作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(255)」 | ロロモ文庫

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長寿料理対決(6)

「それでは、長生きのための料理とはどんなものか発表していただきましょう。至高のメニューからお願いします」「今回の主題は、食の根源に迫るものであります。いわば食についての自らの哲学を明らかにすることでもある。長寿は万人の願いと言える。寿命と食物には密接な関係があるのは明らかだが、食物だけが寿命の長短を決定するわけではない。そこを十分ふまえておいていただきたい。では、早速」

「医食同源と言う言葉が中国にはある。昔から中国の権力者は金と力に任せて不老長寿を求めた。その結果、長寿をもたらす食品の開発と料理法の開発は進んだ。この中華料理の知恵を借りない手はない。まず出したこのスープ。烏骨鶏、干した貝柱、魚の浮袋、朝鮮人参を4時間以蒸し煮して取ったスープだ」

「烏骨鶏のスープは栄養価の高いことで知られる。朝鮮人参の薬効は今更言うまでもない。貝柱と魚の浮袋からは必須アミノ酸やビタミン類なども大量に得られる」「ぬほ。これは旨いだけでなく、しみじみと体の奥に染み込むような」「滋味深いと言うか、いかにも効き目充分と言うか」

「ふみ、今、効き目と言う言葉が私の耳に入った。私が今日出す料理を精力剤の一種と考え違いする人間がいるといけないので、一言付け加えよう。過日、たまたま沖縄の石垣島に行き、そこで繰り広げられる全島リゾート計画、なかんずく白保の海を埋め立てて、空港を作る計画を実地に見ることによって、精力をつけることと長生きすることは必ずしも一致しないことを改めて認識し、長生きの料理についての正しい考え方をまとめることができた」

「石垣島を人体にたとえよう。島にリゾートを作り、新空港を作る。これは人体に例えれば、精力剤をぶち込むようなものだ。精力剤は短期的には効果を発揮し、活動を活発にする。しかしそれは人体に必要以上の無理をさせ、体力を消耗させる、大事な臓器を損傷すると言う副作用もある。結果として健康を損ない、長生きはできない」

「石垣島も同じことだ。5年10年の短期間、経済的な活力を得るだろうが、長期的には貴重な自然を破壊し続けたツケが回って来る。無理がたたって、体中がボロボロになった醜悪な老人のようなものだ。そんな石垣島が待っているのは破滅だ。今、世界中でリゾート開発による環境破壊が問題になっているが、石垣島の新空港建設も貴重な自然を破壊する暴挙であることは間違いない」

「その点、私が用意した料理は短期的な強精効果を狙ったものではない。定期的に食べていると、健康と体力を維持できる。結果的に長い目で見ると、精力的な人生を送れることになる」「なるほど。長寿でも病身で活動できなかったら面白くないからな」「健康で活動的に長寿を楽しむための料理と言うわけかな」

「乾燥フカヒレを中華料理の技法で柔らかく戻し、スッポン鍋に加えた。スッポンの脂は悪いコレステロールを血管内にこびりつかせる心配はない。それにフカヒレは加われば鬼に金棒。老化を防ぐのに大事な血管を増強するためのものあが、全部この料理の中に揃っている」「ううむ。旨い上に血管も増強されるとはありがたい」「日本の伝統的なマル鍋に、中華の知恵を加えたちゅうわけや」

「続いては豆苗とニンニクの芽の炒め物だ。ともにビタミンやミネラルは豊富なことに加えて、繊維成分が腸内に発生する有害物を吸収し、腸の動きを盛んにするから、老廃物を体内に長く滞留するのを防ぐ」「次は栗飯だ。栗は漢方では、弱った体に力を与える働きが大とされる」「デザートは燕の巣。燕の巣とはタイなどの沿岸の崖にイワツバメが海草を材料に作るものだ。海草はミネラルを含み、それが燕に労力のおかげで、食べやすい形になっている」「以上が至高のメニューの長生き料理だ」