう」「違うよ。出るんだ」「テレビに出ても写るとは限らんぜ」「テレビに出ます。俺たちが走るんだから。箱根で頂点を目指そう」

まずは予選会を目指すと言うハイジ。「箱根駅伝に出場できるのは20校。そこで10位以内に入れば、翌年のシード校となる。だがそれ以外の大学は10月に行われる予選会で決まる」冗談でしょうと言うカケル。「陸上の強豪校が毎日ハードな練習を何年もして、それでも箱根に出場できるのはほんの一握りなんです。それをこんな幽霊部員みたいなのばっかりの陸上部で。だいたい監督はどこにいるんですか」大家の田崎が監督だと言うハイジ。「大家さんはわが陸上部のOBだ」

ここにいる10人は走ることが習慣になっていると言うハイジ。「習慣性は長距離ではもっとも大事だ。それにここにいる10人はみな素質がある」「でも無茶ですよ」「何のために俺がみんなの食事を作ってきたと思う。体調管理はばっちりだ。ニコチャン先輩は高校時代は陸上部だし、双子とキングは高校時代はサッカー部、ユキは剣道部。神童は子供のころから往復10キロの山道を通っていたし、ムサの潜在能力は計り知れない。王子にも素質がある」無茶ですと言うカケルに走るってどういうことか知りたいと言うハイジ。

こうしてハイジたちは箱根駅伝目指してトレーニングを開始する。僕には無理と言う王子にどうしてハイジさんは誘ったんでしょうと聞くカケル。「さあ」「これだけ漫画を集める粘りと持続力はすごいと思いますよ」「それ、褒めてるの?」

「要するに、漫画と同じで走るのが好きになってもらいたいんじゃないですか」「ハイジさんのことは好きだよ。怪我をして走れなくなった気持ちもなんとなくわかるし」「そうなんですか」「もう治ってるらしいけど、一度はあきらめたんだ。もし僕が漫画を読めなくなったらと思うと、ハイジさんの無謀な挑戦もわからなくはない。多分他の連中もそう思ってるんだ。だからハイジさんを止められないんだよ」

さらにトレーニングを続けるハイジたち。「長距離で走る筋肉と短距離で走る筋肉は違う。短距離は先天的筋肉でほぼ実力が決まるが、長距離は日々の練習が物を言う。およそ長距離ほど努力と才能を天秤にかけると、努力の割合の大きいスポーツはないんだ」「……」「箱根の山は蜃気楼なんかじゃない。走れば必ずたどりつけるはずだ」

僕の田舎は人が少ないとカケルに言う神童。「そこで僕は駆けっこも勉強も一番だったんで、神童と言われた。都会に出ればただの凡人だけどね」煙草をやめたニコチャンはハイジに頭が上がらないと言う。「美味い飯が食えるのも便所がピカピカなのもみんなあいつのおかげだ」俺が司法書士に受かったのもあいつのおかげだと言うユキ。「篤志家かと思ったら、俺たちをペテンにかけやがって」僕はハイジさんの本心がわかって嬉しいと言うキング。「とにかくこの一年をハイジさんにとっていい一年にしたいんです」

競技会でお前は仙台城西高校にいた奴だなとカケルに言う六道大学陸上部4年の藤岡。「お前は寛政に入ったのか」「はい」「ハイジも復調してきたな」「ハイジさんを知ってるんですか」「奴のベストはこんなもんじゃない。故障さえしなかったら毎年箱根で会っていただろう」藤岡とは高校の同級生だったとカケルに言うハイジ。「随分水をあけられちゃったけどな。藤岡は好調のようだ。六道大の箱根駅伝4連覇も濃厚だな」

さらにトレーニングを続けるハイジたちであったが、カケルは王子の記録が上がらないことに苛立ちを覚える。「そんな記録なんかでよく漫画が読めますね」ちょっと早く走れるからいい気になるなとカケルに文句を言うキング。誰か僕の代わりを見つけてくれと言う王子に君しかいないと言うハイジ。こんなことじゃ箱根駅伝に出れないと怒鳴るカケルに本気になったみたいだなと言うハイジ。

「本気になったのはいいことだ。でもそんな態度じゃ無理だな」「当たり前ですよ。こんな連中と」「そんなに早く箱根に行きたかったらロマンスカーで行け。王子の努力をなぜ素直に認めない。君は王子に言ったそうじゃないか。漫画と同じくらいに走ることが好きになればいいと。その言葉こそ君だ。君の走りの支えとなるはずだ」「……」「速さだけじゃダメだ。それだけを追い求めるとどうなるか、俺の足を見ればわかるだろう」

夏季合宿で東京体育大学1年生の榊はカケルのことを知ってるかとハイジに聞く。「そいつは監督を殴って俺たちの最後の一年を棒に振ったんですよ」「知ってるよ」カケルは自分の才能を鼻にかけて監督を殴ったと言う榊。「そんな奴と仲良くやってるあんたらを見ると虫唾が走るんだ」「俺たちがいかに仲良く真剣にやってるかは予選会で見せてやるよ」「俺たちはあんたたちと違って真剣に箱根を目指しているんだ。笑わせるな」走りながら、高校時代の監督が故障した同級生に学校はお前にこれ以上金を払うわけがいかないからやめろと言うのを見て殴ったことを思い出すカケル。

