人数:3人 (♂2:♀1)
時間:10分~15分程度
備考:レオの一人称は敬語を使っているため『私』になっています。レオは最初は名前がありません。最後の方に名付けられます。
登場人物
レオ : ♂ 記憶喪失の青年
ニナ : ♀ 嵐の地に住む。3年前に家族を亡くした。
ロト : ♂ 嵐の地に住む。商人として生計を立てている傍ら、情報屋としても活動している。
セリフ数
レオ :43
ニナ :61
ロト :39
設定
小さな国の端に、『嵐の地』と忌み嫌われる場所があった。
止まない嵐は絶えずその地の人々を苦しめた。
本編
ニナ :…今日は一段と冷えるわ…倉庫から毛布を出してこようかしら?ロトに手伝ってもらわないと。
ロト :ニナ!おはよう、今日は冷えるな。
ニナ :ロト!おはよう。ちょうどよかったわ、そうなの、冷えるから毛布を出したいの。手伝ってくれる?
ロト :お安い御用、・・・・と言いたいところだけど、実は午後から少し出かけなきゃならないんだ。いまから倉庫に向かえる?
ニナ :もちろん。ごめんね、もうあそこしか貸倉庫が空いてなくて。ひとりで行ければいいんだけど。
ロト :ひとりで!?ひとりで行かせられるわけないだろ、ニナ。あそこは、この嵐の地で一番王都に近い。下手に道を間違えでもしたらすぐ狙撃される。・・・そうでなくても女の子が一人で・・・・。調子に乗った衛兵が何をしでかすか、
ニナ :(さえぎって)そ、そうね!危険ね!わかったから、そんなに怖い顔しないで。眉間が大渓谷よ
ロト :・・・・・
【王都へ続く森を歩いてゆく】
ニナ :ここまで王都に近づくと、さすがに風も穏やかね。
ロト :・・・ああ。・・・・しっかし、不思議だよなあ、王都につけば、こっちの嵐なんて嘘のように晴れてんだもんな。
ニナ :ほんとに・・・・・・・・・・・・・っ!?
ロト :・・・うぉっ!?なんだニナ、急に立ち止まったらぶつかるだろ、
ニナ :・・・・・・ロト、あれ・・・・・・
ロト :なんだよ、なんか落ちてんのか?・・・・・・・・え・・・・?
レオ :・・・・う・・・・・
ニナ :人・・・だわ!誰か倒れてる!!
ロト :おいニナ!?
ニナ :あなた、大丈夫?嵐の地の人じゃ・・・ないわね?どうしてこんなところで倒れて・・・
レオ :・・・・・・姉、上・・・・・・?
ニナ :え?
ロト :頭を怪我してる、意識が混濁してるんだ。
ニナ :どうしよう・・・・
ロト :俺が倉庫から毛布を取ってくる。毛布にくるんで家に運ぼう。ニナはここで待ってろ。そいつをあまり動かすなよ。
ニナ :わ、わかった。
レオ :・・・・・・・・・姉上、・・・・じゃ、ない・・・・?
ニナ :私はニナ。大丈夫よ、もうすぐロトが、
レオ :・・・・誰・・・・?
ニナ :だから私は、
レオ :・・・私は、だれ・・・・・・?(気を失う)
ニナ :・・・・・・・!
ロト :ニナ!毛布だ!家に運ぶぞ!
ニナ :あ・・・うん!
【ふたりで男(レオ)をニナの家へ連れ帰る】
ロト :じゃあ悪いけど、俺はもう出なきゃ。もしあの男が目を覚まして、暴れたりするようだったら、容赦なくフライパンとかで殴るんだぞ。
ニナ :・・・・・・・・・・
ロト :(ため息)・・・大体、見ず知らずの男を家に置くこと自体、俺は反対なんだからな。
ニナ :だって、ロトは家を空けるし、目覚めて知らない家に一人の方が不安じゃない。
ロト :そのまま盗みを働くかもしれないしな。
ニナ :ロト!
ロト :あーはいはい。まったく、ニナは優しすぎるぞ。
ニナ :もう、いいから行って!もう時間よ。
ロト :夜にまた来るよ。気をつけろよ。
ニナ :わかったってば。いってらっしゃい。
【ロトを見送り、部屋へ戻る】
ニナ :・・・・・・・さっき、私は誰、って言ってた・・・・。もし記憶がないんだとしたら、この人・・・・。
レオ :・・・・ここはどこ、ですか・・・
ニナ :!目が覚めたのね!身体は平気!?ここは、ここは私の家で、えっと、あなたは森で倒れていて、
レオ :・・・・・・・・森?
ニナ :ええ。・・・・・・それで、あなた、自分の名前、言える?
レオ :・・・・私、は・・・・えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
ニナ :どうして森にいたか、思い出せる?
レオ :・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ。
ニナ :・・・・そう。
【がたん、と嵐のせいで窓が鳴る】
レオ :っ!?
ニナ :ああ、大丈夫よ、外は嵐なの。・・・・・・いつも、だけどね。
レオ :・・・・・・・嵐、の地?
ニナ :そうよ。・・・・・・あっ、自分のこと以外は憶えているの?
レオ :・・・・そう、みたいです。・・・・・あの、助けていただいたのですよね。ありがとうございます、なんとお礼を申してよいやら・・・・
ニナ :そんな、いいのよ。運んだのはロトだしね。
レオ :ロト、様?
ニナ :ロ、ロト様?・・・・・・随分丁寧な話し方するのね。
レオ :・・・・・・・・・・・そうでしょうか?
