風の村のこと
チュニジアで、とても風の強い村へ行った。
そこは岩山をくり抜いて人々が住んでいる。
といってもほとんどは打ち捨てられたままになっているけれども。
石畳の道でもちろん車は入れないし、勾配もかなり急だ。
褐色だらけの村の上にはモスクが誇らしげに建っていて、その白さだけが浮いている。
ガキんちょが、フランス語スペイン語アラビア語を駆使して、
ガイドするよってカン高い声で近寄ってくるけれど、どの言葉もわからないから追い払う。
ちなみに
物売りとかがどこの町でもしつこい、
ノン、ノンだけだとなかなかそばを離れてくれない。
で、目を見据えてノン、メルシィ!と言えば、さっきまでのしつこさが嘘のようにみんなすっと身をひくのが面白かった。
とにかくこの谷間にある村は風が強かった。
標高が高いせいもあり、空気はきれいだった。
街の中心にはこじんまりとしたカフェがあって、何人かの男がたむろしている。
壁にはサッカーチームのポスター。
扉をばたんと閉めると中は薄暗くて静かで、外で風がびゅうびゅううなっている。
アン・カフェ・シル・ヴ・プレと何回も唱えた呪文のように濃いコーヒーを頼む。
ここの人々は紳士的だった。
僕はヤバーニーです、アッサラーム・アレイコムと挨拶。
帰りに谷道でエンストした車を押すのを手伝っていたら、ひときわ激しい風が、僕の帽子を谷底まで吹き飛ばした。
なんだか夢の中にあるような村だった。

