5 『幻の旅路』より バロセロナでバイオリニストに出会う
1981年 11月 17日
バルセロナ↓ナルボンヌ↓カルカッソンヌ
『カルカッソンヌに向かう』
朝食を食べに下に下りていくと、マークが一人カウンターでコーヒーを飲んでいた。
昨日の興奮覚めやらずで、重ねて礼を言うと、
「僕の方こそとても楽しかった。
それより次回ヨーロッパに来たら必ず連絡してね」
再会を約束して別れる。
元教授夫妻の勧めてくれた所は、このホテルも含めてどこも気に入ったが、もう一カ所フランスのカルカッソンヌがあった。
回り道だがそこまで足を延ばしてみよう。
朝九時半バルセロナ発、午後一時フランスのナルボンヌ着。
乗り換えの待ち時間が三時間もある。
町を簡単に見て回り、駅に戻り、待合室で手帳をめくり昨日の出来事を反復する。
今年はマッターホルンに行き、韓国の青年達と一緒になった。
彼らがモンブランを勧めてくれたので、数日後に出かけていった。
途中の列車の中で元教授夫妻に出会って、今度は彼らが色々と旅のアドバイスをしてくれた。
夫妻の勧めてくれたホテルに泊まったら、そこでマークと知り合って、それが昨晩の素晴らしい出会いに続いていた。
今回バルセロナまで足を延ばしたのは、スペイン人の友だちに会うためだ。
彼らとは昨年レストランで出会ったのだが、そのレストランはトレドからの帰りの列車で出会ったアメリカ人夫婦が教えてくれた所だ。
「出会い」が「出会い」を呼んでいる。
人生の複雑な糸が絡(から)み合って、マークもマイケルもポコおじさんも犬のリンダも、そして私も、みんなあの時間あの一点に到着するように前から仕組まれていたのだ。
私は人の歩む道はすべて本人の意志と選択だと信じていたが、昨晩の出会いを過去に辿っていくと、どうも我々人間の世界は個人の意志をこえた何かもっと大きな力が支配しているのではないかと思えてきた。
そう考えると、今ナルボンヌ駅の待合室で一人こうして次の列車を待っているということも、実はこれも何か緻密な運命のスケジュールに従っているのかも知れない。
第4章 1981年、第4回の旅 P294-295より (一部ブログ用)
Passau, Germany
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