予選会が行われ、東京体育大学は1位で通過し、寛政大学はギリギリで予選を通過する。奇跡を起こしたと俄然マスコミの注目を浴びるハイジたち。箱根駅伝当日となり、寛政大学は往路を1区・王子、2区・ムサ、3区・ジョータ、4区ジョージ、5区神童というメンバーで挑むが、トップから10分以上の大差をつけられる18位に終わり、復路は繰り上げスタートとなってしまう。

箱根駅伝のことを親に伝えたのかとカケルに聞くハイジ。「いいえ」「どうして」「高校の時に問題を起こしてから、親とはずっと険悪なんです。仕送りはあるけど家出同然の身です」俺の父親は高校時代の陸上部の監督だったと言うハイジ。「君の嫌いな徹底管理型の監督だ。俺は父に言われるまま走った。足に違和感があっても言い出せなかったんだ。お前はもう終わりだ。そう言われるのが怖くてな」「……」

「俺と父はいい関係が築けなかった。俺は寛政大を選んだ。思うように走れなくて無性に知りたくなったんだ。走るってどういうことか」「……」「俺は証明したかったんだ。たとえ弱小部でも素人でも情熱があれば走ることはできるんだと。そしてカケルに出会った。君の走りは俺の理想そのものだった。君は純粋に心の底から走ることを望んでいた」

復路は6区・ユキの快走で寛政大は順位を上げていく。7区・ニコチャン、8区・キングとたすきをつなぐ寛政大。9区を走るカケルに寛政大も頑張ってるじゃないかと言う藤岡。「この分だと奇跡のシード権獲得もあり得るかな」「まだ繰り上げ分のタイムがありますから」「君とハイジが頑張れば希望がある」「六道大学はこのまま藤岡さんにつなげば奇跡の4連覇もあり得ますね」

「奇跡じゃない。確実にそうなる。俺は9区の区間記録を更新するからだ。それが俺にとっての箱根だ」「じゃあ俺は藤岡さんが作る区間新記録を塗り替えてみせます」「君にはあと3年あるからな」「いえ。藤岡さんが区間新記録保持者でいられるのは、多分10分くらいでしょう」

僕が10区を走ることになりましたとハイジに言う榊。「凄いじゃないか。1年でアンカーをまかされるなんて」「本当は2区を走りたかったんですけどね。うちには速いのがそろってるから」「でも、今はうちの後を走ってるみたいだけど」「繰り上げチームが威張らないでくださいよ。うちは山下りでちょっとブレーキがかかったけど、総合タイムは寛政大より上ですから」

「うちはシード権を獲ってみせるよ」「本気ですか。万一、シード権を獲れたら来年はどうするんです。部員もぎりぎりしかいないのに」「さあ、どうするかな。うちのメンバーは自分のやることをやるだけだ」「なるほど。小学校のかけっこの精神ですね、寛政大は」「そのかけっこの精神がなかなか侮れないんだ」

カケルは猛スピードで走り、次々と前のランナーを追い越して行く。スピードを落せと言ってるんだと後続車からハイジに連絡する田崎。「あれじゃ持つわけがない。どうするよ。カケルは俺の声が聞こえてないみたいだ」「監督。もう何も指示しなくていいです。カケルの好きに走らせてやってください」

藤岡は1時間8分30秒の区間新記録で走り、六道大はトップに躍り出る。おめでとうと藤岡を祝福するハイジ。「いい走りだった」「ハイジ、走りの前に動揺させたくないが、俺は今朝、高校の監督に電話した。監督は言ってた。あいつはしっかり泥沼から立ち上がって俺を超えた。今日は父親として心から応援できると」「藤岡」「そして、俺を超えようとしている奴が後にいる」

カケルに藤岡が区間新記録を出したそうだと言う田崎。「記録は1時間8分30秒だ」9区を1時間8分29秒で走って、ハイジにたすきを渡したカケルは榊に最高の走りを見せてくれと言う。「そんなことをしたら寛政大は終わるよ」「終わらないよ」今お前は8番目を走っているとハイジに言う田崎。「だが寛政大は11位だ。10位の東体大は見かけではお前の後ろを走っているが、総合タイムでは1分2秒、差をつけられている。1分2秒差をひっくり返せ」藤岡の力走がきいて、六道大は4連覇を達成する。ハイジは途中で剥離骨折を起こして足を引きずりながらゴールするが、2秒差で東体大を逆転し、寛政大はシード権を獲得する。

話し合うハイジとカケル。「ハイジさんは全て俺に教えてくれた。たった一つの答えを除いては」「そう、俺は知りたいんだよ、カケル。走るってのはどういうことなのか」「その答えはまだ見つからない。俺はこれからもずっと問い続ける。生きるとは何かをずっと問うように。ずっと走り続けるだろう」