恵比寿にはパンダがいたらしい。
なぜパンダ?
そういえばライオンもいるとかいないとか。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』


お店の前を行ったり来たりして、ほとんど確認できなかった恵比寿のパンダの看板を
端っこの視線で捉えた自分を信じつつも、本当にここ?となぜこれを使っているのかと
問いたくなる重たいビニールカーテンをそぅっと開けた。
いらっしゃいませと出迎えた人なつっこい笑顔は、
色白でスラリとしたギャルソンサロンが似合う女子で、
その奥から浅黒い精悍な笑顔と、丸っこい笑顔が出迎え、
この笑顔のトリオたちがパンダなのか、店の中にはそれ以外にパンダは見つからず、
アンティーク家具を扱うインテリアショップのようなソファとスツールと
ダイニングで設えたれた店だった。
私が座った席からは真正面に自家製のリキュールが
大小様々な瓶で作られているのが一同に介した棚がお目見えし、
メニューブックの冒頭、それらがズラリと御伽の国のような名前で並んでいた。
シュワっと甘くなくて、さっぱりしたものをと願いしたら、
解禁したばかりの初めて聞くミカンのリキュールをソーダで割ったのを用意してくれた。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』


レース模様の大きなグラスに並々と注がれたそのソーダは、
梅雨入りしてじっとりとしたこの日には清々しくてやさしかった。
そして愛らしくて思わず声をあげたお通しのパンケーキ。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』


サイズはコイン、味はメダル。
どうやって作るの?と聞いたら、スプーンでひと掬いひと落としと、
楽しそうなジェスチャーとともに答が返ってきて、
パンダが焼いているのだと想像したらますます愛らしさが募った。
そうして食事が始まった。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』


専約農家のオーガニックの野菜をグリルでいただくき、
ハワイでぐるぐると言う意味のフリフリチキン、
それとドリアがテーブルに並び、パンダが作る料理に感激する。
野菜のグリルは野菜の甘さを引き出す塩加減と香ばしい香りが、
この野菜の優秀さを雄弁に味蕾に伝える。
フリフリ焼かれたチキンは、しっとりとした身を横たわらせ、
しっかりと入った塩が濃厚な味わいに仕上げている。
先ほどのグリル野菜でその美味しさを覚えた舌は付け合わせの野菜も逃すものかと口に運ぶ。
そしてくつくつと踊るドリアはスプーンを刺せばフツと湯気が立ち上り、
その香りが洋食に出会ったばかりのころを思い出させ、
ハフハフとしていた少女を自分の中に見た。
そうやって食欲を満たしながら、この店の真骨頂のひとつ、
ワインとパンケーキの組み合わせをいただくためにメニューブックを開いた。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』


ハワイアンスタイルと銘打ったスパムとひき肉のマッシュポテトソースのパンケーキを頬張る。
なるほど、重みのある生地の中に漂う甘さとこのスパムとソースの塩加減が絶妙で、
パンダの有無を言わせない可愛らしい姿が味になって再現されたみたいだ。
独特の生地に興味は尽きないけれど、
そろそろ満たされ過ぎた食欲にじっとしていられなくなった。
そう、パンケーキを想うあの場所へ行くのだ。

それがパンダの鳴き声。

【恵比寿のパンダ】
TEL・予約/03-5708-5237
東京都渋谷区恵比寿南1-7-8 ニューライフ恵比寿 2F
JR恵比寿駅 徒歩1分地下鉄日比谷線恵比寿駅 徒歩1分東急東横線代官山駅 徒歩5分
恵比寿駅から82m
営業時間
[平日・日・祝祭日]11:30~24:00
[金・土]11:30~翌4:00
ランチ営業、夜10時以降入店可、夜12時以降入店可、始発まで営業
定休日/不定休