6 日本人バイオリニスト、倉形(亀井)由紀子さんと52年後の出会い(#1)
*コンピューターの画面を大きくしてお読みください。
何と52年も前のこと、南カリフォルニア大学のシネマの学生だった時に出会った女性に連絡がつきました。(2022.11)
彼女の名前は倉形由紀子さん。
巨匠ハイフェッツの愛弟子で、旧姓は亀井さんといったら、ご存知の方がたくさんいらっしゃるかもしれません。
『幻の旅路』の中で『バルセロナでバイオリニストに出会う』のエピソードの最後にほんの数行だけ出てくる女性です。
(残念ながら、本文では亀井かつ子さんと誤って書かれています)
現在、彼女がサンフランシスコ・シンフォニーで第一バイオリン奏者として活躍していることが検索してわかりました。
『幻の旅路』を彼女にお送りしたかったので、思い切ってサンフランシスコ・シンフォニーにメールを出したところ、嬉しい返事が戻ってきました。
以下は私たちの感激の再会のやりとりです。
由紀子さんのお返事を拝読して、とても嬉しく思ったのは、彼女の飾らないフレンドリーな人柄があふれた文章です。
大昔にたった一度しかお会いしたことがないのに、まるで長年のお友だちのように、肩を貼らず語りかけてくれます。
きっと彼女は若い時から、謙虚な飾らない性格の持ち主だったのでしょう。
それだからこそ、私の学生フィルムにも気持ち良く無料出演してくださったのです。
由紀子さんの拙著に対する感想も、とても素直な表現で書かれていて、爽やかな新鮮な印象を与えます。
私たちの感動や喜びを読者の皆さんともシェーアしたいので、メールの一部をご紹介しましょう。
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(1) 2022/11/09
サンフランシスコ・シンフォニー御中
Hello.
My name is Setsuko Owan.
I met Mrs. Kurakata, Yukiko Kamei when I was a cinema student of USC. (1970)
I published a travel journal and I would like to send it to her.
May I send a copy to the office address?
Or would you please forward this email to Mrs. Kurakata?
Thank you very much.
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Dear Mrs. Kurakata, Yukiko Kamei
突然メールを差し上げ失礼いたします。
実は1970年でしたか、安村尚子さんを通して由紀子様のバイオリン演奏を撮影させていただきました大湾節子です。
この度、旅の本をまとめましたが、その中に1行だけですが、由紀子様について触れた箇所がございます。
もしよろしければお送りしたいのですが、どちら宛にお送りしたらいいかお返事をいただけたら幸いです。
大湾 節子
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(2) 11/12/2022
大湾様
先日サンフランシスコ・シンフォニーからのメールで、大湾様がご連絡下さったことを知りました。
まあ、何と昔のことでしょうか!!
ご本の出版、どうもおめでとうございます!
是非見せて頂きたく思います。
現在もLAにお住まいですか?
私は1993年にSFに移って以来、あまりLAに行く機会がありません。
南カリフォルニアと北カリフォルニアは近い様で遠いですね。
では、ご本を拝見させて頂くのを楽しみにさせて頂きます。
よろしくお願いいたします。
倉形由紀子 (亀井)
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(3) 2022/11/12
倉形由紀子様
こんにちは。
大変お忙しい中、嬉しいお返事ありがとうございました。
ご連絡がくるのを半分あきらめていたところでしたので、とても嬉しいです。
先日由紀子様の連絡先を考えついて、大変失礼でしたが、突然でしたが、メールを差し上げました
その節(1970年)は大変お世話になり、52年も後になりましたが、改めて深く御礼申し上げます。
本は、出版から大分遅くなりましたが、ご自宅にお送りいたします。
お送りしましたら、またご連絡いたします。
私はいまだにロスに住んでいます。
先日もPBS Great Performanceで、San Francisco Symphony の演奏が放映され、由紀子さんのお姿を一生懸命探しましたが、後ろ姿のせいか、確認できませんでした。
紹介してくださった安村尚子さんは戸羽さんという方と結婚し(1974年)、ロスやテキサス、日本などに住んでピアノを教えていました。
腎臓を患っていて、こちらでの移植を待てず、マニラまで元気で出かけたのですが、手術がうまく行かず、旅先で亡くなられました。(2007年12月15日)
私の動画の1つです。
では、またご連絡いたします。
寒くなりました。くれぐれもご自愛ください。
節子
(4) 2022/11/18
倉形 由紀子様
こんにちは。
52年前、USCの大学時代、私はひどい貧乏学生で、由紀子様がお忙しいスケジュールの中、無料で学生映画に出演し、演奏してくださって、今でもなんとお礼を申し上げていいかわかりません。
由紀子様のことはひと時として忘れたことはありませんでしたが、こうして思いがけずメールを通して交信できるチャンスがあって、大変光栄に、そして、嬉しく思います。
由紀子様が登場するエピソードは第4回目の旅(P281)
バルセロナでバイオリニストに出会うというエピソードです。
前回のメールでも書きましたが、お名前を確認できず、本文中では名前が正確ではありません。
深くお詫び申し上げます。
私が出会ったバイオリニストは1957年生まれ。
Mark Lambert
旅の写真を紹介しているDVDを送る際に、彼の住所を見つけることができました。
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すぐに拙著をお送りしようと思いましたが、車がトラブルでやっと昨日お送りいたしました。
感謝祭前に無事届くといいですが。
では楽しい感謝祭をお迎えください。
節子
(5) 2022/11/22
節子様
昨日、無事にご本が届きました。
きれいですね!
