古い話で恐縮だが、東京湾では1989年に巨大なサイレント(ゆっくり)地震が起きていたとして話題になった。確か記事は、十数年前の週刊現代だったと思うが、本震ならマグニチュード8.3から8.7に相当すると解説されていた。

当時は、お騒がせオジサンたる相楽正俊氏のデマ『富士山大爆発』から間がなく、ほとんどは「またか!」でしかなかった。だが、その後、東京上野の国立科学博物館でザ・地震展が開催されるや様相は一変した。

国の機関だけにデマは許されない。なんと会場に入ると、すぐ左手に、この地震に関する情報がパネルで大きく紹介されていたのだ。最初のコーナーから、この展示からして、極めて深刻な事態であることを窺い知ることができる。

大地震の前には必ず、このサイレントアースクェイクが発生するといわれる。関東大震災も東日本大震災もそうだった。事後調査も多く公表は遅れるものの、ほぼ間違いなく起きている。

東京湾では、この地震から、すでに27年が経過する。だが巨大地震の前触れに期限はない。27年なんて無いに等しい。東日本大震災に続いて小笠原近海での巨大な深発地震など、この日本列島はストレスが増すばかりだ。

今では、房総沖や日向灘など、いくつかのサイレントアースクェイクが確認されているが、規模といい場所といい、危険性で東京湾に勝るものはない。なにせ首都圏には4千万人が居住し日本の金融資産の過半数が集積する。

南海トラフ型に首都圏の地下で蠢く巨大地震の巣穴。こうした地震のスパンは数百年単位とはいえ、限りなく確率の小さい地域に大地震が相次いでいる昨今でもある。

30年以内に震度6弱以上の地震に見舞われる確率をみても、阪神淡路大震災は0.02から8%であり、熊本地震は8%だった。東日本大震災に至っては、あくまで宮城沖が対象であり、発震域には確率さえなかった。

東京の場合は46%である。南関東4都県中では最小とはいえ、この数字はかなり高い。面積も狭く、他県を震源とした地震であれ、規模によっては深刻な被害を受ける。しかも、それが東京湾で巨大地震なら想像を絶する事態を招くだろう。果たして2020年の東京オリンピックは無事に開催されるだろうか。