ニナ :うーん・・・・それも記憶と何か関係があるのかもしれないわね。
レオ :・・・・・・私は何か、貴族を相手にする商売でもしていたのでしょうか・・・?
ニナ :そうかも知れないわね。王都の近くに倒れていたし・・・・・王都は行ったことがないからわからないけど、そうね・・・・・王都では、貴族の男性はみんなステッキを持って歩くときいたわ。ステッキを売っていたり?
レオ :・・・・・・・???
ニナ :まあ、目覚めてすぐだもの。取り敢えずいまは休んだ方がいいわ。
レオ :しかし、いつまでもお世話になるわけには、
【大きな腹の音】
ニナ :・・・・・・・丁度お昼だわ。ごはんにしましょうか。
レオ :いえ、そんな
ニナ :この嵐の所為でいい食材は手に入らないけど、不味くはないと思うんだけどなあ・・・・。
レオ :で、でも・・・・
ニナ :やっぱりこんなやせた土地でとれたものなんて、食べたくないかしら?
レオ :・・・・いただきます。
ニナ :うふふ。
【食卓。もぐもぐしながら話しても可】
レオ :・・・・私の倒れている近くに、なにか荷物などは落ちていませんでしたか?
ニナ :・・・・いいえ?駆け寄った時にあたりを見たけれど、それらしいものはなにも・・・・・あっ
レオ :?
ニナ :あなたが王都から来たのなら、通行証を持っているはずよね。それがなければ王都から出ることも入ることもできないもの。
レオ :確かに・・・・・そうですね。
ニナ :この嵐の地は王都へ続く道以外は海に囲まれているし、港は森とは反対側だし・・・。
レオ :誰かに鞄ごと通行証を盗まれたのでしょうか・・・?
ニナ :・・・・・だとしたら困ったわね。身元がわかるもの全部、その人が・・・・・
ロト:ニーナ―!!いるか!?(扉の外から叫ぶ)
ニナ :!!ロト?
レオ :あ、運んでいただいた・・・・?
ニナ :ええ、そうよ。・・・・・・・ロト、いま開けるわー!
ロト :ニナ!無事か?あいつは起きたのか?
ニナ :ええ、さっき目を覚まして、いまお昼を。随分早いのね?
ロト :・・・・やっぱり気になって、戻ってきた。予定は延期。
ニナ :なんにもなかったわよ。・・・・・・記憶も。
ロト :どういうことだ?
ニナ :憶えてないみたいなの。自分のこと。
ロト :はあ!?どうすんだよ、そんな奴拾って!
ニナ :だってあのままにはしておけなかったでしょう!?それにロトだって運んでくれたじゃない。
ロト :・・・・・・・
ニナ :ていうかあんまり大きい声ださないで。彼に聞こえるわ。
レオ :あの・・・・
ニナ・ロト :!!?
レオ :すみません。私がご迷惑を・・・・・あの、すぐに出ていきますので。
ニナ :あ、っち、違うのよ!あの、そういうことじゃなくて、
ロト :・・・・・・・
ニナ :っほら、ロトも!
ロト :・・・・・・
レオ :・・・あの、ロト様。運んでいただき、誠に有難うございました。そしてご迷惑をおかけして、大変、
ロト :俺はロト。商人をしてる。
レオ :え・・・・?は、はい。
ロト :職業柄、家を空けることも多くて、いい加減家具がほこりまみれだ。
ニナ :ロト・・・・・。
ロト :嵐の所為で、掃除しようにも窓が開けられないからとてつもなくめんどくさい。
レオ :・・はい・・・・・?
ロト :話は変わるんだが、俺は商人の傍ら、情報屋ってのもやってる。
レオ :・・・・・・えっと、あの・・・・
ニナ :つまり、ロトの家に来ていいって!
レオ :え!?そういう会話でしたか!?
ニナ :ロトは天邪鬼なのよ。ロトの家で暮らしていいし、仕事で各地を回るついでにあなたのことも調べてくれるって!!
レオ :え!?そ、それは・・・・!
ロト :拾っちまったのも何かの、ほら、アレだしな。
レオ :でも・・・・・・
ロト :遠慮は損だぞ、商売でも、それ以外でもな!えっと、・・・・・・こいつ、名前は・・・・
ニナ :あ、そっか。憶えてないんだ・・・・。
ロト :そんじゃあ、・・・・・そうだな。レオ、てのはどうだ?
レオ :レオ・・・・?
ニナ :レオ、って・・・・
ロト :昔飼ってた犬の名前だ。
ニナ :ちょっとロト!
ロト :いいじゃねえか、ニナも可愛がってただろ、レオのこと!
ニナ :だからって・・・・!
レオ :・・・・嬉しいです。
ニナ :え!?いいの!?
レオ :とても・・・・・、自分の存在が肯定されるものは、いまの私にはとても・・・・
ロト :決まりだな!レオ!・・・・・・・・というわけで、いい加減家の中に入れてくれないか・・・。
ニナ :・・・あっ、ごめん。そうだね。いつまでも玄関で話していてもね。ロト、お昼食べてくでしょ?
ロト :ああ。・・・・あー、あと、レオ。
レオ :はい?なんでしょうか、ロト様?
ロト :・・・・・・・その、ロト‘様‘ってのは、やめないか・・・・・・?
レオ :では、なんとお呼びしたら・・・?
ロト :普通にロトでいいよ。敬語もなしで。
レオ :しかし、
ニナ :私も、なんだか敬語で話されるの寂しいなあ。
レオ :ええっ!?
ロト :ほら、レオ。ニナも言ってるぞ。
レオ :・・・・えっと、・・・・・・で、では・・・・・・・・あ、ありがと、う。ロト、ニナ。
続く