当院では、 天人相応太極円通図(図1)が、

円滑に回って円通すれば健康、

円滑に回らずに円通できなければ病と考えます。


 病とは、病垂れ外側の二水(にずい)の陰と、

内側の丙(火の兄)の陽、つまり水と火の

陰陽のアンバランスのことなので、

回れば陰陽のバランスがとれた健康な状態であり、

回らなければ陰陽のバランスがとれていない不健康

あるいは病(やまい)の状態だと言えるからです。


 そして、基本的に多くの場合、

生活習慣としての身口意(しんくい)の

三業(さんごう)の積み重ねの中で、

白い勾玉(まがたま)の部分が

慢性的に過剰な状態が続くことによって

病が発現すると考えます。


 それは、図1からわかるように、

緊張・興奮・活動・交感神経活動の過剰であり、

弛緩・鎮静・休息・副交感神経活動の不足である、

と言った形のアンバランスです。


 具体的には、心身のストレスの

蓄積・過労・過飲食・運動不足・睡眠不足等が関係しています。


 少数ですが、黒い勾玉の部分が過剰な状態で病的な場合は、

先天的に虚弱体質であるとか、

長期のストレスや過労で精根ともに尽き果てたような場合

(白い勾玉過剰状態の反動)に見られます。

体力がなくて、活動が困難な状態です。


 これらのアンバランスは、

何れにしても西洋医学的な病名

(主として慢性病ですが)に拘らずに言えることです。


 近年は西洋医学の世界でも、

病とは病名に拘わらず炎症であり酸化であるとする

考え方が出てきています。


 つまり、燃え過ぎなのです。

また、福田・安保理論による自律神経免疫療法でも、

病とは病名に拘わらず

自律神経の交感神経過剰興奮が原因だから、

「爪もみ療法」で交感神経を緩めましょう

と言うことが主体になっています。

交感神経の過剰興奮とは、熱であり炎症につながるものです。


 要するに、東洋医学的な物の観方が、

一部ですが西洋医学的にも裏付けられてきたということです。


 さてそこで、交感神経の過剰興奮ですが、

ざっくり言えば頭に血が昇ることです。

緊張すると胸がドキドキしたり声が上ずったり

咳払いをしたり頭が真っ白になったりしますが、

これは臍下丹田の相火(しょうか)[註]が

発動して上昇することによる現象です。

結果、上半身特に頭部が熱化しますが、

これを「頭熱」と言います。


 逆に、上半身か熱化する分、

陰陽の関係で下半身は寒化します。

緊張すると足がガタガタ震えたりトイレが近くなったり、

下腹部が痛くなったり下痢をする人もいます。

こちらの方は「足寒」と言いますが、

頭熱とセットで「頭熱足寒」になります。


 この頭熱足寒は、日常生活の緊張の場面・

ストレスの場面等に見られることですが、

これが長期化したり積み重なると、

老化現象として現れたり、

様々な生活習慣病として現れてきます。

女性なら生理時に、軽い頭熱足寒が見られることがあります。


 長年、日本人の死因の2位・3位を占めてきた

(最近は2位・4位)心臓血管障害も脳血管障害も、

相火の上昇過剰の持続によるものと考えられます。

図2のように、心臓に近い心下部と頭部は相似形になっており、

相火の過剰は心臓にも脳にも影響がおよび、

心臓血管障害や脳血管障害等として現れやすいのです。


 頭部の場合は脳血管障害の他にも、

相火が頭に行くと頭がボーッとしたり

ふらついたり頭痛がしたりするし、

目に行くと目がボーッとしたり白内障や緑内障、

耳に行くと耳鳴りや難聴・めまい、

髪の毛に行くと白髪・脱毛症等々となって発現します。

皮膚に行くとシミやホクロにもなります。


 この頭熱をもたらす相火の上昇による焼け跡は、

個人差はありますが背中の上半部によく観られます(図3)。


この焼け跡は、反対側の前上胸部にもよく見られます。

過飲食、特に脂っ濃いものやアルコール類の過剰摂取の際や、

イライラカッカッしたり悩みが続いた時等に、

上胸部から首・顔にかけてが熱くなったり

汗をかいたりすることがあると思いますが、

これは相火が上昇して燃えていると言うことなのです。


 この部分の相火の熱が肺に影響すると、

肺の炎症である肺炎や間質性肺炎や

慢性気管支炎などが起こり得ます。

肺炎や気管支炎は細菌やタバコ等が誘因として大きいのですが、

基本的には相火が炎症のベースにあるのです。

間質性肺炎等は、緊張時の咳をイメージすれば

わかりやすいと思いますが、

細菌やタバコ等の誘因のない相火主体の炎症のように思われます。


 喘息は、冷たい物や甘い物や牛乳等による寒湿が