多くの旅先での出会いや想いが詰まっているこのご本を読ませて頂くのが本当に楽しみです。
同時代を共有する私の、言葉にも写真にも残していないそれこそ幻の人生路を、節子さんの人生を通して、その生き生きした描写の中から少しでも探ることが出来るのではないかと感じています。
P.281からのバイオリンとの出会いを早速読みました。
奇跡の様な出会いのお話。
感動しました。
私もSF Symphonyと数回バルセロナに行ったので、リセウ劇場は私たちが演奏したところかしら?と思ったのですが、私達は、Palau de la Musica Catalonaという劇場でした。
でも雰囲気はよく似ている様です。
私の事を尋ねて下さったマークという方は、本当に残念ですが記憶にないのです.....。
あまりにも昔の事を忘れています。
安村さんは残念ながら亡くなられたのですね。
何となく彼女の雰囲気を覚えています。
そして、節子さんのことも、申し訳ないのですがはっきりとは思い出せなくて.....。
いつか1970年の映画を見せて頂く機会などはないでしょうね?
でもこのようにご本を通して節子さんと改めて出会いをいただける事、光栄です。
動画も少し拝見できました。
音楽の雰囲気とよく合う写真の数々に、特別な世界に入って行く感じです。
特に驚いたのはSanta Barbaraのシリーズでした。
私もよく知っている町のはずなのに、初めて見る不思議な感じ。
土地のスペースとか空気、気持ちを感じさせて下さる素晴らしい写真家でいらっしゃいます。
またご本を読み進める中でお便りさせて頂きます。
素敵なプレゼントを有難うございました。
今日はお礼の一言まで、取り急ぎ。
由紀子
(6) 2022/11/26
由紀子様
心のこもったお便り、とても嬉しく拝読いたしました。
4日前にいただいているのに、何をするのもスローになって、土曜日になってお返事を書いています。
全くの素人の書いた旅行記、とても喜んでくださって嬉しいです。
写真も同様にアマチュアです。
由紀子様は音楽を通してバルセロナなどヨーロッパを訪れたことがおありで、より身近に、そして懐かしく思われるかもしれません。
マークさんは、きっと由紀子様がとても素晴らしい演奏家であること、それに日本人ということで名前を覚えていたのでしょう。
彼の口から由紀子さんのお名前が出てきたときは、信じられませんでした。
そのときは、確かに由紀子さんとお聞きしたはずなのに、どうしたわけか、途中から名前が変わってしまい、本文では由紀子様のお名前を正確に書くことができなかったことがとても残念で悔やまれます。
また、大変失礼なことをして申し訳ございませんでした。
改めてお詫び申し上げます。
安村さんはロス・アンジェルスに移られてからも親しくしておりましたが、あっという間に亡くなってしまいました。
私のブログの中に『友だちもいろいろ』というテーマがあるのですが、その中の1つに彼女のことを取り上げています。
(今この記事を読み直してみたら、ここにも由紀子様のことが一言だけですが触れてありました)
USCの同じ大学に通っていても由紀子様のような素晴らしい演奏家に巡り合うことは絶対なかったのに、安村さんのおかげで出会うことができて、とても光栄です。
また、彼女にも深く感謝しています。
肝心の撮影した映画、どうしたでしょうか?
今うちのアパートのクローゼットの奥にUSC時代の作品などをまとめて入れている箱がありますが、その中に入っているかどうか。
実はすっかり忘れていて、クラスで提出して、その後の行き先はどこに行ったかわかりません。
私が持っているのか、それとも学校側が持っているのか。
もし私が持っていたとしても、昔のスーパー8とかいう映写機で移しているので、普通のプロジェクターでは見ることができないでしょう。
映画のことを何も知らない私が、由紀子様に無理をお願いして、確か机かどこかに乗っていただいて、下の方から演奏する様子を写した記憶があります。
どの部屋を使ったかも覚えておりません。
安村さんがたまたまスクールガールで住んでいたアメリカ人夫婦が教育番組のフィルムを制作していて、その彼らから照明器具を借りたと思います。
その当時、私は車を持っていたかどうかも覚えていませんが、由紀子様に十分お礼をすることができず、どこかの安いレストランでお食事代を支払ったということを覚えております。
私のような一介の学生のリクエストにとても気持ちよく応えてくださって、本当に感謝しております。
なんとお礼を申し上げていいか、言葉が見つかりません。
サンフランシスコ・シンフィニーのホームページに出ている由紀子様の若い頃と今の写真を比べて見て、昔とちっともイメージが変わらないのには驚いています。音楽に携わる方は年を取らないのかもしれませんね。
サンタ・バーバラのYouTube、楽しんでくださってありがとうございます。
たくさんのネガフィルムをデジタイズしていないので、ブログやYouTubeなどに載せることができず残念です。
最近は、夫の介護や自分自身の体の修理に追われて、創作の方の時間が全く取れなくなりました。
いまはKUSC(クラシック音楽を24時間放送しているラジオ局—サンフランシスコ・シンフォニーの演奏は毎時間のように放送されています) や PBS(パブリック・テレビジョン)で音楽を聴くのが一番の楽しみです。
どうぞ由紀子様はじめ、ご家族の皆様もお体にお気をつけて、楽しい、そして無事な年末年始をお過ごしください。
節子