少子高齢化に苛まれる日本の社会。コロナ渦がこうした問題を更に浮き彫りにした。介護が如何に大変であるかを。高齢者施設のクラスターでは入所者の多くが一時帰宅を余儀なくされた。それも一過性ではない。増える高齢者と支える側の家族(数)との乖離が介護作業を一段と困難にしてゆく。こうした苦悩もまだ始まりに過ぎないのだ。
総務庁の統計によると、90才以上の人口は、200万人を突破した2017年以降も増え続け、この1月(2023年)には267万人になった。僅か5年で70万人近く増えたことなる。80才以上も同じく、1235万人と全体の9.9%を占め、これはギリシャの総人口にも匹敵する。1950年には37万人だったことから70年で30倍を上回る急増である。65才以上(3627万人)なら尚のこと、団塊の世代が元気な限りは減る要素なく、4000万人も時間の問題であろう。現在でも、65才以上女性の2人に1人、男性の4人に1人が90才まで生きる時代なのだ。ならば、2040年代には90才以上が最多層になっても不思議ではない。この国は本当に大丈夫なのだろうか。
数年前だったか、NHKスペシャル「私は家族を殺した」では、介護殺人の当事者告白「なぜ一線を越えたのか、獄中で語る事件の真相」と題して、介護に於ける苦悩が赤裸々に綴られていた。 少子高齢化に伴う世代別人口の不均衡が介護をより一層深刻にする。今や一人で二人の介護は当たり前で、一人っ子同士の結婚なら、いずれ双方の両親を看ねばならない。長寿家系なら祖父母までが対象となる。しかも晩婚化で益々高齢出産になる時代だ。4人、場合によっては子育ての時期に8人の介護責任まで負わされるかも知れない。
番組では介護の難しさに加え社会全体の無理解さも取り上げていた。ケガに病気、それに認知症による徘徊と、ある意味、大変さでは子育ての比ではない。突然の休暇が日毎に増える。だが、多くの職場では業務放棄の常習犯と見なされ、自ずと辞職に追い込まれてしまう。
(非正規就労者の年次別推移)
再就職は困難を極める。仕方なく派遣登録するも、ここで更なる試練が待ち受ける。非正規就労は低い給与だけでなく単なる部品でしかない。いつでも交換可能なのだ。これまで以上に「休む」なんて許されない。かといって介護も疎かには出来ない。結果、陥るのは、休暇、解雇、そして、、といった負の連鎖である。
収入がない。僅かな親の年金ではとても足りない。介護に要する費用は増加の一途で、施設に入るまでの待機期間も、5年から10年と長くなるばかり。これでは、いつまで待っても入所できない。相談相手もいない。目の前では思考力の失せた老人がわめきちらしている。実の親とはいえ、もうどうにもならない。 いっそのこと○○か、それとも一緒に○○○しまおうか・・・ 。
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近頃では、医療機関のみならず介護の分野でさえ、ことあるごとに「最期は自宅で」を推奨する。だが、これはおかしい。我が子の人生を犠牲にしてまで自宅を選択する親がどれだけいようか。末期は誰だって辛い。それを見守る家族はもっと辛い。それを誰もが自宅での最期を望んでいる如くに誘導しているのだ。失政による財源不足を弱者に転嫁するだけのまやかしとすれば、あまりにも非道だと思うが。
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【貴方にも忍び寄る悲惨な現実】
《三親等介護責任法の果てに》
今から数年後のある日のこと、与党の圧倒的多数を以て、老人介護に関する新たな法律が制定された。進行した少子高齢化は若者より遥かに高齢者の多い異様な社会を形成していた。国には財源がない。そこで三親等にまで拡げて高齢者の介護を義務付けたのだ。 子息や子女、従兄弟(姉妹)にまで見たことも会ったこともない高齢者が順次あてがわれた。それも1人や2人ではない。4人の両親に加えて、祖父や祖母、叔父に叔母と合わせて10人を越えた者までいる。
断ることなど絶対に出来ない。拒否すれば一人当たり10万円単位/月の罰金を課せられてしまう。 介護を外国人に期待しようにも移民は認めない。就労さえも排他的で進まない。かといって抜本的な少子化対策すらない。生活は苦しくなるばかり。所得水準たるやAA諸国にも遠く及ばないのだ。こうした状況に絶望した若者の多くは次々と国を捨て海外へと活路を求めた。高齢者だけが取り残された。衰退著しい国土は、姥捨山ならぬ、姥捨島になっていった。その後、この国がどうなったかは言うまでもない。
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これは作り話ではない。永田町界隈で噂される実話でもある。一昨年だったか『待機老人52万人から急減』といった奇っ怪な記事があった。これも、高騰する介護負担や待機期間の長さに耐えきれず、結局は『最期は自宅で』を強いられる介護難民急増の裏返しではなかろうか。もしや、介護殺人や介護餓死が話題にもならない怖〜い時代が、すぐそこまで迫っているのかも知れない。そう、そこの貴方にだって・・。
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「ウイッ!!」
「もう直ぐお前もオイラの介護をするんじゃぞ」
「父ちゃん、それはシラフ(giraffe)の時に言ってくんな」
「ん??🤔」