下半身を冷やす反動で相火が上昇して起きる部分が大きいようです。

飲食の指導と共にお腹を温め

肺の熱をさます薬のコンビネーションが効果を発揮します。


 腹部を全身の相似形と観ると、

上腹部は上半身に下腹部は下半身に相当しますが、

上腹部には胃・十二指腸・肝臓・膵臓・胆嚢・腎臓等があり、

相火の過剰によってこれらの炎症や潰瘍やガンが発現しかねません。


 反対に、足寒になると下半身

つまり足腰が冷えて循環も悪化し、

腰や膝の痛みや変形が起きてきます。


 足寒ならぬ下腹部寒は、

大腸・泌尿生殖器系の冷えにより、

過敏性腸症候群や膀胱炎・子宮筋腫・

子宮内膜症・卵巣嚢腫・前立腺肥大症・良性腫瘍等の病を、

さらに冷えの持続反復は適応反応としての熱化による炎症、

例えば潰瘍性大腸炎・前立腺炎等、

そして炎症の反復に関連するそれら臓器のガンの発現をもたらします。


なお、体の側面については、

相火の過剰によって肋間神経痛や

胆石症・尿路結石症(胆嚢や尿路は上腹部でもありますが)や

帯状疱疹(ヘルペス)等の形で現れたりします。


 以上が、頭寒足熱のメカニズムの概略ですが、

それはつまるところ相火によるものなので、

これを万病相火一元論と言うのです。

今から九年前に学会発表し、

七年前に拙著『生命毉療は円の毉療

―カゴメ歌の謎解きと医療哲学―』にも記載した次第です。


 ここ最近、中国では「上火(シャンフォ)」と言う

病のとらえ方・観方が出てきているようですが、

基本的なところは万病相火一元論と同じです。


 因みに、煩悩という言葉は、

頁(頭・顔・頬・顎・頸のように頭顔部を表す) が火で燃え、

心が脳(悩の旁[つくり]は脳の象形文字)で悩んでいることで、

頭熱と置き換えることもできます。

昔の人は、病の本質をちゃんと把握していたのだと思います。


 全体として、老化も病もその本質は、

相火の過剰による炎症(酸化)あるいは

物理学的に言えばエントロピーの増大であると考えます。


 昔の写真を見るとわかりますが、

若い頃は顔も身体も締まって見えることに気づくでしょう。

それは精力の源である

腎(漢方で言う腎)の力が充実しているからです。


 相火が未だ消費されていない状態で、

腎の固める力がたっぷりあるのです。

腎の固める力と言うのは、腎と言う字に表れています。

腎の月(肉体を表す肉月)を糸に変えると緊、

土に変えると堅になるように、

腎は肉体の中では固める作用、

つまりエントロピーが増大させない力を持っているのです。

これは生命の要になるので、弟分の肝と共に「肝腎要」というのです。


 その腎の精が「人生を送るなかで女は七の倍数、

男は八の倍数で消耗していく」と言うフレーズは、

最近のテレビのコマーシャルでお馴染みですが、

元は漢方の根本経典である

『黄帝内経(こうていだいけい)』に説かれてきたものです。

 老化や病の経過のなかで、

若い頃の締まりがあって縦に伸びていく状態から、

徐々に中年太りと言われるようにエントロピーが増大し、

やがて燃えて枯れて萎(しぼ)んで朽ち果てるわけです。

最後は、ローソクが燃え尽きる時に

瞬間に炎が大きくなるように、

人も瞬間に元気になることがあります。


 以上が、万病相火一元論と頭寒足熱の概略ですが、

このような病のとらえ方のなかで、

満足(足を満たす)療法の必然性があることを

ご理解いただければと思います。

満足療法は、足に氣血を満たして肝腎要の腎を固め、

エントロピーの増大を食い止める、

病名に関わらない本質的で有効な治療法であり健康法なのです。



註 相火(しょうか)
天人相応太極円通図の下部の小さな白丸○で、

臍下丹田(下丹田)のエネルギーのこと。

天人相応太極円通図上部の小さな黒丸●である

君火(くんか:上丹田)に対応するもので、

両者は君子と臣下の関係にあります。

腎の字の中に臣が入っている所以です。


 君火は心(しん)の神明の源になるもので

明るさ・明晰さに関係し、

相火は腎の精の源で「精一杯」とか「精力的」等の

言葉があるようにエネルギー源・熱源に関係します。

車で言えば、君火はニュートラルの状態で

相火はアクセルをふかした状態と言えるかも知れません。



図1 天人相応太極円通図

リンク先をご覧ください↓
http://homepage3.nifty.com/rokkaku-tanaka/entry20.html



図2 腹部は全身の相似形

    夢分流腹診図 (上腹図は下全身図と相似形)

    藤本蓮風他著『鍼灸舌診アトラス』より引用。






図3 相火の焼け跡